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コレクション  作者: 天海 晴人
2/11

踊り場

これは中学生の時。

件の幼なじみUの話しである。


夏休みも終わり、普段の日常へと戻りつつあった頃。

学校行事、いわゆる二泊の林間学校へ行ったときの事だ。

泊まる事になるのはそういう行事ではお馴染みのごく普通の宿泊施設だった。

ただ廊下が古いせいだろうか、薄暗く感じた。


当時、彼はすでに周りの同級生にも「見える人」と知れ渡っていた。同級生たちは口々に

「なんかおるか?」「やばいんちゃう?」

と怖いというよりは期待の眼差しで彼を質問攻めにしていた。

Uもそういう状況には馴れている。

言葉巧みに同級生をかわしていた。

──廊下を曲がり、上階への階段が見えた時である。

肩を竦めると同時に彼の歩みが一瞬止まった。

長年の付き合いのおかげで、この仕草の意味が僕にはすぐわかった。

「えっ…もしかしておるんおるん?」

それを見逃さなかった同級生が囃し立てる。

「なんもおらん。」

Uは断言するような口調で言い放った。


林間学校は穏便には終わらなかった。

たった二泊の期間である。

「見た」という人間が続出したのである。

僕の耳に入った話だけでも4件。

きっともっと「目撃者」はいるのだと思う。

林間学校から帰ってきてからもその話題で持ちきりで軽くパニック状態だった。

この騒動を静めるために、教師が出した結論は

「見たいと思う人間が多かった為の集団心理」というものだった。果たしてそうだったのだろうか。


──場所は例の階段の踊り場。

目撃者たちの意見は一致していた。

「女を見た」「子供だった」「男がいた…」

そこが食い違っていた。

そこには結局何がいたのかわからなかった。

もうひとつ合致する点がある。

「(男が)(女が)(子供が)…天井を見上げていた」


僕はUに結局何が見えたのかを問い質した。

「あー、天井のは見ないほうがいい奴だったよ」


Uはそれっきりその話をしたがらない。


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