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異世界行きを継続しました

「また随分と厄介なことに巻き込まれたな・・・ま、自業自得だが」


 私の話を聞き終えた親父がバッサリと言い切った。厳しい言葉だが、間違っていない。向こうの世界に深入りする原因を作ったのは自分自身なんだから。


「で、どうする?命の危険があるんだ。向こうの世界に行くのやめるか?」


「いや、それは無理だよ。今更行かないなんて選択肢はないよ」


 私はチラッとミコさんの方を見る。すごく不安げな表情をしている。多分私が向こうに行くのをやめるんじゃないか、心配しているんだろうな。


 確かに私だって命は惜しいし怖い。だけど、ここまで首を突っ込んでおいて放り投げるのも無責任過ぎる。


 それに、本音を言うと確かに殺されるかもしれない怖さと言うのはある。一方で、模型を『実体化』することで本物の艦艇や兵器に触れる面白さ、好奇心はそれ以上に大きかった。あと、女の子に頼られるというのは子供の時以来だしね。


「ま、ウトカ将軍も最大限配慮してくれるって約束してくれたし。次向こうに行く時は、何か菓子折りでも持っていかないとね」


「そっか。お前がそう言うなら何も言わない・・・と、お土産なら松乃屋さんの和菓子セットなんかどうだ?アレ結構評判いいぞ」


 息子が生命の危機にさらされているにも拘わらず、親父はそれ以上言及してこなかった。息子の自主性に任せているからなのか、それとも自分が店を継がせたことも遠因だからとやかく言わないのか、どちらにしろこっちとしては助かる。


 それにしても、松乃屋さんか。懐かしいな。この地区に古くからある菓子屋さんで、和洋菓子ともに揃っている。今は確か3代目の店長がやってるけど、市内で頑張ってる店ってことで新聞にも載ったな。うん、あの店の菓子セットなら将軍も満足するだろうな。


「そうだね、後で買いに行くよ。軍資金はたんまりあるし」


 今回もジフ海軍から対価として金を貰っている。換金する必要があるが、換金すればそれなりの額になる量だ。ただしあちらの世界では、魔導師が簡単に『錬金術』で精製できるので、そんなに価値のあるものではない。


「ところで、幸作君はどうかな?今日は休みみたいだけど」


 模型製作のために雇った新人君。今日は姿が見えないので休みみたいだ。


「今日は休みだけど、お前が出かけている間もしっかり模型作りはしてくれたぞ。何件か依頼のあった工作の仕事もやってくれたし。ただやっぱり接客はダメみたいだけどな。お前が向こうに行ってる時間が長くなるなら、そっちの方も雇わなきゃいけないかもしれん」


「そのあたりは、また考えよう。今は模型を作ってくれるだけで充分だって。で、彼が作った模型はいつもの所でいい?」


「おう、置いてあるから見てこい」


 親父に言われて、ミコさんと一緒に完成品スペースを見に行くと。


「お!出来てる出来てる」


 幸作君に組み立てを指示しておいた艦船が何隻か完成していた。そして少しスペースを置いて、別の塗装済みの完成品が置かれていた。これは工作を依頼したお客さんのものだろう。もちろん艦船だけじゃなくて、造船所や基地の拡張に必要な建物や車両の模型も置かれていた。


「やりましたね大和さん!また軍艦が増えますよ!」


 ああ、ミコさんの純粋な笑顔が眩しい。


 そんな純粋な気持ちのままでいられればいいな~と思わずにはいられない。無理だけど。


「あとそれから、本屋から注文していた本が届いた連絡あったぞ」


「了解。後で取りに行くよ。やれやれ、こっちに戻って来ても休んでる暇はないな」


 平和な日本に戻って来ても、やることはたくさんある。店の仕事に向こうへ行くための準備。


 う~ん。やっぱりもっと協力者を増やさないともたないよな。


 私は真剣に関係者を増やすことを、考えてしまうのであった。




 1週間後、こちらでの用事が済んだ(ついでに久々の店番もした)ところで私とミコさんは再びジフ王国側へと転移した。そしてウトカ将軍に挨拶してお土産を渡すと、そのままレクの造船所へ急いだ。


 今回は艦船というまどろっこしい手段は使わず、飛行機を使うことにした。艦船模型に付属していた二式大型飛行艇をミコさんに『実体化』してもらい、それでレク造船所へと向かった。


 二式大艇は旧日本海軍の傑作飛行艇で、日本でも数少ない四発機だった。速度は飛行艇ゆえに陸上機には及ばないが、滑走路がいらず海に直接降りられるのは、現状滑走路がないジフ王国の沿岸部を移動する上では非常に便利だ。


 現に艦船では丸1日掛かる距離も、飛行機なら数時間で到着する。しかも、二式大艇は航続距離が長いので途中で給油する必要もなく、直行できた。


 私たちを乗せた二式飛行艇は途中何らのトラブルに遭うこともなく、レクへ向けてまっすく飛んだ。


「まもなく、レク造船所上空です」


 機長が私たちに告げた。流石に飛行機、早い。


「了解・・・レク造船所に着陸を無線で通達。それから、造船所の様子を見たいから、1回上空を旋回して」


 予定通りなら、レク造船所周辺にはケイ君ら残留作業員の手によって、砲台や対空砲陣地、射塁なんかが整備されて、接近する敵に対して攻撃できるようになっているはず。味方撃ちは良くあることなので、予め無線で知らせておくわけだ。


「了解!」


 この飛行艇の魂、面倒くさいから機長と呼ぶけど、中尉の階級章を付けた飛行服を着た中年男性が威勢のいい声で答える。


「やっと到着ですか・・・」


 機長の目的地接近のアナウンスに、ミコさんがめちゃくちゃ顔を青くして弱弱しい声で言葉を発する。


「ミコさん、無理せず寝ていてくれればいいんだよ」


「・・・いつ落ちるかわからないのに、寝ていられません」

 

 これだよ。『実体化』の魔法を掛けるまでは元気だったのに、「じゃあ、これで飛んでいきますよ」と言った途端に顔を真っ青にした。


「空飛ぶ魔法は使えるのに、飛行機乗るのがダメなんて、意味がわからないよ」


「だって!こんな金属のデカ物が飛ぶなんて・・・ありえないです!」


 いや、人間が魔法で飛ぶ方があり得ないんだけど。


「でも飛行機が飛ぶシーンなんて何度も見たじゃない?」


 これまでに零式水偵が飛ぶ姿なんかを、数回は見ているはずなんだけどね。


「アレとコレとは話が違います!」


 どうやらただ飛ぶのを見ているだけと、自分が飛ぶのでは話が違うらしい。難儀なもんだ。


 そうしている間に、レク造船所上空に到達した二式大艇は上空を旋回する。


「おう、留守番の皆さん。ちゃんと仕事してくれたみたいだね」


 出発する前にはなかった建物や施設がいくつも完成していた。そしてドックには駆逐艦が入渠しているし、沖合にはヅイヤの港から移動してきた「山城」などの戦艦群も見える。


「よし、機長着水願います」


「了解」


 無事に着水した二式大艇は、そのまま海上を滑走して、出来上がったばかりの桟橋へと接舷した。


「う~。助かった。生きてるって素晴らしいです」


「何言ってるんですか!?ほら、荷物降ろすの手伝ってください」


『実体化』した飛行機はほとんど無人機と同じだけど、こういう作業はさすがにやれない。私たちは積んできた荷物を、機長ややって来たジフ兵たちの手も借りながら降ろし、造船所の方へと運び込んだ。


 



「あ、帰りなさい店長。それにミコ殿」


「あ、ただいま所長」


 造船所の敷地内に入ると、その化身であり造船所長という肩書を持つリョウジが早速出迎えてくれた。


「造船所の工事は順調みたいだね?」


「はい、皆さんいい仕事してくれてますよ。施設は予定通り完成、稼働を開始しています。それに伴って、ヅイヤから回航された艦艇を現在順繰りに入渠させているところです」


「損傷した「霞」は?」


 駆逐艦「霞」は前回の海戦で唯一損傷を負った艦で、なるべく早くドックに入れて修理してやりたかったのだけど。


「はい、真っ先に修理と補給を行いました」


 その言葉に、少しばかり安心する。


「それは結構」


「ただし、戦艦については現状のドックでは対応できないので、沖待ちの状況です」


 さっき見た停泊中の戦艦たちだな。既にドックは完成したけど、駆逐艦用の小型ドックなので、戦艦のような大型艦は入渠できない。


 そのための大型ドック設置が、これから始める第二次工事のメインだ。


「それについては心配ない。今回持って来た模型の中に、戦艦が入る大型ドッグも含まれているから・・・あ、ただミコさんがこれだからな」


「ヴぇ~い」←コレ


 う~ん、休ませずに荷物降ろし手伝わせたのがマズかったかな?完全に力尽きてる。これ以上は無理っぽい。


「ええと、作業員用の宿舎は完成してるよね?」


「はい」


「ミコさん、そこで休ませてもらいなよ。今日はもう無理でしょ?」


「はい、お心遣い感謝します」


 これからは飛行機での移動は控えた方がいいかな?と、リョウジに案内されてフラフラな足取りで歩くミコさんの背中を見て思う私でした。


「無事にお送りしました」


 ミコさんを送ったリョウジが戻ってきたところで、私は作業を開始する。


「ありがとう。それじゃあ、早速大型ドックの『実体化』に入ろうか。あまり待たせると戦艦の連中が怒って36cm主砲弾をぶち込みかねないからね」


『実体化』した本人を襲うことはないので、そんなことはありえないのだが、どちらにしろ待たせ過ぎると艦の状態は悪くなる一方なので、早めに入渠させるのは間違っていない。


「すまないけど、魔導師さんたち呼んで来て」


「はい」


 数分後、呼ばれたケイ君ら魔導師の皆さんがやってきた。


「お帰りなさい大和さん・・・て、その階級章は?」


「ああ、ウトカ将軍から客員将官の位をもらってね」


「ひえええ!?スゴイことじゃないですか!」


 今回ウトカ将軍の計らいで、正式に将官待遇の軍属と言う身分である客員将軍の地位をもらった。正規の軍人ではないけど、地位としてはそれに準ずるものらしい。軍人でもない自分がこんな地位もらうのは不相応だけど、こうでもしないとウトカ将軍が提示した計画にも差し障るので、ありがたく頂戴した。


 で、今私が着ているのは先日買い込んだアニメの艦長服なんだけど、肩章を付ける部分があるので、そこにウトカ将軍からもらった将軍の肩章を縫い付けてもらった。


 ちなみに、ウトカ将軍も含めてジフ王国海軍の将軍は3人しかいないらしい。ケイ君の驚きももっともなところか。


「言っておくけど、客員将軍だから、正規の将軍じゃないよ。指揮する兵隊がいるわけでもないし。あくまで助言者アドバイザー程度に考えてくれれば良いって」


「は、はい!よろしくお願いします」


 と言いながら、ガチガチだね。


 これはちょっと、慣れるまでに時間かかりそうだな・・・まあいいや。さっさと作業を進めよう。


「それでは皆さん。これより、今日私が持ち込んだ施設の『実体化』を行っていただきます。模型自体は縮尺の小さなものですが、実物は全長が300m近くあるものです。くれぐれも、作業の際は安全に留意し、慎重に行ってください」


「「「おおう!」」」


 魔導師さんたちが腕を振り上げ、声を上げる。


 うん、士気が高いのはいいことだ。私自身、楽しみで仕方がないしね。


 興奮を抑えながら、私たちは大型ドック設置予定地へと向かった。


 




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