第四話 鍛練の成果
ごめんなさい。思ったよりも前振り的なやつが長くなってしまいました・・・新キャラ登場は次回です・・・
年内最後の更新です。年末年始だからといって休まず、おまけ等いれずに更新していきます、というかいってます。修行パートをさっさと終わらせたいので・・・修行パートが終わったら現実のイベントにあわせておまけも書いていこうかな、とは考えてます。ですがまあ、今は本編を。
というわけで皆様よいお年を!来年もよろしくお願いいたします。
あと予定より15分くらい遅刻してごめんなさい。
「一万!」
肘を曲げる。顎を地面に一瞬だけつけて、肘を伸ばす。
「はぁ・・・」
息を吐き、僕は地面に倒れこむ。腕立て伏せ一万回がやっと終わった。これで早朝の鍛練は終了だ。いつもならこの後、朝御飯を食べてから、今度は朝の鍛練をするところだけど、今日は用事があるから朝、昼、夜の鍛練はできない。
だから早朝の鍛練をかなりきつくしてみたけど、あれはヤバかった。もう死にそうだ。でも、死にそうとはいえできたってことは素晴らしい鍛練だったということだ。できなさそうでギリギリできる。そういう鍛練が一番効率がいいのである。
そんな素晴らしい鍛練ができたこと、やっと地獄の鍛練が終わったこと、厳しい鍛練をクリアできた爽快感や達成感で僕の心は喜びを告げてくる。でも、その喜びを噛み締める余裕は僕にはない。
自傷鍛練(自分を傷つけ、その傷に対して何もせずに放っておいたり、「自己再生」を使ったりして、HPや「自己再生」、SPを鍛える鍛練のこと)で作った傷が痛むのだ。「苦痛無効」があるとはいえ、痛みは感じる。だから痛みに慣れ、傷や痛みを恐れず、怯まないようにする鍛練として、自傷鍛練でつけた傷を残したまま、他の鍛練をしていたのだ。ただ、ぶっちゃけ痛みは何の問題はない。もう慣れた。問題なのは
「はぁはぁ・・・き、きもちいい・・・」
「ドM」の快感だ。
***
あの、初めて自分のステータスを見た日から早くも5年が経った。ちなみに、今のステータスはこんな感じ。
タルマ=カルタ 6歳 人族
Lv 1
HP 61159/61214
MP 0/0
SP 147622/147622
PA 1245
PD 1531
MA 0
MD 1
QU 523
LU 1
[スキル]
「苦痛無効」「自己再生」「魔法無効」「気闘法Lv6」「苦痛耐性Lv4」「快楽耐性Lv1」「筋力増量」
[称号]
「転生者」「不敬者」「ドM」「脳筋」
気闘法Lv4『出』:体内の「気」を体外に出すことができる。
気闘法Lv5『吸』:体外の「気」を吸い込むことができる。
気闘法Lv6『固』:「気」を硬くすることができる。
苦痛耐性:痛みや苦しみを感じにくくなる。レベルが高いほど感じにくい。苦痛による思考や行動の制限が減る。
快楽耐性:快感を感じにくくなる。レベルが高いほど感じにくい。快楽による思考や行動の制限が減る。
筋力増量:個々の筋肉に対する筋力は上がるが、筋肉がつきにくくなる。総筋力量は不変。
脳筋:ひたすら己の身体を鍛え続けた者に与えられる称号。思考力が下がり、物事をなんでも力で解決しようという思考に繋がりやすくなるが、PAが二倍になる。
自傷鍛練のおかげで「苦痛耐性」のスキルを手に入れることができた。レベルも4になっているし順調だ。「苦痛耐性」というのは文字通り、苦痛に耐えられるスキルである。痛みに慣れたとはいっても、やはり痛いというのは辛いのだ。だからこのスキルは本当に有難い。多分、これのレベルをカンストさせると「苦痛無効」が手に入るんじゃないかなー、とか「苦痛無効」の一段落前のスキルなんじゃないかなーとは思うけど、だからといって「苦痛耐性」がいらないわけじゃない。これも大事なスキルだ。
問題はこいつ、「快楽耐性」。自傷鍛練のおかげで手に入れることはできたけど、全然レベルが上がらない。これもその名の通り、快楽に溺れずに耐えることができるようになるスキルだ。快感も感じにくくなる。
「ドM」をなんとかしたい僕としては、この「快楽耐性」をなんとしてでも上げたいところなんだけど、元々レベルが上がりにくいのに加えて、「苦痛耐性」のレベルが上がるにつれて快楽も感じにくくなるから、更にレベルが上がりづらい。本当に困ったものだ。手のかかる子どもほど可愛く感じるとよく言うけど、このスキルにだけは愛着が湧く気がしない。
逆に「気闘法」は愛着が湧きそうなスキルナンバーワンだ。レベル上げは地道で大変なのに加えて、頑張ってレベル6まであげたけどまだまだ使い物にならない(もしかしたら使い方が分かってないだけかもしれないけど)が、こいつは期待できる。何しろ「気」だ。使い物にならないわけがない。「気闘法」はきっと大器晩成型なのだ。もしかしたら、そろそろエンジンがかかり始める、スロースターターなのかもしれない。
でも「ドM」、てめーは違う。そもそもお前にはレベルがないじゃないか。痛みをそこそこの快感に変えるなら、痛みを怯まずに戦うことができるから便利かもしれないが、「ドM」の場合、快楽で動けなくなるから全く無意味なのだ。むしろ、思考までできなくなる分、痛みに耐えた方がマシだ。
そして参ったことに、役立たず候補二人目が現れてしまった。そう「脳筋」だ。称号の効果は見たまんまで、頭が悪くなる代わりに力が強くなる、というものらしい。
僕は今まで鍛えてきたけど、それは強くなる為じゃない。いや、強くなるっていう理由がないわけじゃないけど、それだけならこんなに必死で鍛えてはこなかった。必死に鍛えてきたのは、できるだけ長く生きたいからだ。
別に強くなってブイブイ言わせたいわけではないのだ。前世では確かにそうしたいと思ってたけど、今は違う。身体が弱いが為にやりたいことを何一つできず、一度死んだ身としてはそんなことよりも、まず生きることが大事だとわかったんだ。だから、基本的には「自己再生」で大丈夫だと思うけど、それでもスキルが使えなかったり、スキルを使う前に死んじゃったら意味がない。だからそうならないように強くなりたいのだ。
つまり、僕が必要なのは身体の頑丈さであって、力の強さじゃない。しかも、生きていくには知略が大事なのに、それが奪われるとなればもう、役立たず、いや、それどころか足を引っ張るいらない子だろう。
あと触れてないのは「筋力増量」。これ、力は今まで通りつくけど、見た目は変わらないよーゴリマッチョになることはないよーってことでしょ?なんでこんなスキルが存在するのか、なんでそれを僕が手に入れたのかはわからないけど、僕は見た目なんてどうでもいい・・・ってことはないけど、別にマッチョでも良かったし、むしろマッチョになってみたかった気がしないでもないから別にどうでもいいかな?
***
しばらくして、身をビクンビクンさせて何もできないようになってしまうほどの強い快感が、なんとか耐えて移動はできるくらいにまで落ち着いたので、僕は鍛練でかいた汗を水で流す為に井戸へと向かう。
これも鍛練の一つだ。快感が抜けきってない状態で移動することで快楽に耐える為の鍛練になっていることもそうなのだが、それだけでなく、井戸の水で身体の汗を洗い流すことも鍛練なのだ。遠足が家に帰るまでが遠足であるように、鍛練は、汗をしっかりと洗い流すまでが鍛練なのだ。汗を放っておくと、風邪をひいてしまう。それでは明日の鍛練ができなくなってしまう。鍛練は、毎日続けてこそ鍛練なのだ。次の日の鍛練に支障を来すような鍛練は、鍛練ではないのだ。
というわけで、井戸にまでたどり着いた僕は、水を汲み上げて頭からかぶる。
バッシャー
僕の身体がびしょびしょになる。着ていた鍛練着が身体に張り付いてくるが、その気持ち悪さよりも、水をかぶった爽快感が勝り、スッキリした気分になった。これが堪らないのだ。これこそ鍛練の醍醐味だと思う。これをやるまでは、まだ鍛練が続いている気がして、気が抜けないのだ。
「ふぅ・・・」
やっと一息つくことができた僕は、鍛練を始める前から、この時の為に用意していたタオルを手に取り、軽く頭と身体を拭く。軽くで充分だ。どうせすぐに乾く。
そして全身を拭き終わったら、タオルを首にかける。確か、本来このスタイルは、髪の長い女の子がまだ濡れている髪から服を守る為にやるスタイルで、僕は男の子だし髪も短いけれど、このスタイルが一番楽だからいつもこれだ。
そのまま家へと帰っていると(いつも家の裏にある森で鍛練している)家の前に小さな女の子が立っているのに気付いた。
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