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【新作】最強のエルフ救い  作者: 籠の中
第1章 転生人生万歳!!
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#007 服屋はオネエと相場が決まっているのさ

「あれ?もうすぐ誕生日だよね」


ベッドで寝転びながら、端に腰掛けているアリアに問いかける。すると、彼女嬉しそうに顔を綻ばせて。


「1、2、3、4、5…5日後だよ!私の方が先輩になっちゃうね」

「どんどんお姉ちゃんになっていくなあ」


えへへ…と照れたように笑った。

仄かに赤くなった頬がさらに可愛かった。


「私の家でパーティやるからちゃんと来てね!」

「もちろん、ちゃんと行くよ」


アリアの家はこの村で1番大きい家だ。

なんでも主人が一発儲けたとか。


「ほんと!?やった!!じゃあちゃんと準備しなくちゃね!」


俺も色々準備しなきゃな…と1人でに思ったトールだった。


ーーーーーーーーーー


「誕生日プレゼント?」


皿を洗っていたお母さんは聞き返すようにそう言った。


「うん、アリアもうすぐ誕生日でしょ?」

「もうそんな時期なのね…」


全て洗い終わったのか、手拭いで手の水分を取りダイニングテーブルの椅子に腰かけた。


「なにがいいかな?」


うーん、と顎に手を当てて虚空を見つめながら考える。

剣?杖?いやここはアクセサリーが良いか?


「手作りでなにが渡せば良いじゃない。街は遠いから行けないんだし」

「でも、なに作るの…?」

「あの子ならなんでも喜ぶわよ」


そうだよなあ…アリアは根っからの良い子だから何を上げても喜ぶだろうな。


「じゃあ…ペンダント作りたい」

「うん、良いんじゃない?できる限りは私も手伝うから」

「ありがとう!」


確か…と言いながらお母さんは立ち上がり、戸棚を弄り始める。ガサゴソと音を立てながら、取り出したのは紐と金具だった。


「石の部分は魔石で良いわよね?」

「うん」


壁に掛けてある防具にくっついたままの麻袋から魔石を取り出す。深い青色、内側には光が閉じ込められ神秘的なまでに美しかった。


「魔石には願いを叶える力があるっていわれてるのよ」

「そうなの?」

「正確に言えば、魔石の石言葉が願望、成就ってだけなんだけどね」


言いつつ、魔石の端と端をつまむように持ってポッキリと真っ二つに割ってみせた。


「魔石はね粉々にすると形こそ残らないけど、こんな風に二つに割って魔力を通してあげると…こんな風に」


一度淡く青に光り輝くと、藍色に変色してみせた。


「色は変わるけど、形を保ってくれるのよ」

「すげえ…こんな使い方もあるんだな…」


砕いて魔素に変換するやつだけかと思った。

どうやらその綺麗な見た目を利用したアクセサリーは街の方でも流行っているらしい。


「さて、作りましょうか。意外と簡単だからすぐ終わると思うわよ」


言いつつ、二つに割ったうちのもう一つをトールに渡した。

比べて少し小さめのものだった。


「紐を編んで、落ちないように固定していくんだけどーー」


テキパキと慣れた手つきで紐で石を包んでいく。

見よう見まねで綾斗も編んでいく。


「そうそう、覚え良いわね」


どんどん編んでいく。

背後はくるくると巻いて、固定して終わり。

お母さんの予想通り、半刻もせずに編みあがってしまった。


「最後はこんな風に金具をつけて」


渡された銀の金具を取り付けてーー。


「できた!」


掲げたペンダントを手にとって、まじまじと眺める。


「うん、ちゃんと出来てるわね」

「やった!」


すると自分で作ったペンダントとトールに渡して。


「これはトールのよ。お揃いでつけなさい」

「良いの!?ありがとう!!」


見れば、こっちを渡した方が良いんじゃないのかと思うほどにしっかり固く編まれていた。


「大事にするのよ?」

「ーーうん!!」


トールは満面の笑みを浮かべながら、大きく頷いたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「そういえば服を仕立てなきゃね」


ペンダントを作った数日後、お母さんは思い出したように言った。いつもいきなりで少しびっくりするが。


「そんなしっかりした服着るの?」

「別にそこまで畏まった服じゃなくても良いけど…少しくらいは綺麗な服を着てあげなきゃ可哀想でしょ?」


「そういうものなの?」

「そういうものよ」


そういうものなのか…。

この世界についての一般的な常識は知らないからな。

けど、どうするんだろ。この村に服屋なんてあったっけ。


「街に行くわよ。いつもお世話になっているところならすぐに仕立ててくれるわよ」


いつかのように、トールの手を取って引きずりながら外に出る。抵抗しても無駄だと悟っていたトールは諦めたように肩を落とし、されるがままだった。




馬車に揺られ、ケツを痛めながらも街に辿り着いた。

石畳みに、白を基調とした多くの建物。


防具に身を包んだ人もいれば、クワを担いだ人、荷台を引きずっている人もいる。

多くの人が集まるこの街こそがファーレンだ。


「冒険者ギルドは少し治安が悪いから遠回りでいきましょ」

「え?う、うん」


1番整理されている、領主の館への道を辿っていく。

串焼きやよく分からない食べ物、アクセサリーを売っている露天商など様々な店を眺めながら歩いていると。


キン!キン!という甲高い音が響いてきた。


「この街はね、鍛治氏が集う街なのよ。魔の森に挑むために装備を整える時に沢山武器を買っていくから自然と発展していったらしいわよ」

「ふーん…」


相槌を打ったトールはん?と1人首を傾げる。


魔の森ってそんなに準備いるの?

んん?俺丸腰で杖だけ渡されて行ったような?


「か、考えない方が良いか…」

「ん?」


聞き返してくるが、無視だ無視。


「なんでもないです…」


適当に答えて、道を歩いていく。

歩いてくる人の服装は段々と小綺麗に、上品さが増していく。

そして居心地が悪くなっていく。


「まだなの?」

「もうすぐよもうすぐ」


いつも通り堂々としながら、そう言った。

やっぱり、敵わないなぁ…。


「ほらあそこ」


入口の上部に取り付けられた金具に引っかかるように、看板が引っかかっていた。服を象られた模様が黒色の金属に掘られており、金色に輝いていた。


「絶対高いじゃん」


言いつつ、入っていくお母さんの背中を追いかける。

そして、中から聞こえてくる声に耳を疑った。


「あら!いらっしゃい!久しぶりねぇもうっ!」


そこにはゴリゴリのマッチョが高めの声音で接客していたからだ。


「おぉう…」


変な声が出てしまった。

所謂オネエ。インパクト絶大だった。

マツコデラ○クスを数倍剛毛に、マッチョにしたような雰囲気。そして驚くことにお母さんと知り合いだった。


楽しそうに談笑していた彼(?)はトールに気付いたのだろうかこちらに寄ってきた。


「あら!可愛い子ね!名前は?」


顔でけえ。ちょっと怖い。

なんなら魔物よりも迫力あるんだが。


「ト、トールです」

「トールちゃんね、よろしくぅ」


たまに変な吐息が挟まるどころかちょっとキツイ。

差し出された手を握ると、腕をすべすべと触り始めた。


「ヒッ!」


ついついそんな声が出てしまった。

慌てて口を押さえる。


「ごめんなさいね、私、良い男を見つけちゃうと抑えきれなくなっちゃって」


ポッと頬を染めた。

おい恥ずかしそうにするな。

何がポッ、だ。


「とりあえず仕立てて貰っても良いかしら」


お母さんが救いの船を出してくれた。


「そうね。少しラフな正装だったかしら?」

「ええ。お願い」


お母さんの目の前だと真面目になるのな。

当たり前か。握って魔石を潰すような人だもんな。わかるよ。


店の奥から持ってきたタキシード風の服やらいかにも異世界の魔法使いです感のあるコートやらを試着していく。


最終的に、魔法使いが正装としてよく着るロングコートに落ち着いた。黒を基調とした生地に、金の刺繍。

厳かでそれでいて静かな雰囲気。


本当は真っ黒でもよかったのだが。


というか、この世界の服は奇抜なものが多いのだ。

ショッキングピンクのタキシードなんて初めて見たわ。


そういう系の服ってびっくりするくらい似合わないのな。

すごかった。うん。すごかったとだけ言っておく。


「これで決定?」

「うん」

「了解しましたぁ」


どうやら一から作ってくれるらしい。

お母さんが先程生地を選んでいた。


ミシンもないこの時代じゃあ作るのに時間があるのではと思ったが、そうでもないらしい。


「彼女、あんなんだけど服を作る速さとセンス、繊細さは随一なのよ」

「やだ…ッ!姉貴に褒められるなんて濡れちゃう!」


濡れるところないだろお前。

それより姉貴って?


「あー…この子とは冒険者の時同じチームだったのよ」


んー?一瞬理解できなかった。

この人が?お母さんと一緒に?


「えぇ…」


驚きよりも困惑の方が強かった。

それから程なくして服は出来上がった。

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