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二次会は、断った。
用事があったわけじゃない。
陵介と遊史が誘ってくれたけど、二人とも無理強いはしなかった。
一樹の気持ちを考えてくれたのだと思う。
桃子につかまりそうになったが、皆が、バラバラと居酒屋から出てきたときに、そっと集団から抜けた。
「あれ?一樹は?」
桃子の大きな声が聞こえたが、
「桃子、二次会の予約とれた。めちゃくちゃ懐かしいぜ、どこだと思う?」
陵介が、桃子を引き留めたようだった。
歓声を後ろに聞きながら、一樹は、裏道に入った。
繁華街を抜け、電灯の少ない暗い道を、一樹は、何故か、好んで歩いた。
落ち込んではいない。
遊史と綾乃の関係に気が付いた時は、胸がチクリとしたが、遊史のことは、ふっきれたんだと思う。多分。
頭では、整理できている。
あと少し、感情の一部が残っている。
時間をかけて、上手く、流してやればいい。
こうやって、暗い道を歩いているうちに、少しずつ、この道に、落としていければいい。
俺の未練。
次に会う時は、もっと大丈夫だ。
遊史は、俺の親友になっている。
誰よりも遊史のことをわかっている、ただの親友になっている。
もう、恋の対象ではない。
心の中で、語りかけた。恋をしてた一樹に。
どのくらい歩いたのだろう。
ふと気が付くと、目の前に明かりが見えた。
暗い道の中で、蛍光色でぼんやり浮かぶのは、喫茶店だった。
時計を見ると、10時過ぎている。
あれから、1時間くらい、歩いてたんだと気づく。
さすがに、少し疲れたか。
ちょっと寄ってみようかと思う。
ドアには0penの札がかかっている。
まだ、客を受け入れることできるのか。
あたりは、しんという音が聞こえそうなほど、静かだった。
ドアを開けると、カランカランという古風な鐘の音がした。
「いらっしゃいませ。」
カウンターの中に、40代くらいの美人ママが一人。
縦に並ぶ4人座りの席の手前には、サラリーマンとOL風のカップル。奥の席は、学生っぽい男が一人。軽食ではなく、きちんとした食事メニューが並んでる。
こんな時間に、食事か…。
そう思った時だった。
カップルの手前に座っていたスーツ姿の男の背中が、乱視になったかのように、二重にダブって見えた。
思わず、瞬いた時、
一瞬で世界が変わった。




