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一樹は、30分遅れて、店に着いた。
居酒屋の個室を借り切って、集まった人数は、30人近くにもなっていた。
桃組以外に、同級生や、後輩たちまでいた。
顔を見ても、名前のわからない奴もいるし、雰囲気が随分変わっていたり、体型が変わっているものまでいた。
いくつかのグループに分かれて、昔話に花を咲かせていた。
行く前に、ラインを確認したら、最後の方に、遊史のアイコンで、行くと返事されてあった。
ぐるりと見渡すと、遊史はいた。
愛花が、さっそく隣にへばりついている。
しかし、遊史は、あとから来た一樹の姿を見つけると、べたつく愛花をさっさと置いてきぼりにして、一樹の隣に移動してきた。
「来たな。」
そう言って、ホッとしたように笑う遊史は、きっと、一樹を心配していたのだろう。
軽く乾杯したあとは、何もしゃべらなかった。
黙っていても、遊史の声は聞こえる。
今まで通りの俺達でいよう…
言葉はいらなかった。
そこへ、
「元気だったか?」
陵介が、話しているグループから抜けてきた。
「全然、元気。」
「そうか。」
何故、急に来なくなったか、陵介も心配していただろうが、彼も、問いつめたりはしなかった。
長くつきあうと、そういうのを察してくれるのが嬉しい。
そして、もう一つ、気が付いたことがあった。
既婚者組のグル―プで話を弾ませている綾乃が、何故か、綺麗になっていた。
元々、美人タイプではあったが、ここ数年は、くすんだ印象を受けていた。
その綾乃が、何故か蕾が咲いたように、華やかに笑ってる。
その視線に気が付いた陵介が、にやりと笑った。
「女は、変わるよね。俺もびっくり。」
そして、何事もないようにビールを飲んでいる遊史に、目線を移す。
「誰が変えたんだろうね。」
一樹が遊史を振り返ると、正直な遊史は、ピクリと反応する。
ああ…
そういうことか。
そこへ、野太い声が響いた。
「おーい、バツイチ!!」
淳吾だった。
何年かぶりで会う。会社のトラブルで左遷されてから、一度も会っていなかった。
「お前、バツイチになったんだってな。」
遊史に向かって、大声で叫ぶので、周りも、皆、遊史に注目する。
一樹が言い返そうとすると
「俺もだ、俺もだ。」
と、淳吾が、やはり野太い声で笑いながら言った。
「ついでに、ここにいる桃子もだ。バツイチ連合作ろうぜ、来いよ。」
「この、くそ淳吾、大声で言うんじゃないわよ!!」
桃子が、淳吾の大声に憤慨してる。
遊史は、一樹の顔を見て、苦笑しながら、飲んでいるビールを持って立ち上がった。
「連合に参加してくる。」
「おー。」
遊史が淳吾と桃子の傍に行くのを見た陵介は、小さい声で一樹にチクる。
「ちなみに、桃子は、裁判ざたになって、つい最近、やっと離婚できたんだと。」
「離婚率、高いな。」
「そんな時代なんだろ。」
一樹は、桃子につっこまれている遊史と、テーブルを挟んで既婚組と話をしている綾乃が、チラリと視線を合わすところを見た。
少し、胸が痛かった。




