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バースデー  作者: K
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陵介は、焼酎にシフトし、一樹にも勧めた。

酒を堪能しながら、陵介が見ていたのは、遊史に逃げられ、ターゲットを公平に変えた愛花だった。

公平は、既婚者だったが、遊史と違って、愛花が絡んでいくと、調子にのって、愛花の肩を抱き、デレデレしている。


一樹は、隣に座る陵介に、わざとぶつかり、体重をかけた。

「ん?」

陵介が、一樹を見下ろす。

その唇は笑ってる。


「愛花、どうするつもり?」

「どうって?」

「学生時代は、大嫌いだったろ?」

「まあな。」

「あいつは、どうしようもない女だぞ。」

陵介は、相変わらず、薄く笑いながら、公平に口説かれてる愛花を見た。

「わかってる。」

「何で、好きになった?」

陵介は、少し目を丸くして、一樹を顧みた。

「俺が、好きになったように見えるか?」

「好きじゃないのか?」

「気になるってのは、好きだってことなのかな。」

他人事のように言う陵介は、何故か色っぽかった。


「前は、あいつのことが、本当に訳がわからなかった。俺の理解を超えてたし、理解しようとも思わなかった。大嫌いだったしな。」

「俺は、今でもだけどな。」

 一樹が力を込めて同調すると、陵介は、また、唇の端を緩ませた。

「でも、これくらいになると、色々わかってくることもあるんだ。あいつの不安や、寂しさや、余裕の無さが、痛いほどわかる瞬間がある。行動の理由がわかると、今度は、目が離せなくなった。あいつの行動は、全てアピールだからな。」

「マジか?」


「俺も苦労したんだよ。愛花の歪んだ行動パターンが読めるようになるほど、人間関係に悩まされたからな。」

陵介が、変わったことは、皆も認めている。

だが、大学時代、あれほど、融通のきかなかった男が、あんな愛花を許せる男になるなんて、思いもしなかった。常識から外れることが大嫌いで、利己的な感情には、容赦なかったのに。


「つきあってるのかと疑ったけど…」

一樹が焼酎を飲みながら、上目づかいで陵介を見ると、陵介は、やっぱり笑っていた。

「この状態が、一番面白いな。」

公平に絡みながら、愛花は、たまに陵介の方を何気なさそうにチラリと見る。

陵介は酒を飲みながら、今は知らんぷりを決め込むが、愛花の視線には当然気づいてる。


「信じられない。あんな女に。」

「面白いんだよ。」

陵介は、酒にはめっぽう強い。

遊史のように隙をみせることはないだろう。

「お前、ホントに変わったな。」

「そうか?」


遊史相手だと、遊史をとことん振り回す愛花が、陵介相手だと、手を出しかねている。

手を出せなくて、遊史や公平に絡んで、陵介の反応を見ることしかできない。

「本命の彼女はどうするんだ?」

「とっくの昔に別れてる。」

「うそ? 何で、黙ってた?」

陵介は、もう一度、一樹を顧みて、面白そうに笑った。

「その方が面白いだろ?」

「お前、そんな奴だっけ?」

 陵介は、ふふんと笑った。そして、

「お前はどうなんだ?」

と、曖昧な質問をしてきた。


「何が?」

一樹が、聞き返すと、

「俺に、話したいことはないか?」

 逆に聞かれた。

「…。」


 陵介は、気が付いていたのかもしれない。

 一樹の遊史への気持ちを。

 いや、大学時代は、絶対、気が付いてはいなかったはずだ。

 そんな繊細なことを、気づくことも、認めることもできなかったはずだ。

 常識から外れることを、陵介は、極端に嫌がっていた。


 それが、卒業して、大手の企業に入社したものの、数年で辞めて、転職し、陵介の思う常識的な道から少しはずれた。

 そのあたりから、陵介が、常識という言葉を使うことがなくなった。

 そもそも、常識とは、一定の同じような価値観の中にあるもので、価値観の違う集団には、違う常識が存在する。

 会社の人間関係で苦労した陵介は、色々考えることがあったのだろう。


「苦労ってのは、するもんだな。」

 一樹が言うと、

「しなくてもいい苦労もあるけどな。」

 そう言いながら、昔よりずっと深みを帯びた陵介の目は、やはり、わかってくれているのだと、一樹には映った。

 面白そうに笑っている陵介は、本当に、一樹を面白がっているのかもしれない。

「でも、俺には惚れるなよ。」

「馬鹿言え!」

 速攻、返した一樹は、ふと、何かにひっかかった。

 あれ?

 デジャブ?

 前にも、こんなことあった気がする。

 どこだっけ?


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