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番外編②



「初めまして、桜井瑞希の母、京子です」

「父の雄二です」


 場所は千春さんの実家。

 両家揃っての初の顔合わせの場所に、私は両親を伴って来ていた。


「小牧紀美子です」

「英二です」


 テーブルを挟んで対面する私と千春さんの両親の下座に私と千春さんは二人掛けソファに座っている。

 上座には千春さんに良くにた容姿をしている女性、恐らく妹さんが座っていた。


 話しの内容はお互いに謝罪から入り、その後娘たちをどう見ていくかになっていった。

 当事者の私と千春さんは時折相槌を打ちながら返事をする程度だ。


「娘が同性愛者だと気付いた時、いつかこんな日が来ると思っていました」

「それは私達もです、お互いに気苦労が絶えませんね」


 責められているのか、少しだけ気分が落ち込み始めた。

 そっと肩を抱きしめられて顔を上げれば、千春さんが大丈夫と肩をさすった。


「あらあら、千春ったら」

「あまり見せつけないで頂戴、現実を受け入れがたいわ」

「京子、もう二人の交際を認めたんだから、今更無かったことになんてできないよ」


 そう、結論から言ってしまうと、私と千春さんの交際は認められた。

 今日千春さんの家に来ているのは、お互いの顔合わせが目的だったからだ。

 だから、話しの内容も私と千春さんがどんな想いで一緒にいるのか、と言うより、交際を認めた上で親である自分たちがどうサポートするか、に観点が置かれているのだ。


 そして、そんな話しだからこそ、私と千春さんは若干蚊帳の外にいる訳であり、更には千春さんの妹、楓さんに至ってはここにいる必要の無い人だ。


「あーっ、やっぱ私いても意味ないから部屋にいるね」


 と、立ち上がった楓さんに、千春さんのご両親は小言を言った。


「だって、お姉ちゃんが女の子が好きなのは子供の頃から知ってるし、まぁ今回は相手が相手だけに大事になったけど、もし社会人だったらここまで介入することもなかったでしょ? じゃ、そういうことで」


 言うだけ言ってリビングから出ていく楓さんの後ろ姿を見送った後、私はポツリと呟いた。


「随分さっぱりした人だね」

「楓は幼い頃からあまり物事に執着しないタイプだったから」

「ふぅん」

「はぁ、それにしても娘の晴れ着姿が見られないのは残念だなぁ」


 とは、お父さんの言葉だ。

 それに対しては同意するかのように、深い溜息をついたのが英二さん。

 それを言われると、流石に私も千春さんも頭を下げるしかない。


「それに関してなんですけど」


 と、ここでお母さんが一つの案を出してきた。


「私の友人が経営する結婚式場で、内々に式だけ上げられるように頼んでみるわ」

「お母さんっ?!」

「あらぁ、良いわね」

「……母さんまで」


 それからは、どんな式にするかを私と千春さん、そしてお父さんと英二さんを差し置いて話し始めた二人に着いていけず、お父さんと英二さんはそっと抜け出しビールを片手に談笑を始め、私と千春さんはその二人にお摘みをつくる事になった。


 キッチンに立つ私と千春さんの姿を見て、お父さんが溜息を零した。


「こうして見ると、違和感ないなぁ」

「そうですね、思えば、私はいつも妻に任せっきりです」

「僕もですよ」

「何言ってるんだか、お父さん年がら年中お母さんといちゃいちゃしてるくせに」

「そりゃあ当然だよ、京子を愛してるんだからね」

「おやおや、惚気話ならうちの紀美子の事も話さないとね」


 しみじみと会話を始めたかと思えば、互いの妻の良い所を話しはじめ、離れた所で結婚式について話し続けていたお母さんと紀美子さんも、互いの旦那の良い所を話していた。


「「似た者夫婦」」


 思わず声を揃えてしまったのは、仕方がないと思う。

 それから、お摘みが夕飯に変わり、私と千春さんは戦線離脱して百戦錬磨のお母さん二人がキッチンに立っていた。


 とても楽しそうに料理をする姿に、自然と笑みが浮かぶ。


「嬉しそうね、瑞希」

「そういう千春さんも、笑ってるよ」


 いつもの凛とした表情も素敵だけど、笑った顔も素敵だ。

 こうしてみると、私はどんどん千春さんに溺れて言っている気がするけど、それは私だけじゃないと思いたい。


 いつか、目の前の両親みたいに仲睦まじい関係を築けていければと願った。

これで完結となります。

短い間でしたがありがとうございました。

次回作も百合物を考えていますので、その際はまたお付き合いくださると嬉しいです。



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