表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短短編集  作者: 重カ
4/4

文芸部

「久しぶりに太陽を見たね」

 私は、母のその言葉に吐き気を覚えた。小説の出だしには陳腐であり、現実にしては気障な台詞であると思ったからだ。北部の低気圧と、南部の高気圧が、ちょうど沖縄で前線を作っていて、しばらく十二月に似合わない梅雨のような天気だった。私の通う高校では冬服への移行がもう済んでいて、寒いけれど着込むとジメジメするような、そんな気持ちの悪い気候が続いていた日の朝だった。運転していた母にワンテンポ遅れて、後部座席から朝焼けが見えた。その姿をしっかりと確認してからは、確かに太陽へ旧友との再会に似た親しみを覚えたが、先程の空返事を訂正する気にはなれなかった。

 寝ぼけ眼の早朝講座が終わり、クラスメイトの一人が、窓を見て「良い天気だ」と半場独り言のように言っていた。確かに良い天気だった。快晴ではないが、冬の梅雨とは比較的に、実に爽やかだった。「感動した」また、彼女が独り言を呟いた。私は別に感動はしなかった。しかし、彼女はしばらくの間、空を見ていた。自然を尊ぶような性格の持ち主でないクラスメイトが、スマホも触らずに空を見ていた。本当に感動したんだろうなと思った私は、太陽でもないのに少しだけ嬉しくなった。



実話

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ