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バースデー  作者: K
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5

 この飲み会のグループラインの名前は、桃組という。


 グループのメンバーは、大学時代の同級生、同じ学部がメインの男女13人だ。

 地方から上京してきた桃子が、友達が欲しくて、大学の掲示板に呼びかけたり、入学後にラインを交換しまくって、大量のライン仲間を作った。

 その中でも、カリキュラムの作り方や、教科書の買い方や、居酒屋デビューや大学デビュー、試験前対策など、彼らにとっての、不安で初めてなことを、一緒に経験することで、何となく常連になったメンバーで、新たにグループライン桃組ができあがったのだ。


 メンバーは、上京組がほとんどを占め、一人暮らしの寂しさから、誘ってもらえること自体も嬉しくて、マンモス大学の中で、少し大きめのグループに入れたことも嬉しくて、イベントごとにつるんだ結果が、大学卒業後の飲み会のつきあいに延長された。


 小さな諍いや喧嘩はあったが、仲良しの友達というより、気が付いたら何となく一緒になっている仲間の感覚なので、キャラクターも混在し、好きでつるんだ友達とは違う連帯感で、長続きしている。

 また、リーダー格の桃子がイベント好きだったことと、面倒見のいい陵介や、今、地方に転勤している公平ら、車を出したり、場所を予約するなど、動くことを面倒くさがらない数名がいたおかげで、卒業後も、リーダーの桃子が、実家に戻っても、この会は、存続している。




 タクシーまでは、陵介が手伝ってくれた。

 ぐでんぐでんになっている遊史を抱えて、二人でタクシーの中に引き込んだ。

 一樹は、一向に目を覚まさない遊史を抱えるようにして、タクシーの中から、陵介たちに手を振った。

 愛花は、楽しそうに笑って手を振っていたが、綾乃は、やっぱり複雑そうな顔をしていた。


 綾乃は、やっぱり、まだ、遊史のことが好きなのかもしれないと、一樹は思った。


 別れた理由は、聞いていない。

 だが、遊史から、別れを切り出すとは思えない。

 愛花絡みだったら、愛花の思うツボだ。


 今の綾乃が引っかかるはずはないと思うが、今、考えると、大学生当時は、まだ、みんな子供だった。

 感情が先にたつこともあっただろう。

 愛花のせいだったかもしれない。

 別れたあと、つきあった男はいるとは聞いたが、いつの間にか消滅していた。

 綾乃が違う男とつきあっても、ずっとフリーだった遊史の方は、職場の同僚とつきあいはじめ、1年で結婚してしまったのに。


 綾乃は、入学当時から、安定したモテ方で、転勤した公平も、学生時代に、綾乃に告白してる。

 確か、大晴も、綾乃のことが好きだった。

 いつか、告白すると言っていたが、告白したかどうかは、聞いていない。

 今の様子では、告白したとしても、成就しなかったんだろう。


 グループの皆に、いきなり、つきあっていることを、遊史と綾乃の二人から告げられた時は、驚いた。

 本当に驚いた。

 でも、二人は、本当に、仲が良さそうだった。

 愛花の嫉妬心に、猛烈に火がつくくらい。


 その愛花は、少し謎だ。

 相変わらず、遊史がいれば、遊史にべったりしてるし、綾乃への対抗心も、相も変わらず小学生並みだ。

 だが、最近、何か違う空気を感じている。

 どこか、陵介を、気にしているような気がする。

 絡まる視線が、不思議な軌跡を感じさせる時がある。

 酒好きの陵介は、会話に入らなくても、がんがん飲んで、いつも、場を楽しんでいる。

 二人の間に、甘い雰囲気は、まるきり無いが、何となく、気になっているのは、一樹だけかもしれない。


 一樹は、自分の肩にもたれて爆睡している遊史の顔を見た。

 随分、やつれたような気がする。


 遊史は、陵介に事情を話した。

 それは、ずっと昔は、俺じゃなかったか?

 俺の役目じゃなかったか?


 距離をとったのは、俺だった。

 入学当時から、あんなに仲が良かったのに。


 苦しんでいる時に、相談されるのは、俺だったはずだ。

 俺が、距離をおかなければ。


 俺が、そばにいたら…。


 一人で、ずっと悩んでいたんだろう。

 

 考えてもしょうがないことだとはわかっている。

 今更の話だ。けれども…。



 タクシーが、遊史のマンションの方角にウインカーを出した時、一樹は、行先を自分のマンションに変えさせた。




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