表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/36

現状を確認しました

「見てのとおり、我が国は東西南北の4方向を大国に挟まれている。東のランス、西のルアンビ、南のエメリア、そして北のシロアだ。我が国はそれぞれの国からほぼ等距離の位置にある。そしてこれら4ヵ国はそれぞれに覇権争いをしており、我々は外界と呼ぶその4ヵ国以外の国々に勢力圏を広げ、衝突も起きているらしい」


「その覇権争いと言うのは、植民地の奪い合いと言うことですか?」


 帝国主義全盛の群雄割拠の時代なのかな?


「植民地もそうだが、小国を自国の保護国としたり、実質的な属国としたり、まあ手段は色々あるそうだが、とにかく4ヵ国は互いにしのぎを削っているそうだ。そして我が国はその4ヵ国にとって捨て置けない位置にあるのだよ」


「なるほど」


 私はウトカ将軍の言わんとしていることが何となくわかった。


 その4ヵ国が互いに敵対し、激烈な覇権争いをしている状況にあって、4ヵ国の中のどこかの国がこのジフ王国を占領、或いは自国の勢力圏化におくことは、その争いをする上で非常に大きな意味を持つということだ。


 各国から等距離にあるこのジフ王国を、仮にどこか1国が占領、或いは自国の勢力圏化においてしまえば、その国は他の3国に対して無視できない圧力を加えることとなる。なぜならその場合、このジフ王国が前身拠点となり、攻勢を行うにも防御を行うにも戦略的に優位な立ち位置を得られるからだ。


 すなわち、地政学的に見てこのジフ王国は、4ヵ国からすると他の国に対して圧倒的優位に立つための、大きな価値を持っていることになる。


 それだけの価値があれば、なるほど。200年間撃退され続けながらも奪おうとするのもわかる。


「つまり4ヵ国にとって、このジフ王国は戦略上重要な意味を持つ地と言うことですね。自らが覇権争いをする上で、他の3国を出し抜ける可能性を持っているという」


「ほほう、大和君。君は単なる模型店の店主と聞いていたが、戦略がわかるのだな」


 あ、そんな敬意を含んだ視線やめてください。いや、向けられて嬉しくないことはないですが、過大な期待込められても困りますし。


「いいえ、それは大袈裟です。自分の場合単に少しばかり戦史をかじっていて、そこから考えたに過ぎないことです」


「いやいや、それでも大したものだ。恥ずかしい話だが、我が国には戦略眼を持つものが少なくて」


 でしょうね。と口には出さないが、心の中で言わざるを得ない。 


 ミコさんからの話を聞いた限り、この国では軍人に対する高等教育機関がない。それどころか、教育機関そのものがあるか、かなり怪しそうだ。そうなると、基本的に軍人はこれまでの経験と勘頼りにしか考えることができない。


 地球に異世界転移する魔法を使ったあたりからして、決して真新しいことに挑戦しないことはないんだろうけど、それだって話を聞く限りじゃ目先の戦いに勝利するためだけだ。それはつまり、戦術次元の話でしかない。


 もちろん、過去の経験や勘頼りで、戦術的な勝利をすることが絶対にいけないとまでは言えない。現にジフ王国は200年間戦争を続けながら、自国を守り切っている。


 しかしながら、戦争というものは政治の延長と言われることもあるが、とにかく様々な要素が絡み合って起きる事象であり、戦争そのものに勝利すること、つまり戦略的に最終勝利を収めるためには、広く物事を見通さなければいけない。


 そして、そうした視点を持つことや、さらにはそれを活かすだけの能力を持つことは一朝一夕では出来ない。


 これまでのジフ王国は、敵にはない魔法や地球から持ち込んだ模型を実体化することで、敵に対して圧倒的な兵力を有し、その力で敵をねじ伏せてきたのだろう。だから戦術的勝利を幾度となく重ねた。


 だがこれでは、戦いには勝てても戦争に勝つ、そうは言わないまでも戦争を終わらせることは出来ない。そして大多数の人間は、戦闘に勝つことしか知らないから、戦争を終わらせることまで頭が回らない。


「そう言えば、先ほど外務部と言われましたけど、外交を掌る役所があるのですか?」


「あるぞ。ただ基本的には捕虜の交換や、商人や外国人から得た情報を取りまとめるだけだな」


「商人に外国人?ジフ王国は半ば鎖国していると聞きましたが」


「公式にはな。しかし、戦争が始まる以前からある程度の出入りはあった。そして今もね。それに、戦争で我々が勝っているのを聞きつけ、4ヵ国の敵対国や占領されている国の使者が、敵の目を潜り抜けてやってくることもある」


 互い関係が皆無ってわけでもないってことか。しかし、4ヵ国の外からやってくるってことは、大陸間の息を強行突破するわけだよな。命がけにも程がある。そこまでして来るって、この国をエルドラードか何かと間違えてないか?


 ま、それはそれとして。


「なるほど、そうした人たちから情報を得るわけですか。特に、商人からの情報は重要ですね」


「ただあいつら時々ガセネタを高く売りつけてくるからな」


「ですが、今回の侵攻計画は確度の高いものなのでしょう?」


「それは間違いない。複数人の商人から同じ証言が得られるているからな。ただそうは言っても古い情報だ。もしかしたらどこかの海岸に既に取りつているやもしれん」


「早期警戒体制・・・予め敵の接近を発見するようなシステムはないのですか?」


 レーダーはさすがに期待しないけど、せめて哨戒網くらいはないのかな?と思って聞いてみるが、現実は厳しい。


「そんなのは無理だ。そんな類の魔法はないし、例え発見しても魔信の届く範囲には限度がある」


 うん?アレ?何かおかしいぞ。


「だったら、艦艇を使うのは?アレには電探も水偵も搭載してありますし」


 うちの店が作った模型には、電探を搭載したものや水偵を搭載したものもある。それを利用すれば、濃密とまではいかないが、それでも早期警戒に役立てる筈だ。


 あ、ちなみに電探とはレーダー。水偵とは水上偵察機のことね。レーダーは電子の目で離れた位置の敵を発見できるし、水偵も何百キロ先の海上まで飛んで行って敵を捜索できる。第二次大戦ではどちらも敵発見に大活躍した。


 ところが、私の言葉にウトカ将軍もミコさんも顔を見合わせている。まるで意味が分からないと言わんばかり・・・ま・さ・か!?


「お二人とも、電探や水偵の意味がわからない?」


「ああ」


「ごめんなさい」


 ええ!?何で!!二人とも電探や水偵について全くわからないの!!


「ちょっと待って!え!何で!?電探も水偵も、昔から納品した模型に付属していた筈なのに!」


「そう言われましても」


「じゃあ、今までどうやって戦ってたの?敵をどうやって発見してたの!!」


「基本的に、海戦は艦の化身たちに委ねていますので・・・」


「どうやって発見するって・・・そりゃ、敵が我が国に接近したのを見つけ次第攻撃する以外にないだろ?」


 ギャアアア!電探も水偵も、それどころか電信機を搭載している軍艦持ってるのに、戦い方が日清・日露どころか幕末やんけ!


 と言うか、艦魂たちも本当に言われたこと以外答えてないんだな!自分たちをもう少し有効に使ってもらおうとか、そう言う考えないわけ!?


 これはもう絶望寸前の溜息を吐くしかない。


 でも落ち着け。落ち着くんだ!まだ戦いは始まっていない。軍艦の数も揃っている。今なら間に合う。


 とにかく、まずは電探と水偵について二人に説明しないと。


「電探と言うのはですね、電波を出してその反射から遠くにいる敵の方位や距離を知る機械のことです。少なくとも50海里先の敵を事前に発見できるはずです」


「「おお!!」」


 わあ、本気で驚いてる。本当に知らなかったんだね。


「で、水偵というのは水上偵察機の略です。飛行機・・・というか、この世界に飛行機ってありますか?」


「いや、ないな。言葉的に空を飛ぶ機械ということかね?」


「そうです」


「本当に空を飛ぶんですか?魔法も使ってない機械と言うことですよね?」


 出たよ、魔法使わなきゃ空を飛ぶと信じられない魔法使いの思考。


「飛びますって。なんなら山城に命じてすぐにでも飛ばさせてみましょうか?」


 百聞は一見に如かず。実際に二人に見せることにした。


 と言う訳で、庁舎の外に出て港に行って、「山城」の内火艇に乗り込んで「山城」へと向かい、山城を呼び出して水偵を出してもらう。


「わかりました。発進の準備に入ります」


 ちなみに戦艦「山城」の水偵は何度か搭載位置が変わっているけど、この艦はレイテ沖海戦で戦没する寸前の最終時の姿なので、水偵関係設備は全て艦尾に集約されている。


 なので、私たちも艦尾へと移動。


 艦尾には水偵発進用のカタパルト、そして組み立てた時と同じようにカタパルト上と甲板の軌条上に1機ずつ零式水上観測機が置かれている。


 すると、その内のカタパルト上の零式水上観測機のエンジンが勝手に回り始めた。そして、カタパルトが海面に向けて旋回する。


 全部山城がやっていると頭でわかっているからいいけど、飛行機にもカタパルト周辺にも人間は誰もいないから、違和感半端ない。


 そんな私の気持ちを他所に、火薬式のカタパルトが点火されて零水観が勢いよく打ち出された。機体は強制的に加速されると、そのまま風を掴んで空中に浮かび上がり、エンジン音を高らかに響かせながら上昇していった。


「「おお!!」」


 ウトカ将軍とミコさんが驚愕の声を発している。そんなに飛行機が飛ぶのがスゴイかな?・・・ま、このあたりは飛行機が飛ぶのを見慣れた現代日本人と、飛行機械の存在すら知らなかった人間との差なんだろうな。


「あれは零式水上観測機と言って、比較的に飛べる距離が短い機体ですけど、それでも半径150海里程度の海域を捜索できますし、電信機と言う電波で連絡する機械を積んでいるので、発見次第すぐに連絡してこれます」


「スゴイ、こんなものがあったなんて・・・」


「全然気づかなかった」


 本気マジで気づいてなかったんだな。2人の項垂れよう、特にウトカ将軍はスゴイぞ。


「あの店長。発進させた観測機どうします?」


「ああ、もう降ろしていいよ・・・でさ、山城」


「はい?」


「飛行機のこととか教えてやれよ!」


「聞かれてないことまで答える義務はありません」


 言い切りやがった!この艦魂。


 やれやれ。このあと着水した零水観をデリックで回収する所まで見届けた後、私たちは再び陸の庁舎へと移動し、今後の作戦を練ることとなった。


 



御意見・御感想お待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ