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第六話 カルタ家とマクラーゲン家

更新遅れてごめんなさい!久しぶりです、高橋出愚太です。最近リアルがとても忙しくて・・・


そして更にごめんなさい!リアルが忙しすぎて全く書けないのでしばらく更新は不定期となります。(今更感)ごめんなさい。

「だからね?こういうのは困るんだよ。分かった?」


夜、僕はルルにお説教していた。


僕は(没落しかけの)小貴族。対するルルは大貴族どころか王家の親類。王位継承に関わることはほぼないが、それでも僕のような小貴族(しかも没落しかけ)は本来であれば関わりが持てないような子だ。


位が高く、又美人さんなので、まだ幼いながらもゆくゆくは我が息子のお嫁さんに・・・とお見合いみたいなものを申し込まれることがしょっちゅうある。しかし、その全てをルルは「好きな人がいるから」と断ってきた。そしてその好きな相手が小貴族(没落しかけ)の、更には次男。そりゃあ気にくわないよねぇ。毎日抗議の手紙が届く。気にしてはないけど、気分のいいものではないし、いつヒートアップして嫌がらせをしてくるか分からない。


だから少なくとも表だって僕のことが好きだと言ったり、そう受け止められるような行動は慎んで欲しいと何度も言っているのだけど・・・聞いてくれない。現に今も僕の話を聞かずにボーッと僕の顔を見つめている。端からみたら真剣に聞いているようにも見えるけど、僕には分かる。これは何も考えてない顔だ。


あ、そうそう、今さらっと言ったけど、実は僕、次男です。カルタ家の長男はマルタス=カルタ。僕の3歳年上で、中々のイケメンだ。運動はからきしだが、物凄く頭がいい。「脳筋」がある僕と正反対だ・・・別にそこまで勉強が嫌いだったわけでもないんだけどなぁ・・・まあとにかく、僕はそんなマルタスを尊敬してる。


「ははは。ルルは本当にタルマのことが好きなんだな」


僕とルルのやり取りを見てマルタスが笑う。


「・・・愛してる。お義兄様、弟さんを下さい」


付き合ってすらないのに気が早すぎだ。そもそもまだ結婚できるような年じゃないだろう。


「う~ん、僕はタルマがいいならいいと思うよ?タルマ、ルルアリアはこう言ってるけどどうする?」

「・・・タルマ、義兄様の許可が出た。結婚しよう」


マルタスの言葉に調子に乗ってそんなことを言ってくる。今がチャンスと思っているのか、グイッとこちらに身を乗り出してきてもいる。だが、マルタスは関係ない。


「ごめんなさい」

「・・・だが断る」

「拒否の拒否!?」

「・・・誰に何と言われようとも、ルルはルルの意見を曲げない・・・!」

「格好いい台詞だけどダメだよ!?ここは曲げないといけない場面だよ!?」

「・・・絶対に幸せにするから」

「そう言われても・・・」

「・・・結婚してくれないと、死ぬ」

「メンヘラ!?」

「・・・もう何でもいいから結婚して」

「何でもいいって・・・」

「・・・何でもするから」

「じゃあ結婚しようって言ってこないで」

「・・・わかった。契約成立。これで私たちは夫婦」

「何で!?」

「・・・タルマが言ったのはプロポーズしないでってだけ。結婚はする」

「じゃあ、さっきの取り消して、僕と結婚しないで!」

「・・・だが断る」

「今度は何で!?」

「・・・何でもするとは言ったけど何でもしないとは言ってない」

「屁理屈だ!」

「・・・タルマの意見は聞いてない」

「何で!?なら僕はどうしたらいいの!?」

「・・・ルルと結婚すればいい」

「ごめんなさい!」

「・・・だが断る」

「無限ループだ!?」

「ふふふ、二人とも、仲が良いのね」


僕とルルが言い合っていると、一人の女性が料理を持って部屋に入ってきた。


彼女はイルシア=マクラーゲン。ルルのお母さんだ。育ちの良さが窺われる品のある笑い方。小さい頃から大貴族の令嬢として上品な貴族のたしなみを学んできたことがわかる。そう、イルシアこそが王族の親戚、現王の再従兄弟なのである。


ルルのお父さんであるネプタルは名の売れた冒険者だったらしく、何か凄い成果を挙げた時に王様から褒美としてイルシアを嫁に貰ったのだとか。よくは知らないけどね。


「・・・母さん、何て?お似合い?結婚したら?分かった。結婚する。今までありがとう」

「うぉい!そんなこと一切言ってなかったよ!?どんな耳してるの!?」

「 ・・・そんな些細なこと気にしちゃダメ」

「全然些細じゃないよ!」

「・・・そんなことよりサインして?」

「え、急に何?えーっと・・・ってこれ結婚届け!?何でこんなもの持ってるの!?サインしないよ!?」

「・・・ケチ」

「ケチとかそういう問題じゃないよね!?そもそも僕達まだ結婚できる年齢じゃないし!」

「・・・愛さえあれば何でもできる」

「流石に無理じゃないかなぁ!?」

「おい、そろそろ飯だぞ。席につけー」

「「はーい」」


ネプタルの言葉に僕とルルは返事をして、席に座る。8人席の一番端にマルタス、その隣に僕、ルルと続き、ルルの向かいにイルシア、イルシアの隣、マルタスの反対側の端にネプタルが座る。僕とマルタスの前が空いている、バランスの悪い席順だが、これで合っているのだ。僕とマルタスの前は、母さんと父さんの席・・・もう埋まることのない、永遠の空席だ。父さんと母さんは3年前の戦争で亡くなった。


両親を亡くした日、僕は気が付いた。この世界はゲームじゃない。両親はかなり強かったらしいけど、それでも死んだ。つまり、人は簡単に死んでしまうのだ。むしろ、魔物なんかがいる世界だ。前の世界よりも死にやすいだろう。今までみたいに楽しみながら鍛練をして生きていける程甘くはない。だから僕は本格的に鍛えることにした。


「タルマ、考え直さないか?」

ネプタルが僕に訊ねてくる。

「ううん、もう決めたから」

僕の決心は固い。ルルではないけれど、誰に何と言われようとも、僕は僕の意見を曲げないのだ。


「・・・そうか」

僕の決意が伝わったのか、ネプタルはそれ以上は何も言わなかった。

他の皆も何も言わない。皆もこのことは知っている。ルルも。今日でお別れだから、今日は何時もより結婚の件がしつこかったのかもしれない。僕としては、だからこそ絶対に譲ることはなかったのだが。


皆としばらく会えなくなると思うと少し寂しい。でも僕は決めたのだ。もっと本格的に鍛練・・・いや、修行しなければ。そしてついにこの時がきた。僕は明日から修行に出る。6歳まで残る、それが僕が修行に出ることを許す、交換条件だったのだ。


「時々帰ってくるのかしら?」

イルシアが聞いてくる。

「いや、修行が終わるまでは帰らないつもり」

「そう・・・絶対元気で帰ってきてね?あと、しんどくなったらいつでも止めて帰ってきていいから。ここは貴方の家でもあるんだから」

「・・・うん」

両親が亡くなってから、いやそれよりもっと前から、勝手にマクラーゲン家の皆のことも家族と思ってたから、向こうもそう思ってくれているとわかってとても嬉しい。でも甘えることは許されない。誰にだ。僕の決意に、だ。でも、できるだけ早く帰ってこよう。頑張らないと。


「弟がこんなに頑張るんだから、兄として僕も頑張らないとな。運動はからきしだけど、代わりに僕は勉強を頑張るよ」

「うん、兄さんならきっとマグヌス様よりも賢くなれるよ・・・そうだ、それで偉くなって死ににくい世界を作って?父さんや母さんみたいな犠牲者をできるだけ減らして?」

「・・・そんな、永遠の別れみたいなこと言うなよ・・・」

「あはは、ごめんごめん。できるだけすぐ帰ってくるから、一緒にそんな世界を作ろっか。知のマルタスに武のタルマ、みたいな?強くなるのは死にたくないからだから、できるだけ戦いたくはないけど、ね」

「うん、それいいね。待ってるからな!」

「うん!」


図らずも新しい夢ができてしまった。これは尚更修行頑張らないと。


「・・・」

「ん?どうしたの?ルル」

「・・・マルタスとタルマ、仲良い」

「え、うん。確かに仲は良いと思うけど?」

「・・・妬ける」

「え?」

「・・・夫婦みたい」

「いやいやいやいや、ツッコミどころありすぎるんですけど!?」


性別が同じこととか兄弟だということとかどこをどうみたらそうなるのかとかルルの嫉妬深さはどれくらいなのかとか!


「・・・そもそも」

「ん?」

「・・・私はまだ納得してない」


そう言ってルルは頬を膨らませる。私怒ってますよアピールだが、無表情で全く怖くないし、どこかコミカルで面白いし、美少女だから可愛い。


「えっ、ああ・・・えっと、その、行かせて?」

「・・・いや」

「お願いっ」

「・・・絶対に嫌っ・・・って言いたい けど、いい」

「へ?」

「・・・私はいい女」

「・・・急に何言い出すんだとか本当にそうなんだろうかとか色々言いたいことはあるけど、取り敢えずそれで?」

「・・・・・・夫のわがままはある程度は許容する」

「・・・うん。僕はルルの夫じゃないけどありがと」


ルルは相変わらずだったけど、やっぱりいい子だよね。モテるのもよくわかる。


「・・・その代わり条件」

「うん?」

「・・・早く帰ってきて」

「・・・うん」

「・・・そして・・・」


そこでルルは真剣な表情でじっと僕を見つめ、


「・・・帰ってきたら結婚して?」

「飛びすぎだよ!せめて付き合って?じゃない!?まだ付き合ってすらないんだよ!?」

「・・・私達はもうそんな仲じゃない」

「いや確かに仲は良いけどさぁ!僕にとってルルは妹みたいな感じだしさ!」

「・・・じゃあ、帰ってきたら、ちゃんと私のこと、一人の女の子として見て?」

「そうそうそれだよ、その言葉を待ってたんだよ・・・」


やっと普通の女の子のようなことを言ってくれて、僕はほっとため息をつく。


「・・・待ってたってことは、タルマは私を女の子として見たかった・・・?脈アリ・・・?」

「え、あ、いや!そうじゃなくて!突飛なこと言われてもふざけるなで終わりだからちゃんとして欲しかったというか!」

「・・・やっぱり脈アリ」

「違う!」


確かにルルは可愛いし、これが成長したらと思うと・・・いや、違うから!


「・・・待ってる。いつまでも」

「・・・ありがと」


こうして僕は家族との暫しの別れを惜しむのだった。

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