クローゼット探偵メロディ=アリス
しかしある問題が生じていた。それは彼女自身が、秘密のクローゼットへどうやって行ったのか覚えていなかったことだ。不思議な国への行き方をアリスが誰にも説明出来ないように。
私たちはその方法を確立するため、あるいは思い出すためにかくれんぼをしていた。開いては閉じる小さな物語の中にそれはあるのだから、その試行をくり返していけばいいというわけだ。私はこの実験に喜んで参加を表明したし、そのためなら自分の部屋を自由に使っていいよと言った。
だけど、この部屋でかくれんぼするなんてね。見つかるところはすぐにわかってしまう。
確かにそれだけでは秘密のクローゼットは開かない。私たち自身とても退屈だった。
でも新しい遊びを思いついた。相手を見つけるまでの間がとても重要になるゲームだ。私たちはこのゲームのストーリーを考えた。よくある遊びだ。キャラクターになりきって遊ぶのだ。
お互いに苦労して苦労して知恵を振り絞った末に相手を見つけたという顔がしたくて、行方不明者を見つけるための探偵術とアリスSOSというものを編み出した。本棚にそんなタイトルのマンガがあったのだ。行方不明者の役は、クローゼット探偵メロディ=アリスに何らかのSOSのメッセージを書いておく。そしてクローゼットに隠れる。
たとえば「何か悪い奴に捕まって閉じ込められたりした。助けてくれ」と書き置きをする。その横には手がかりとして、クローゼット探偵メロディ=アリスのマンガの前半だけが残されていた。しかしそのマンガの巻数は、私の部屋には存在しない一冊だった。
ずっと君が来るのを待っていたんだよって顔がしたくて不思議の国の砂糖みたいに甘いふりをしたラムネのタブレットをかじってそれがどんな悪い夢なのか、手がかりをあげると同時に考える。でも私が隠れている理由を、かえるちゃんがぴたりと当てたことはないし、かえるちゃんが私をどのようにして見つけたのかを書いたログと答えが一致したことは今まで一度だってない。もし完璧に当たっていれば、すごくすっごくポイントが入るのにとお互いに悔しがった。いつかは全てがぴったりとパズルのように当て嵌ることを約束し合った。
私はまだ見たことのないマンガの結末を読んだ。
その日も私の部屋で、クローゼット探偵メロディ=アリス、というゲームが始まっていた。
もし時間内にゲームクリア出来なければ、隠れている側はモグラ男に食べられてしまうってわけだ。私はどうにかしてモグラ男がどのような存在なのかを彼女に伝えたかった。
でも私もかえるちゃんもモグラ男に会ったことはない。確かにこれはおかしな現象だった。けどその気配を感じたことは何度かある。たぶんその時、私たちは私の部屋のクローゼットと父さんの部屋のクローゼットの間にある秘密のクローゼットの中に最も近づいていた。あるいは秘密のクローゼットに入っていたんだろう。
それに少女探偵が薄暗い部屋の中を捜査するシーンがあったから、私たちは明かりをつけなかった。私は薄暗い中で読んだマンガのシーンから彼女がどうやってここまで辿りつくのかをイメージした。




