第6話
高校2年も夏が過ぎれば受験勉強や就職活動に精を出さざるを得ない。
かくいう私もその一人だ。
進学か就職かで迷ってはいたが、服飾系のデザインがしたいのは本当なので今日は千春さんの友人が経営していると言うランジェリーショップに連れてきてもらっている。
20代に売り込むことを目的とした下着類は、どれもこれも大人っぽい。
一番清楚な造りの下着でも、アクセントに花の刺繍が入っていたりする。
「この子が千春の生徒ね、服飾系のデザインがしたいって事だけど、うちなんか参考になるの? 下着メインだよ? うち」
「それはあの子が感じることだから何とも、それに女子高生が大人っぽい下着ばっか置いてある店に入るのって勇気いるでしょ? 私と一緒なら、私の買い物の付き添いだと思われるだろうし」
「あぁ、それは確かに、って一人の生徒を依怙贔屓しすぎじゃない?」
「良いじゃない、恋人なんだもの」
「うわぁ、あんた女子高生に手だしてんの? ちょっとは歳考えなさいよ」
「うるさいわね、恵梨香だってバイトの子や客に手出してるんでしょうが」
「手を出してるんじゃなくて、手を出しても良いようにしてるのよ」
どっちも違わないでしょ、と言う千春さんに、傍で聞き耳を立てていた私は同意する。
「どう? 千春の恋人ちゃん、参考になるかな?」
「うぇっ、あ、えっと……はい、ちょっと刺激が強すぎるけど……」
「ま、そーよね……デザインの勉強するなら専門学校に行きながらファッション店でアルバイトとかするのが無難だけど、食べていけるかは分からないよ?」
「千春さんにも言われました、働くにしても休みがしっかりしててお給料高い所選べって」
「あぁ、千春は勉強でも何でもできるけど、自分でしたいことが無いって言ってたからね、唯一人に物を教えるのは得意だったから、それを活かして教師になったみたいだけど」
こんなきれかわ系の子を恋人にしてるとはねぇ、と言葉を締めくくる。
「もし服飾の専門行くなら○○デザインって所行きな、他より学費は高いけど、その分充実した設備があるし、講師の先生も入れ替わってなければ現役でやってる人が殆どよ」
「あ、はい、ありがとうございます」
「ありがとう恵梨香、瑞希、もう帰るわよ」
「うん、ありがとう千春さん」
「良いのよこれぐらい、じゃあまたね、恵梨香」
「あいよ、またね、瑞希ちゃんも、またおいで」
「あー、はは、はい」
「一人で来ちゃだめよ、彼氏彼女が居たってかまわず手をだすケダモノだから」
誰がケダモノだ、と憤慨する恵梨香さんを背に、私は店を出た。
送ってくれる千春さんにお礼を言いつつ、一度真剣に進路の事を親と相談しようと、硬く決意するのであった。