第5話
あの勘違い騒動から一週間。
またやってきた土曜日、私は千春さんの家にいた。
玄関に入ると見慣れない靴があり、部屋の中には夏月さんが居た。
「おー、千春の従妹ちゃん、おひさー」
「あ、はい……お久しぶりです」
「ほら夏月、そっち移って、瑞希、ここ座りなさい」
ぽんぽんと千春さんの隣を指され、とりあえず座る。
「あの、千春さん」
「ん? 何?」
「夏月さんが来るなら私来ない方がよかっあいた!」
良かったんじゃないのか、と言おうとしたら頭を叩かれた。
夏月さんは何かにやにやしてるし、一体何なんだ。
「むしろ逆よ、瑞希が来ないと話しが進まないの」
「どういう事ですか?」
「夏月、私とこの子、どう見える?」
千春さん、何言ってるんですかと言おうとした時には、夏月さんが先に口を開いていた。
「そりゃーもう、恋する二人、かなぁ? お互い親密な関係みたいだし? 結構付き合い長いんじゃないの?」
「そうね、付き合って3ヶ月って所かしら」
「ちょっ、千春さん?!」
「まぁまぁ、そう慌てないでよ瑞希ちゃん、私は高校の時から千春が異性に興味無いの知ってたし、同性の子と付き合ってたのも知ってるよ」
それじゃあ、千春さんが話してないだけで知っていた、と言うことになる。
「私も言われた時には驚いたんだけど、夏月はそういうのに偏見がないってことね、むしろ好物らしいわ」
「はい?」
「私、GL作品が大好きでさぁ、現実には男にしか恋愛感情湧かないんだけど、なんていうの? こう、美人系と可愛い系とか、美人同士とか、もう萌える!って感じなのよ」
あぁ、所謂腐った女子の方ですか。
そう結論付けたところで、私も幾分か気が楽になった。
「でも、現実にこうして女性同士でお付き合いしてるのが目の前に居る訳なんですけど、気持ち悪いとか思わないんですか?」
「別に? そりゃあ遊びに来てやらかしてる最中に出くわしたらそう思うかもしれないけど、普通に見てる分には仲の良すぎる先生と従妹にしか見えないよ」
「あぁ、別に従妹じゃないわよ、本当にウチの生徒」
「えっ?! マジ!?」
「超マジ」
「あ、あの、千春さん?」
「何?」
そこまで言って大丈夫なんですか、とは言葉が続かなかった。
カタカタと震える夏月さんは、次の瞬間には立ち上がっていた。
「まさか現実に女教師x女子高生の恋愛が見れるとは、しかもガチの、実は昔から知り合いとか言う伏線すら無しとか、最高すぎる!」
この人、筋金入りだ。
早くなんとかしないと、お巡りさん! 助けてください!。
「ね、平気でしょ?」
「いえ、今度は違う心配ができました」
まぁ、そうね、と同意する千春さんも、まさかここまでとは思っていなかったようだ。
その後も結局、付き合うきっかけとかお互いのどこを好きかとか根掘り葉掘り聞かれて、疲れたのは言うまでもない。