最高司令官と会いました
ちょっと出かける前なので粗削りになっています。今後修正など加えるかもしれません。悪しからず。
艦が完全に停止したところで、ミコさん、それから山城と一緒に甲板まで降りて、海面へと伸びるタラップへと向かう。すると、いつの間にかタラップの先の海面に内火艇が接舷していた。
「あれは山城が?」
山城に問いかけると、彼女は得意げに頷いた。
「はい。降ろしておきました」
内火艇というのは艦艇に搭載される動力艇の一種で、士官の移動用に主に用いられる。見たところ、小さめの全長が11mのタイプだ。
「操艇は?」
と山城に聞くと。
「お二人が乗り込めば、行きたいところに行ってくれますので御安心を」
全自動運転と言うわけか。魔法様々だね。
「山城は・・・やっぱり艦から離れられないの?」
彼女は艦魂。艦から離れることは出来ないだろう。そう予想して聞いて見ると。
「出来ないことはないですよ。ただそれ程遠くには行けませんけど」
全くできないわけではないようだ。
「さ、大和さん。行きますよ」
先に降りたミコさんが声を掛けてきた。あまり
「あ、はい。それじゃあ山城。また」
「はい、店長。お気をつけて」
山城の見送りを受けて、私たちは内火艇の乗客になる。艇の後部にある屋根付きの座席に腰かけると、艇がエンジン音を鳴り響かせながら、勝手に動き始めた。操舵室を見れば、勝手に舵輪が回っている。まさしくオートパイロットだ。
そして航行すること10分ほど、艇は無事に桟橋についた。桟橋って言っても、木で出来た簡単なものだったけど。足を降ろした途端、ギ―て音が鳴ったし。
さらに周囲を見回すと、桟橋には内火艇やランチが横付けされているけど、それ以外は木造の伝馬船のようなものばかりで、近代的な船が全く見当たらない。
さらに陸地の建物もわずかな赤レンガの建物を除けば、ほとんどが幕末か明治初期を思わせる木造の粗末な建物ばかりだった。そしてそれらの建物の間に、電信柱や電線の姿が全く見受けられない。魔法でなんとかしているかもしれないけど、どうしても見すぼらしく見えてしまう。
「ねえ、ミコさん。失礼を承知で聞くけど。本当にここが海軍基地なの?」
「はい。我が海軍最大の基地です」
「・・・とてもそうは見えないな」
これが最大って・・・じゃあ、他の基地はどんな規模なんだろう?
「先ほども申しましたけど、私たちの国は小さな国です。なので、海軍全体でも1000名ほどの小所帯です。持っている軍艦も、全て大和さんのお店で買った模型ですし」
何それ!?自前の軍艦が1隻もないの!?
「それで海防成り立つの!?」
頼ってもらうのは全然構わないけど、そこまで他力本願で大丈夫なんだろうか?
「今のところ、なんとかなってます」
「今のところはいいけど、例えば万が一地球に来られなくなったり、うちの店が閉店しちゃったりしたら、即死活問題になるじゃん。もう少し真剣に考えた方がいいよ」
「・・・はい、心得ておきます」
本当にわかってるのかな?問題を棚上げにしてる感が満載なんですけど。
全く、自前で軍艦を作れないどころか修理もできないなんて。本当に模型が手に入らなくなったら八方塞がりじゃないか。こりゃ本気で港湾や工廠の設備を手伝ってあげた方がいいかな?
「さ、行きましょう」
一抹どころか大いなる不安を抱えながら、私はミコさんに海軍の建物に案内された。その建物は、予想通り遠くからも見えたレンガ造りの建物だった。以前訪れた江田島の旧海軍兵学校とか、写真で見た明治期の海軍の建物と雰囲気が良く似ている。
「止まれ!」
建物に入ろうとしたら、2人の衛兵に止められた。あ、魔法のある日本風世界だけど、ちゃんとセーラー服着てる。それにライフルも持ってる。
「ミコ・レンカ上等士官。大事なお客様を連れてきました。至急海軍長官にお会いしたい」
「失礼しました。しばしお待ちください」
衛兵のうちの一人が敬礼をして、建物の中へと掛けて行った。
あ、敬礼も地球と同じだ。世界を越えても、似る部分は似るもんなんだな。
「魔法のある世界だからどんな格好しているかと思ったら、割と地球と同じなんだね。銃も持ってるし」
「昔は日本の和服とよく似た我が国固有の服を着ていたそうですよ。でも敵から鹵獲した軍服とか、艦魂たちの着ている軍服を参考に、今はこのようになっています。こちらの方が動きやすいですから」
服装はそう言うことか。陸上はともかく、狭い船の上じゃ和服よりも洋服の方が動きやすいだろうからな。
「それから、銃だって持ちますよ。近接戦じゃ魔法よりも便利な時もありますから・・・あと、銃ぐらいなら私たちの国でもなんとかなりますので」
決して魔法一辺倒てわけじゃないってことか。
そう言えば。
「上等士官て言ったけど、そう言えばこの国の軍の階級てどうなってるの?」
「はい。全軍共通で二等兵から上等兵、ニ等兵曹から上等兵曹、ニ等士官から上等士官に、将軍となっています」
「シンプルなんだね」
「軍隊自体が小さいですから」
「にしても、そうなるとミコさんは相当偉いんですね。失礼しました」
聞く限りだと、彼女は軍の階級においても高級士官となる。いかんいかん、ため口なんて失礼過ぎる。しかし、彼女はと言えば。
「そんな言葉づかいしなくてもいいですよ。私なんか、単にちょっと魔法が使えるからですよ」
いやいや。異世界に飛べたり、模型を本物の軍艦に出来たり。それでちょっとはないって。
しかし、偉い割には海軍の知識乏し過ぎだよな。士官教育受けてないのかな?
「ところで、ミコさんは士官学校のような組織は出たんですよね?」
「え!?何ですかそれ?」
彼女がキョトンとし。
「・・・はい?」
こっちもキョトンとしてしまう。
え!?まさかないの?
「ちょっと待ってください。どうやって階級とか決めるんですか?」
高等教育機関なしで、一体どうやって士官の育成してるの!?まさかくじ引きとかじゃないだろうな。
「ええと、私たちの国では国民は絶対に軍人として奉公しなきゃいけないんです。で、軍隊に入る時の入隊試験での成績や魔法の力とかで点数つけられて、階級が決まります。私の場合は入った時点で二等士官でした」
さすがにくじ引きじゃないか。でも、国民皆兵制てわけか。まあ、軍隊の規模からして選抜徴兵制なんだろうけど。
「それって国民全員が軍隊にとられるの?」
「いえ、現役で入隊するのは一握りで、ほとんどの人は予備役ですよ。その現役入隊者の中から、士官と兵隊にふるい分けるんです」
「じゃあ、魔法が使えない人が兵隊になるということですか?」
魔法至上主義なら、そういうこともあるだろうな。
ただミコさんの答えは、少し違っていた。
「いいえ。この国の人は魔法が程度の差こそあれ、みんな使えますよ。ただもちろん魔法が弱い人もいますし、それから軍隊に長くいたくない人とかは、最初から希望して兵隊ですね。士官になってしまうと、偉い代わりに最低でも10年は軍隊にいないといけません。けど、兵隊なら2年で満期除隊なので」
「下士官はどのようになるんですか?」
「基本的に兵隊上がりですね。成績優秀な人から選抜です」
「・・・なるほど」
小さな国の小所帯の軍隊だから、そんな運用で成り立つんだろうな。それに、軍艦の運用も本来は高度な技術や教育が必要だけど、基本的に艦魂任せで近海防衛だけに限るから、そこまで高度な技術もいらないってことだろうし。
本当に漫画か映画の世界だよ。
「上等士官、長官がお会いになられるそうです。あ、そちらの方も一緒に」
あ、水兵さんが呼びに来た。というか、僕も本当に会えるんだ。部外者なのにいいのか?
「ありがとう。では大和さん。参りましょう」
「あ、ああ」
こんな組織の長官てどんな人なんだろう?嫌な人じゃなきゃいいけど。
「おお!君があの軍艦を作ってくれているという店の人かね!いや、聞いていたよりも若いね。ああ、確か代替わりしたんだったな。では、御父上にも感謝の言葉を伝えておいてくれたまえ!ワハハハ!!」
う~ん、悪い人じゃなさそうなんだけど。
「おっと、紹介が遅れたな!ワシがジフ王国海軍司令長官のウコタ・ウトカだ!階級は将軍だ!よろしく頼むぞ!ガハハハ!!」
「後藤大和です。よろしくお願いします」
めっちゃテンション高いな、このおじさん。
司令長官室で僕を出迎えたのは、多分50代くらいで立派なカイゼル髭を生やしたおっさんだった。ただ着ているのが帝国海軍のに良く似た純白の士官服だし、階級章とかも明らかに偉そうなそれだから、海軍司令と言うのは間違いなさそうだ。
これは失礼な態度をとらないように気を付けないと。
「お話はミコさん、いえレンカ上級士官からお聞きしました。最高司令官とこうしてお話しできて、光栄の極みです」
と、なるべく失礼にならないように、丁寧な態度をとったんだけど。
「そんな畏まらんでもよいよい!君は我が国の救国の英雄だ!階級など気にせず、もっと砕けて話してもいいんだぞ!ガハハハ!!」
とバシバシ私の肩を叩いて来るんですけど。
でも隣のミコさんが苦笑いしているのを見るに、これが素なんだろうな。
別に嫌いじゃないけど、正直ちょっとどういう態度をとればいいのか、困るんですけど・・・ここはあれだな。話題を変えよう。
「閣下のお気遣い痛み入ります。しかし、今回納品を随分と急がれましたが、戦局はそれほどまでに逼迫しているのですか?」
すると。笑顔だったウトカ将軍の顔が一気に引き締まって、目が座る。
ひええええ!?これはマジもんの軍人だ!!
「うむ。この度は無理を言ったことお詫び申し上げる。しかしながら北のシロア公国が大規模な艦隊を動かしているという情報が外務部経由で入ってきておってな。どうしても軍艦の数を揃える必要があったのだ」
「その、シロア公国の艦隊は本当にこのジフ王国に攻めてきそうなんですか?」
「可能性としては充分にある。連中は常に南下して我が国を占領しようと、虎視眈々と狙っておるからな」
そう言えば、どうしてこの国がここまで狙われるのか、ミコさんからそこまでは聞いていなかったな。
「そう言えば、どうしてこの国は侵略を受けるようになったのですか?大国に囲まれていると聞きましたが、そこまで大きな国ではないですし、資源も乏しいと聞きましたが?」
普通に考えれば、そこまで執着するような国じゃないんだけどな。それともあれか、面子?それとも魔法関係?
「それは地政学的な問題なのだよ。まあ、まずはこの世界地図を見たまえ」
と、ウトカ将軍が世界地図を見せてくれた。南極と北極がある以外、見事なまでに地球とは違う陸地の配置だ。
「ここが我がジフ王国だ。そして、我が国を取り巻くようにある大陸が、我が国に侵攻を幾度も行っている四大敵国だ」
ウトカ将軍は地図上の一点を指さした。そこには、4つの大陸の東西南北の端に囲まれた、小さな群島が描かれていた。
御意見・御感想お待ちしています。
ちなみにジフ王国の軍隊については、とあるSF映画の某国の軍隊をモチーフにしています。




