国王救出作戦を開始しました
ヅイヤに戻った私とミコさんは、合流したウトカ将軍、さらには一緒についてきたアリー姫も交えて、いつものメンバーとともに、早速国王救出ならびに反乱軍殲滅のための作戦立案に入った。
「と言うわけで、アリー姫から提供された情報により、国王陛下の隠れている場所は判明した。私たちの作戦目標は、まず第一にこの国王陛下の救出。それも無傷でだ。第二に反乱軍急進派の殲滅と、反乱軍に対して決定的な勝利を収めて、投降を促すということになる」
「でも店長。現状の戦力では、かなり難しいミッションですよ。救出しようにも、陸の上では軍艦は役に立ちません。航空戦力も同じです。となると、直接地上戦力送り込むしかないですが」
「その通りだ、幸作君。よって今回の作戦では、限定的に現代の兵器を投入したいと思う」
「おお!?ついに」
「その現代の兵器とは、何かな?」
ウトカ将軍の問いに、私は力を込めて答える。
「ヘリコプター。またの名を、回転翼機です」
これまでは敵との圧倒的な戦力差から、第二次大戦レベルの兵器までしか投入してこなかったけど、幸作君のいうとおり、その現状の戦力で国王を救出しようと思うと思うと、どうしても陸上戦力を直に投入するしかなくなる。これらは戦車に装甲車もあるから、市街地を強引に突破することはできる。
しかし、それによる民間の被害は相当なものになるだろうから、アリー姫の要請を考えると今回の作戦に投入するわけにはいかない。
他に短距離離着陸可能な機体の投入も考えられたけど、隠れ家の近くに適当な着陸場所がない。となると、直接上空に乗り付けられるヘリ以外あり得ない。
しかもヘリは汎用性が高い。輸送も出来るし、武装を施した対戦車ヘリなら攻撃も可能と来ている。欠点があるとすれば、速度が遅いために固定翼機に対して弱い部分があるけど、この世界の敵は空を飛ぶ兵器を有していない。飛び上がった魔導師が脅威になりえないのは、偵察飛行で証明されている。
「輸送用のヘリと、攻撃用のヘリ。それぞれ2~3機ずつあれば十分でしょう。それでもって、国王陛下の隠れ家の近くに直接乗り付け、国王陛下の身柄を確保。万が一反乱軍が駆け付けても、対応できるでしょう」
UH60Jヘリとアパッチあたりが適当かな?
私は幸作君と交えて、ヘリの特徴や性能をウトカ将軍らに簡単に説明した。
「なるほど、その回転翼機を用いれば確かに救出は容易になりそうだ」
「だが、反乱軍とて容易には見逃してはくれんだろう。特に急進派の連中なら、差し違え覚悟でぶち当たって来るぞ。たったそれだけの戦力で大丈夫か?」
アリー姫が指摘する。現代兵器との性能差をわかっている私たちから言わせると、取り越し苦労と言えなくもないが、一方で万が一と言うこともある。保険は必要だろう。
「それに関しては、陽動作戦を行いたいと思います。我々には海軍陸戦隊1個中隊がおります。これに戦車、装甲車、トラックを組み合わせて臨時機械化部隊を編成し、王都西方から攻撃を掛けます。そうすれば、敵軍はそちらに戦力を向けざるを得ないでしょう。また北、東側からもこれまでで最大規模の航空戦力を投入し、陽動攻撃をかけます」
とにかく、国王陛下の救出に必要な時間の間だけ、敵の注意を逸らせればいい。そのために、これまでで最大の戦力を投入する。
それに隠し玉はまだある。
「加えて、ジゼンチ湖にも新たな戦力を投入します」
現在は工作作戦の拠点に過ぎないが、王都から20kmという距離はアレを使うにはちょうどいい。
「これだけの戦力を投じてでも、国王陛下の御身を傷つけることなく、また市民への被害も最小限に抑えて作戦を成功させてみせます」
「・・・ウトカ将軍、卿の意見はどうじゃ?」
「この者たちなら、必ずやり遂げてくれると信じております」
じゃないと、こちらもあなたの刀の錆になりかねませんからね。
「・・・わかった。将軍と客員将軍に全てを託す。で、作戦の実施日は?」
「それに関しては、国王陛下側の回答次第です。救出時間を短くするためにも、双方の連携が必要不可欠です」
とりあえずアリー姫の許可は得た。あとは工作員が国王側と接触して、細かい日付を決めるだけ。その間に僕と幸作君はヘリの模型を用意すると。それから、陸戦隊も出撃準備をさせないと。あと、アレも準備しないとね。
やることは山ほどある。
作戦決定から10日後、作戦決行日を迎えた。国王陛下と再度コンタクトをつけ、実行までに1週間しかなかったけど、これ以上反乱を長引かせるわけにもいかないし、何より国王陛下が負傷している。一刻も早く収容する必要があった。
まず作戦の第一段階として、陸戦隊1個中隊約120名を陸路ヅイヤから王都タベスへと向かわせた。訓練を開始して3カ月強なので、現状基礎段階の訓練しか完了していない。正直戦闘をさせるには不安があるけど、車両や教官格(実体化した銃たち)の支援もあるし、何より今回はあくまで陽動だから、ウトカ将軍とも話し合って投入を決めた。
彼らには出来る限り目立つように進撃するよう命じた。これでどこまで効果があるかわからないが、王都を制圧している反乱軍に動揺を誘い、戦力を分散させてくれれば満点だ。
ちなみに練度不足のたかが1個中隊とあなどるなかれ!歩兵は全てジープやトラック、ハーフトラックに乗車しての移動となっていて、さらに随伴として97式中戦車6両と95式軽戦車6両、M24「チャーフィー」軽戦車を4両つけている。
魔導師を含んでいるとはいえ、幕末レベルの科学力しか持たない反乱軍相手なら十分すぎる戦力を用意した。
どこぞの提督も言ってるけど、戦いの勝敗なんてやる前に決まる。そして数も大事。圧倒的な力をもって敵を叩きつぶすまでだ。
で、その敵を叩き潰す戦力はそれだけじゃない。これまで同様、いやさらに強化した基地航空隊もあるし、そして今回の作戦用に用意したアレがある。
ただし、敵を叩き潰す前に国王陛下を無事に救出しなければならない。そのためにUH60JAヘリ3機と、護衛としてAH64ヘリ3機を用意した。また万が一の後詰めとして、同じ戦力の部隊をワンセット待機させている。これでダメなら、もっと強力な戦力で強引な方法を採るしかなくなるけど、そうならないことを祈るしかない。
ちなみに、今回私は総指揮官として後方で指揮に専念・・・なんて上手い話にはなりませんでした。いやだって、アリー姫やウトカ将軍まで前線に出るとか言い始めるんだもん!この状況で「私は行きません」なんて言えるわけないし!
と言うわけで、今回は私もUH60JAヘリに乗り込んで出撃。一応日本に戻って買い込んだ防刃チョッキやヘルメット、迷彩服に身を包んでいるけど、正直に言って普通に怖い。
だって私、本来はいっかいの模型店の店長なんですよ!軍人としての教育なんて受けてないんですよ!
「でも前は軍艦に乗って普通に出撃したじゃないですか?」
そんな憂鬱な気持ちを見透かしたミコさんが、首を傾げながら聞いて来る。
「いやミコさん。戦艦のどっしりとした安定感と、バリバリにエンジン音と振動が響き渡るヘリと一緒にしないでください」
分厚い装甲板に囲まれて、しかも相手と性能差があるゆえに一方的に蹂躙できる戦艦と、確かに高性能とは言え敵と間近で銃撃戦をする可能性のあるヘリと、一緒にしないで欲しい。
ちなみに、私とミコさんはアリー姫、ウトカ将軍と一緒に1番機に乗っている。幸作君とケイ君の2人は2番機に乗っていて、1番機は国王陛下を乗せるスペース確保のため、武装はしていない。いざと言う時は、機内にあった89式小銃と携帯空対空ミサイル、そして各自が持った拳銃や刀だけが頼りになる。
「まあ、もし万が一何かありましたら、私が守るので御安心を」
と、心強いことを言ってくれるミコさん。ただ比喩でも冗談でもなく、いざとなったら彼女だけが頼りになるかもしれない。
「よろしくお願いしますね」
もう本気で頭を下げるしかない。
「前方に王都視認!」
インカム越しに、この機体の化身の声が聞こえてきた。すかさず、僕たちは前方が見える位置まで行く。
「陽動作戦を、派手にやっているようですな」
王都周辺では、爆炎が上がっているのが見えた。恐らく先に陽動攻撃を開始した陸戦隊や航空隊によるものだろう。
ただその光景を、アリー姫は複雑そうに見ていた。
「うむ。だが、民たちには出来る限り被害がないといいんじゃが」
本気で市民のことを心配しているようだ。なるほど、王家が市民から支持を受けているわけだ。
「陸上部隊も航空隊も、反乱軍以外への攻撃禁止は厳命してあります。あとは、誤射などがないことを祈るだけです」
とりあえず、形式的に返すしかない。こればっかりは絶対とは言い切れないからね。何せ戦場ですから。
「目標まであと2分!」
「了解!アリー殿下、将軍。間もなくです」
「「おう!」」
威勢よく答える2人。やる気十分なのは結構だけど・・・いや、これ以上は言うまい。あとは神が振るサイコロに任せるしかない。
2分後、ヘリは目標上空に到達した。
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