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モグラ男
ひとつのまったきものとして彼は私と何か大きな、絶対的かつ普遍的なものを分かち合っている。だからモグラ男を語っているその内側に私は必ず存在しているし、私が語っているその内側にはモグラ男は必ず存在する。記憶と想像力と言葉たちが結びつくと、私はその幻のような影の形を語ることが出来る。その幻影は穴であり、そこで生きている人たちについて死んだ人たちについて私は繰り返し語っている。
その穴に飲み込まれ死んだ私の友達がときどき夢の住人のように出てくる。たとえば彼女と話そうと思えば、話せるし、きっと話すだろう。少女探偵は良き友人の一人だった。 彼女は愛についてもう少し上手く話せない。それは彼女が子供だったからなのではない。もし大人になっても愛について上手く話せないどころか、ますますその表現は下手になっていく。だからといって私が彼女に対する愛を放棄することはない。私が今まさにやろうとしていることがその約束を果たしている代わりになればいい。そう信じているからだ。
モグラ男はその穴を通って地上に出てくる。彼もまた見えるけど見えないものなのだ。




