クローゼット
この一週間小学校は午前中だけでほとんど防災訓練に時間を費やした。もちろん国語や算数や理科社会の時間はあったけど、それよりも避難訓練、防火訓練、必需品確認の小テスト、動画教材、防災の授業。どれも満点だったのは私だけだった。それは全て私の父さんがすぐそばでやっていたから。私はそれを真似しただけなのだ。それには先生やクラスメイトも驚いていた。褒められもした。なんだか嬉しいやら恥ずかしいやら。知らない子にさえ数日間何かと話題にされた。帰り道の途中で、友達が遊びに来た。
かえるちゃんだ。私が彼女をかえるちゃんと呼んでいる。彼女と遊んでいる最中にモグラ男はやって来たのだ。話していた通りのやつだったが、彼女は見逃していた。
モグラ男と出会ったのはクローゼットだ。その日私はかえるちゃんと一緒にかくれんぼをしていた。今は彼女が鬼で、私は自分の部屋のクローゼットに隠れていた。特別私の部屋は広いってわけじゃないし、他の部屋だって大体似たような間取りなんだ。とは言っても、部屋は私たち三人分しかない。ママの部屋は鍵が掛かっているから、実質二つ。それ以外に隠れる場所と言えば、あおむしのように這いつくばってベッドに潜り込むか、シダードライの香る靴箱に入るか、食料庫の物陰に入るかのどれかだ。
私たちのどちらかが少女探偵の役になったとき、つまりどちらかが探す側になったとき、その手がかりとして、この部屋と私の父さんの部屋のクローゼットの間にある秘密のクローゼットが鍵を握っていることを知った。
でもその秘密のクローゼットというものがどこにあるかそれとなく知ってはいても、そもそも見つけたことがない。私の父さんだって知らない。しかしそれは実在する。その真実性を私は証明出来る。
この部屋に時々遊びにやってくる私の友達がその秘密を知っていた。かえるちゃんは秘密のクローゼットで起こった奇跡を少なくとも二度語ってみせた。今思えばあれは話に脚色や嘘をついていたんだろうとは思えるけど、当時の私はそれが全て本当だと思っていた。中には、本当のこともあった。だからこの秘密も嘘には思えないのだ。彼女はある意味では本物の少女探偵だったから。




