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異世界における軍艦の運用法に唖然としました

「では、お茶も出してもらったことだし。ミコさん、あなたの国やうちの店との係わりについて、詳しくお話聞かせていただいてよろしいでしょうか」


 戦艦「山城」の航海艦橋。そこでこの艦の化身である山城に紅茶とお茶菓子をいただき、一息ついたところで、僕はミコさんからもっと詳しい話を聞くことにした。


「もちろんです。まず私たちの国のことですね。先ほども申し上げましたが、私たちの国はジフ王国といいまして、あなた方の国の言葉で言えば王制国家です。ほぼ全ての人が魔法を使えますが、人口は100万にも満たない小さな島国です。そして私たちの国は大陸国家のエメリア連邦、ルアンビ帝国、シロア公国、ランス共和国という4つの大陸国家に四方を囲まれた位置にあります。このため、過去200年にわたり幾度となくその侵攻を受け、辛うじて撃退してきました」


「その4つの国は、どれほどの大きさなんですか?ジフ王国よりは大きいということでいいんですよね?」


「もちろんです!一番小さなランス共和国の本国だけでも、人口4500万で国土も3倍以上の広さを持っています」


「それはまた。そんな大国の侵攻を防いでこられたのは、やはり魔法のおかげですか?」


「そうです。これらの国々にも魔法は存在するのですが、私たちの国ほどではありません。ですから、これまで撃退してこれました。しかし、科学力は圧倒的に彼らの方が進んでいます。なのでここ100年ほどは、侮れないことになってきました。そこで私たちは『転移』魔法を用いて、異世界から有益な武器や情報を持ってこられないか研究を開始しました」


「その結果地球の日本に辿り着いたと・・・でも、それが何でうちの店で模型を買うってことになるの?」


「ええと、これは最初に日本を訪れた前任の先輩から聞いた話なんですけど。先輩も日本のことを調査しつつ、情報や武器を持ち帰ろうとしたそうなんです。ところが、私たちの魔法では『翻訳』の魔法を使うことで話し言葉はなんとかなるんですけど、書き言葉の翻訳は不可能で。なので、例えば本を買って情報を持ち帰ろうとしても」


「読めないから意味がないと」


 僕の言葉に、ミコさんが首を縦に振る。


「それから、本物の武器を調達するのも考えたんですけど、日本のどこを探しても武器を買える場所が見つからなくて」


 だろうね。日本で武器を買うには銃砲店に行くしかないけど、買うためには手続きが必要だ。異世界人でまともな身分証を持たない彼女らじゃ絶対に手に入れられないだろうな。


「だから模型を買って、それを『実体化』したと?」


「はい。『実体化』なら操る意味でも好都合なので。実物の軍艦を操ろうとするなら『使役』という魔法を使うんですけど、こっちの方が『実体化』より難易度高いんですよ」


 なるほど。確かに、苦労して本物の武器を買うメリットよりか、模型を買って『実体化』した方が楽なわけか。


「あ、あと『転移』で移動する時に荷物が少なくて済むとも聞きました。大きな軍艦なんてとても持ってこられないって」


「そりゃまあ、荷物は軽い方がいいだろうね・・・で、うちの店を利用した理由は何?」


「それは、前任者の方が単に『転移』魔法で最初に出現したのがこの街だったのと、この街の模型店で組み立てまでしてくれる店が、大和さんのお店だけだったそうです」


 そう言えば、この街には潰れた店も含めて模型店は何店かあったけど、工作のサービスをやってるのはうちの店だけだって親父が言ってたな。


「自分たちで組み立てるとかは考えなかったの?」


「実は、最初はそれをやろうとしたそうなんですよ・・・ところが、こちらで組み立てると『実体化』したさいに、何らかの事故が起きたそうなんです」


「事故?」


「ちゃんと実物にならないとか、魂が宿らずに操れないとか、走らせたら爆発したとか」


「怖!え!?なんでそんなことに?」


「詳しい理由はわかってないんですよ。おそらくはこの世界に存在する魔力が干渉しあった結果だって言う人もいるんですけど、今も不明です」


 理由はわからないけど、確かにそれなら自分たちで組み立てようなんて気は起らなくなるわね。


「そういうわけで、あなたのお店に頼むしかなかったんです」


「だから工作のサービスをやめるって言った時、あんなに取り乱したんですね?」


「はい」


 そりゃまあ、大事な武器の製造元が消滅するってなれば、死活問題だよね。


「だから、大和さんが続けてくれるって言った時は、本当にホッとしました」


「いえいえ。けど、親父もミコさんたちの命懸かってるんだから、もう少し気を遣ってあげてもいいのに」


 親父は私が工作のサービスを廃止するって言っても、特に反対しなかったよな。ミコさんたちの事情知ってたんだから、それとなく止めてくれてもよかったのに。


「それは仕方がありません。大和さんのお父様、それから一番最初にお世話になったお祖父様も、模型を売って作ってくれることは約束してくれましたけど、それはあくまで商売としてということでしたから」


「まあ、下手に戦争に関わりたいとは思わないよな」


「大和さんも、やっぱりお父様と同じ考えですか?」


「そりゃまあ。商売として、ちゃんとお金も払ってもらって、常連さんに頼まれれば模型はちゃんと売りますけど、戦争に関わるのはちょっとね・・・あ、そう言えば」


 ここであることが気になった。


「はい?」


「お金はどうしてるんですか?うちの店で買い物する時は、ちゃんと日本のお金出してましたよね?」


 今日もそうだったけど、ちゃんと日本円で受け取った。あれどうやって調達したんだ?まさかあれも魔法で調達したのかな?


「あ、それは顔なじみのお店で金と交換してもらってます」


「ああ、なるほど。確かにそれならこちらでも換金できますね。でもいいんですか?金を異世界に流出させちゃって?」


「はい、必要なことですから。それに、私たちの国では金は魔法で作れますので」


 その言葉に、私は思わず吹き出してしまった。今この人スゴイこと言ったぞ!


「え!?まさか、『錬金術』で生産可能とか?」


「そうです。私よりもさらに魔法を極めた、上級魔導師の中でも一握りの人しかできませんが、『錬金術』で金を作れますよ。だから貴重品ではありますけど、減った分は補充ができますよ」


「さすがは異世界。金を自力で作れるとはね」


 バンバン大量生産は無理っぽいけど、作りたいときに作れるって反則だよ。


「そうやって日本円を調達したとは。で、そのお金で模型を買っていたわけだ」


「そうです。あ、模型だけじゃなくて時々日本のお菓子買ったり、レストランで食事したりもしますよ。日本の料理はおいしいので、お土産で持って帰ると皆驚くんです」


「あ、そう・・・話は変わるけど、うちの店で模型買う理由はわかったけど、どうして戦艦と駆逐艦ばっかり買うの?」


 すると、ミコさんがキョトンとした顔をする。そんな変な質問したか?


「え?だって大きな大砲と、たくさんの魚雷を積んだふねの方が強いんだから、それでいいんじゃないですか?」


 え!?まあ確かに、戦艦は最強の砲戦力持ってるし、駆逐艦は魚雷発射管を多数載せているけど、普通それだけじゃ艦隊はなりたたないぞ。


「でも、それじゃあバランス悪くない?空母や巡洋艦、それから戦艦や駆逐艦だけにしても、補給艦艇が必要・・・そう言えば、燃料とか弾薬とかはどうしてるの?それも魔法で増やしてるの?」


「まあ、増やす場合もあるんですけど・・・」


 うん?なんか歯切れが悪くなったな。そんなに言いにくいのかな?


「必要な量が多いので、さすがに魔導師だけでは賄えなくて・・・それに修理できませんから、だから・・・解体して鋼材にするか、漁礁として沈めて新しい艦に買い替えています」


「おい!」


 さすがに突っ込まざるを得ない。


 人が苦労して作った模型を!・・・まあ、それはいい。買われた以上、その商品をどうするかはお客さんが決めることだし。でもだからって、まだ使える軍艦を安易に解体や漁礁として沈めるなんて、勿体ないにもほどがあるよ。


「だって仕方がないじゃないですか、修理もできないし補給も出来ないんじゃ」


「だからって無暗に解体や沈めるかあ・・・そうか、だから同じ艦を何度も購入してたんだな」


 話から推察するには、最初に『実体化』した時は燃料も弾薬も満載なんだろう。でも一度消耗すると補給出来ないってことか。まあ、戦艦が食う燃料や弾薬はスゴイ量だからな。如何に魔法でも無理ってわけか。


 にしてもなあ。


「ええと、山城もそういう目に遭ったわけ?」


「はい、私は解体が2回で自沈処分が3回です」


 この娘、自分が沈められたのに淡々と言うね。


「え、それでいいの?」


「私は『実体化』した魔導師の指示に従うだけですし、仮にそうした目に遭っても、新しい艦を作っていただければ、そちらに移るだけなので」


 そう言うことか。艦魂も同じ艦を作ればそっちに移るのね。でも、やっぱり釈然としないな。


「でも一々作り直される身としては、迷惑千万なんだけど」


「ごめんなさい。でも、大和さんやお父さんの模型でのおかげで、我が国は何度も敵軍の侵攻を撃退できたんです。その点は事実ですし、我が国の誰もが感謝していますよ」


 いや、それは頭下げたあなたの態度から見て重々伝わってくるんだけど。これとそれとは・・・まあいいや。追々また考えよう。


 それから。


「あと、戦艦買うにしても何で「金剛」型に「扶桑」型なの?「長門」型とか「大和」型とかもっと強力な戦艦あるのに」


 彼女たちが買っている戦艦の多くは「扶桑」型に「伊勢」型、「金剛」型だった。別に非力とは言わないけど、模型ではもっと強力で新型の「長門」型や「大和」型だってちゃんとある。何でそっちを買わないのか理解できない。


 すると、またミコさんがキョトンとした顔をする。だから、そんなに私変な質問してる?


「だって、大砲をたくさん積んでる方が強いんじゃないんですか?」


 彼女の言葉に、思わず天を仰いだ。


 まさか。


「もしかしてボックスアート、箱に描かれた絵で買う艦選んでたの?何十年も!?」


 確かにボックスアートだけだと大きさは推し量りにくいし、軍艦の砲門の数とかもわかりやすいけど、ちょっと単純過ぎない!?


「だって、他に判断材料ないじゃないですか!?」


 そりゃそうかもしれないけど。日本語が読めないから、箱についてる説明文とかも読めなくて、ボックスアートでしか判断できなかったかもしれないけど、それでももう少し何とならなかったの?


「親父は?」


「特に何もいいませんでした」


 親父・・・


 それに。


「山城たちも何も言わなかったの?」


 後ろで静かにしている山城に矛先を向けてみる。けど、彼女はまたも淡々とした表情で。


「私たちは、余計なことは喋りません」


 それって知ってて黙ってたってこと?


「それに、「大和」や「長門」や空母が来たら私たち活躍できないじゃないですか」


 いや、小声で言ったつもりかもしれないけど、聞こえてるからね!


 やれやれ。そりゃ私だってプロの軍人でも、戦史研究家でもないけど、ちょっとこれはヒドイ。


「ミコさん、少しばかり時間いただいてよろしいですか?」


「はい?」


 素人の生半可な知識だけど、ちょっとばかり軍艦やその使い方に関してレクチャーさせてもらおう。




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