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パスポートとクレジットカードがあればなんとかなるのは異世界でも同じなのか【連載版】  作者: 陽乃優一
第1章 パスポートとクレジットカードがあればなんとかなるのは異世界でも同じなのか
3/10

第3話 宿泊先確保は最優先事項である件

異国情緒すぎて戸惑うというネタでは映画『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)が興味深いですね(突然レビューサイトと化す前書き)。ただ、日本では評判があまりよろしくないらしく…。

 街並は、さすが本物の異世界だけあって見応えがあった。

 建物の趣は中世ヨーロッパ風というお約束ではあるけど、微妙にオリエント風味も入っている。

 なにより、遺産として整備・維持されているわけではない。観光とは無縁の、生きた街だ。


「地球の古都はなんだかんだいって現代化されているよな。車のために舗装されていたり」

「馬車もあまりないみたいだねー。魔法を使った移動手段があるとか?」

「いやあ、転移や飛行は厳しいだろう。ほら、あの提灯だか懐中電灯みたいなの、あれが限界?」


 すっかり暗くなっているが、街灯の類は見当たらない。街角のあちこちで光が見えるだけだ。

 本物の『科学技術は発達していないが魔法はある世界』の街を実感する。

 異世界情緒は、街並や魔法だけではない。


「…!お兄ちゃん、お兄ちゃん、ネコ耳、ネコ耳!」

「おお…コスプレのプロが裸足で逃げるな、こりゃ」

「あっち、獣人、獣人!」


 人間はなぜか白人系がほとんどだったが、それ以外の種族は千差万別だ。

 普通の人間の姿に動物の耳や尻尾が付いているような者、動物が二足歩行しているような者。

 うお、あの耳、絶対エルフだ。くそう、やっぱり美男美女だな。


「ねえ、お兄ちゃん。アジア系、というか、黒目黒髪が皆無じゃない?種族関係なく」

「…もしかして、俺達目立ってる?」


 よく、初めての外国旅行で『わー、まわり外国人ばかりだー』と言ってしまう人がいる。

 悪気はないのだろうが、うん、ここでは君が外国人だよ、と。

 アレに近いものをやらかしてしまったかと、あらためて周囲を見る。


「…なんか、『ほほえまー』な表情で見られているね」

「おのぼりさん扱いというやつか…。なんにせよ、悪印象はなさそうで良かった」

「言葉が全く通じてなくて、かえって良かったのかなあ」


 そんなこんなで、もともと香港観光が目的だった俺達は、既にお腹いっぱいの気分である。



「でも、魔法便利そうだよね。あたしたちにも使えるかなあ」

「それより宿を探そう。また街を出て野宿、は嫌だろ?」

「そ、そだね。あの草原じゃ、どこで寝ても獣の餌食になりそう…」


 しかし、看板とかの文字が読めない。発音できても、意味はわからないだろうけど。

 しかたがないから、道行く人に尋ねる…こともできない。宿がどうとかのジェスチャーって?

 あう、いきなり詰んだ。市場とかは外からもよくわかるんだけど。


「お兄ちゃん、あの看板、もしかして」


 デフォルメされたベッドが描かれている看板が見つかる。建物も、いかにも宿屋風だ。

 そう思ってあらためてまわりを見ると、スカートのような絵、瓶のような絵の看板が。

 識字率がそんなに高くなくて絵でも表現されているのかな。いずれにしても、助かった。


「お風呂、あるといいなあ」

「まー、ないだろうなあ。ベッドで眠れるだけでもラッキーと思わないと」

「むー」


 扉を開けると、バーカウンター付きレストランのようにも見えて、ちょっとあせった。

 が、カウンターの横には階段があり、荷物を持った人達が昇り降りしている。

 カウンターにも受付のようなお姉さんが待機している。宿屋で間違いなさそうだ。


「△×◯!□□×△◯?××?」

「『いらっしゃいませ!お泊りですか?それとも食事のみですか?』だよきっと!」

「なんでわかるんだよ。いやまあ、俺もそんな気はしたけど」


 レストランを兼ねている宿屋というのは地球でも珍しくない。異世界モノの定番でもあるしな。

 異国(?)の会話が聴こえたのか、受付のお姉さんはメニューらしき木板を見せてきた。

 お皿やベッドの絵入りでわかりやすい…が、ベッド+皿の絵を指差すと、また何か言われた。


「料金前払い?それとも、本人確認?」

「街の門であれだけされたから、いまさら本人確認はないような気がするんだよなあ」

「必殺技・どっちも出す、をやってみよー」


 今度も妹に乗せられ、パスポートとクレジットカードの両方を渡す。

 こっちは要らない、と、パスポートはすぐ戻された。ほれ見ろー。

 でも、受付の人はカードを見ながら板のようなものに何か書き込んでいる。もしかして、名前?


「地球の文字わかるなんてすごいよねー。ああ、うん、神様変換のおかげだろうけど」

「文字がわかるというか、カード自体がこっちの世界の何かとして扱われているような気がする」

「これだけのことができるのに、あれから全く現れないし声も聞こえない…」


 それはアレだ、数日スマホ修理している間の代替機の方がはるかに高機能だったみたいな。

 などと神々をディスったりフォローしたりしていると、クレジットカードも戻ってきた。

 その後、部屋に案内しますよという手振りに従い、お姉さんの後について行く。…あれ?

ちなみに、『外国人ばかりだー』というのは、同行者がよくやらかします。ここは日本国フランス県パリ市じゃないっつーの。

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