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バースデー  作者: K
3/27

3

愛花は、陵介からプイと顔をそむけ、斜め前に座る綾乃に、楽しいおもちゃを見つけた子供のように絡んでくる。

意地悪な顔だ。

「綾乃はどう思う?絶対、計算づくよね。」

「さあ…。」

綾乃は、読めない表情で、面倒くさそうに答えたが、その目は、自分の目の前で、テーブルにつっぷしてる遊史にくぎ付けだ。


 もしかしたら、綾乃は、まだ、ひきずっているのもしれないと一樹は考える。


 派手な愛花とは正反対の、どちらかと言えば地味な綾乃だが、常識的で、清潔感があり、きちんと育てられたお嬢さんなんだとわかる。大学時代は、もっとふんわりした明るいオーラを出していた。人に注目されるオーラだ。

 ところが、遊史と別れ、社会人になり、落ち着いたとは聞こえがいいが、愛花を嫉妬させていた明るいオーラが消えてしまっているような気がする。気のせいか、色がくすんだような感じさえする。


 大学を卒業したあと、付き合った男はいたというが、いつの間にか別れていた。

 何があったか知らないが、その後は、ずっと男の影は見えない。


 もしかしたら、遊史のことが、まだ好きなのかもと思ってしまう。


 不参加気味だった綾乃が、最近、この飲み会に参加しはじめたのも、結婚して、来なくなっていた遊史が、会にもどってきたからかもしれないと、勘ぐってしまう。

 

 おそらく、それは、愛花も同じだろう。

 もともと、愛花は、大学時代から綾乃に強いライバル意識を抱いている。一方的な嫉妬による産物だ。 ひねくれた愛花は、綾乃の正当な生き方に嫉妬していたのだと思う。常識的な言動、常識的な考え方、人の悪口も言わないし、感情的にならず、よく考えて物を言う。

 言ってることは、全てまともで正論だ。そんな綾乃のキャラクターに嫉妬していたのだろう。


 遊史が、綾乃と付き合い始めた頃も、やたら遊史にモーションをかけていた。

 遊史が好きでアプローチしてたわけじゃない。

 綾乃に対するライバル意識だけで、遊史に近づいてたんだ。

 綾乃を出し抜きたかっただけだ。

 性善を感じさせる綾乃の中の、性悪の部分を、どうしても見たかったのだろう。綾乃の気持ちをかき乱したくて、綾乃の平穏な幸せを奪おうとした。


 愛花は、そんな奴だ。

 そして、人のものが欲しくなる。

 そんな奴だ。

 

 その愛花が、既婚者の遊史に、最近、また、やたらベタベタしていた。

 それは、まだ、綾乃が、遊史に未練があると感じて、わざと、見せつけてたのかもしれない。

 酔ったふりをして、遊史の身体を触り、遊史に自分の身体を預けてくる。

 そして、遊史は、優しいから、そんな愛花を邪険に扱うことができない。

 だから、一層、愛花が調子に乗ってしまうのだ。



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