表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

桜と海と翼〜翼と水と桜色〜

…疲れていたから、深く眠っていたからだろうか?

その夜、僕は夢を見た。

僕は「8人」の家族と一緒にいた。

みんなで笑いあって、楽しそうだった。

そこに現れたのは「黒い集団」。

そのうちの1人がこう言った。

「『 色髪の子だ!高く売れるぞ!』」と。

僕がこんな髪色をしていなければ、

こんなことには、ならなかったのかな?


chapter 2 桜と海と翼〜翼と水と桜色〜


「ん…。」

目が覚めると、目の前には光り輝く池。

あぁ、そうだ。僕は…。

昨日のことを思い出す。

僕には、「仲間」ができたのだと。

横を見ると、自分の片羽を僕の身体を包むようにしてかぶせたまま眠る、フォカさんの姿があった。

ずっと、温めたくれていたのであろう。

お礼も兼ねて、そっと頭をなでる。

…ふと、気づく。

「…カロルさんは?」


おそらくもう片羽は、カロルさんにかかっていたのであろう。

しかし、そのカロルさんが見当たらない。

…どこへ行ってしまったのだろうか?

あの子は病み上がりだから、そんなに遠くには行ってないはず。

…何かあったのではないか?

不安になってくる。

「あっ、起きてたんですか?」

声をかけられ、その声の主の方を向く。

「!?…カロルさん!」

両手にたくさんの果物を抱えて、微笑むカロルさんがいた。

「カロルさん!身体は大丈夫なんですか!?」

「大丈夫ですよ。暑さに弱いもので…。日陰なら大丈夫ですよ。あっ、これ、食べますか?お腹空いてませんか?この果物、食べられるヤツなので大丈夫ですよ。」

そう言って果物を置く。

「…おい、カロル。」

あっ、やばい。という顔をするカロルさん。

目線の先にいたのは、

今起きたばかりのフォカさん。

ものすごく怒っているのが目に見てわかる。

「…ひとりで行動するなって、言ってただろう?」

じりじりとカロルさんに近づくフォカさん。

「…でも、ラティさんもフォカも寝てましたし…。」

「そういう問題じゃねぇ!」

フォカさんがカロルさんの両肩をつかむ。

(どうやら人の手にもできるらしい。)

相当力を込めているのか、「痛っ!」っと顔を歪めるカロルさん。

「…離れた先でなにかあったらどうするつもりだったんだ!昨日の傷はまだ治ってねぇーし、まだ『あいつら』がうろついてるかもしれねぇーし…。」

「…フォカ…。」

今度はカロルさんがフォカさんの両肩をつかむ。

身長差があるせいか、ちょっと背伸びになっている。

それを察したのか、フォカさんがしゃがんで、目線を合わせた。

フォカさんの翡翠色の目と、カロルさんの藍色の目が見つめ合う。

「…自分は…フォカを置いて死んだりしませんよ?」

「…カロル…。」

よく見ると、フォカさんの目は涙ぐんでいた。

ふと、昨日の話を思い出した。


「俺も記憶がないんだ。覚えているのは、『仲間』がいたことと…カロルがその『仲間』ってことだけだ。」


やっと見つけた、大切な『仲間』。

…彼らも僕と会う前に何かあったのだろう。

記憶をなくして、わかっているのは互いが『仲間』であることだけ。

…信じられるのも、互いだけ。

あの守り方を見たら、そう思える。

だからこそ…失うのが…怖いのか…。

…。


「…カロルさん?」

「…ラティさん?」

僕は優しく語りかけた。

「フォカさんはカロルさんのことが心配だったんですよ?昨日、あんな高熱をだして、ぶり返してどこかで倒れたら、どうするつもりだったんですか!」

「…。」

カロルさんが僕を見る。

カロルさんの藍色の目には、僕の顔が写っている。

…なんて顔をしてるんだ、僕は…。

「…ラティさん…フォカ…ごめんなさい。」

謝るカロルさん。

「…でも!昨日色々と迷惑かけたので、なにかしなきゃと思って…。」

「それでぶっ倒れたら元も子もねぇーだろ!」

…フォカさんの声が森に響く。

「…ごめん。フォカ。」

「…とにかく、無事でよかった。」

カロルの頭をなでるフォカさん。

「ちょっ、子供扱いしないでください!」

「いいじゃねぇか?俺の方が年上だし。」

「関係あります?」

「…撫でやすい。」

「…それ、遠まわしに自分が小さいって言ってますよね?」

…ほんとに兄弟みたいだ。

「ふふwww」

なんだか微笑ましい。

「あっ、なんで笑うんだよ!ラティ!」

「いえ、仲いいなと思いまして…。」

「そうか…。」

…兄弟って、こういうものなのかな?

「とりあえず、食べましょうか?」

「そうですねwww」

「いつまで笑ってるんですか!」

「っ笑うのをやめろ!」

少し、羨ましかった。


「…さてと、とりあえず、森を抜けるか!」

お腹も膨れ、僕らは森を出ることにした。

「…歩けるか?カロル。」

心配そうにカロルさんの方を見るフォカさん。

「大丈夫ですよ。行きましょう?」

歩き始めようとした、その時だった。

「!?避けろ!二人共!」

「えっ!?うわっ!?」

「なっ、何あれ!」

何かが飛んできたのだ。

「っ!?このやろ!」

フォカさんは自身の両腕を翼に変え、羽ばたかせた。

「『大地の風』!」

翼から強風が起き、その風で威力の弱まった「それ」は地面におちた。

「…矢?」

「それ」は、先が鋭く尖った、銀の矢。

「…見つけたぞ!」

「!?お前らは!」

草むらから、人が現れる。

「(!?『黒い集団』!しかも5人!)」

あの夢に出てきた人たちとよく似た格好をしている黒いフードをかぶった人たちが5人。

今、僕らの目の前にいる。

「…あれ?一人増えてね?」

「まぁ、いいだろう。全員生け捕りだ!」

そのうちの1人が襲いかかってくる。

…捕まるわけには行かない。

…記憶の片隅で何かがそう告げる。

でも、どうすれば…。

「…カロル。いけるか?」

「…側に池ありましたよね?」

…池?それがどうかしたの?

「…できるか?」

「…やらなきゃ捕まりますよ?」

笑いながら言うカロルさん。

こころなしか、楽しそうに見えたのは気のせいだろうか?

そう思っていると、なにかの気を感じた。

よく見ると、池の水が、カロルさんの右腕に絡みつくように集まっていた。

カロルさんは、その手を上に挙げ、水は天に登る。

「…『水龍!』」

その水は龍となり、その黒フードの人を貫いた。

「ぐはぁ!」

「!?くそっ!」

それを見た黒フードの人…今度は3人一斉に襲いかかってくる!

「…しゃがめ、カロル。」

「っ。あとは、任せましたよ?」

「…おうよ。」

カロルさんの後ろからフォカさんが羽ばたく。

「『かまいたち』!」

そして、刃物のような鋭い風を翼から放つ。

「ぎゃあァァ!」

瞬く間に切り裂かれていく黒フードの人たち。

戦い慣れしているのだろう。

見事なコンビネーションだ!


「…さてと、ひとりになっちまったがどうする?」

「…。」

残ったのは1人だけ。

それに対し、こっちは3人。

数的にもこっちが圧倒的に有利だ。

「…ふっ、ハハハハハ!」

「!?」

その黒フードの人が笑い始めた。

「!何かおかしい!」

フォカさんが翼を振り上げた時だった。

「うわぁぁぁぁ!」

「カロル!?」

カロルさんが、電気に包まれた。

「あっ!フォカさん!カロルさんの足元!」

「!『電気蛇』か!」

よく見ると、カロルさんの足元には黄金色に輝く蛇がいる。

電気を帯びている、カロルさんはこの蛇にやられたのだ。

「そのとおり!そのフードの子は知らないけど、君とこの子は『風』と『水』。どっちも『雷』に弱いからね。」

「!?気づいてたのか!」

属性相性というやつだろうか?

そう考えると、かなり不利な状況だ!

「さて、どうする?おとなしく捕まってくれる?捕まってくれないなら…。」

「うわぁぁぁぁ。」

「!?」

カロルさんの足に「電気蛇」が巻き付く。

そして、電撃を放っているのだ。

このままじゃ、カロルさんが…。

「どうにもできないね。助けに行っても、同じ目に合うだけだもんね。」

あの黒フードの人のいうことが本当なら、フォカさんの属性である「風」も、「雷」に弱い。

むやみに近づけないんだ。

「さぁて、どうする?」


…なんで、僕は何も出来ないの?

ただ、見ていることしか出来ないの?


『…助けたい?』

「えっ!?」

どこからか、声が聞こえた。

「誰?」

『助けたいなら、あなたに『秘められた力』を使いなさい。』

秘められた…力?

『…左手。』

左手…あっ。

僕は、自分の左手の甲を見た。

僕の左手の甲には、石が埋め込まれている。

それは、産まれた時からなのか、誰かにつけられたのかもわからない。

星空のように光輝き、空のように青く澄んだ水晶が。

考えるよりも、先に身体が動いた。

僕は、走り出した。

身体が、この石の使い方を知っているようだった。

「!?何をするつもり!?」

「!?ラティ!?」

僕の左手は、そばにあった木に触れる。

「…『マテリアル:リーフ』。」

その呪文も、頭が覚えていた。

使ったことが、あるのだろう。

すると、その木から淡い緑色の光が出て、石に吸収されていく。

「『グラスロープ』!」

「!!なんだと!?」

黒フードの人に蔦が巻き付く。

「!?その左手の石は!『星の加護』か!」

…黒フードの人が叫んだ声は聞こえなかった。

それよりも、カロルさんを助ける方法を考えていた。

この呪文は、蔦を操れる。

…ならば!

「もう一回!『グラスロープ』!!」

今度は、カロルさんに巻きついた蛇を薙ぎ払う。

「電気蛇」は悲鳴を上げ、カロルさんから離れた。

「…カロル!」

さっきまで何が起きたのかわからず、唖然としていたフォカさんがカロルさんの元に駆け寄る。

「大丈夫か!…ごめんな。俺…。」

「…大丈夫…ですよ…ちょっと…痺れますけど…。」

カロルさんはなんとか無事なようだ。

よかったと思いながら、目線を黒フードの人に向ける。

「…普通の人間が、そんな強大な力を使えるはずがない。あんたは…一体…何者なんだ?」

「…僕は自分がわからない。だから、一つ、あなたに聞きたいことがあるんです。」

夢に出てきた、黒い集団。

彼等なら…。

僕は、勇気を出して、フードをとった。

「!?」

驚くのも無理はない。

風になびいた僕の長い髪は、

「…桜色の…髪…。」

桜色をしていたからだ。

この国では通常の人の髪色(黒とか茶とか金とか)じゃない人たちは珍しく、とても大きな魔力を持っている…と誰かから聞いた記憶がある。

「お前…『色髪』だったのか。」

「…この髪色は珍しいから、会ったことがあるなら覚えているはずです。」

…息を整え、聞きたいことを、僕を知るための手がかりを聞く。

「…僕と一緒にいた『家族』は、どこにいるんですか?」

お願い、どうか少しでもいいから。

希望を、『家族』がいるって証拠を。

「…教えたら離してくれるの?」

…もしかしたら、この人が『家族』の仇になるかもしれない。でも…。

「…僕はあの2人みたいに、人を殺すのは苦手ですので。」

足元には、カロルさんとフォカさんが殺した、黒フードの人達の死体。

…血は…どうも苦手だった。

これも、僕の記憶の一部なのだろうか?

「…。」

黒フードの人が、口を開けた。

「…『アスタリア』…。この森を抜けた先の街の名前なんだけど、そこに『翡翠髪の少女』がいる。」

『翡翠髪の少女』…。


「ラティお姉ちゃん!僕、いつかこの空を自由に飛びたいんだ!」

「じゃあ、****で一緒に飛ぼう!人がいない時にね。僕らは目立っちゃうから。」

「うん!約束だよ!ラティお姉ちゃん!」


「…そっか。ありがとうございます。」

僕は指をパチンと鳴らす。

すると、黒フードの人に巻きついた蔦が解けていく。

「…本当に逃がすのかよ、ラティ。」

後ろからフォカさんの声が聞こえた。

「…カロルにこんな仕打ちしやがって…生かして帰したくねぇーんだけど。」

「フォカ、落ち着いて…。」

カロルさんがやられたのが相当頭にきたらしく、両翼を構えるフォカさん。

「…ふふwwwまたやられるのがオチだと思うんだけどなぁ…。」

「!?ふっざけんなよ!」

あー、怖い怖いと笑いながら空へ飛ぶ黒フードの人。

「僕、君のこと気に入っちゃった。今回は彼女に免じて見逃してあげるよ!じゃあね!」

「あっ!待て!」

笑顔(顔が見えないがおそらく笑ってる。)で手を振りながらそれっ!と魔法を放つ。

次の瞬間、彼は風に包まれ、風が消える頃には、彼の姿はなかった。

何だったんだ、あの子?

「…ラティ。」

あっ、忘れてた。

「…逃してくれただけいいと思ってくださいよ。」

「そうじゃねぇよ!」

フォカさんが僕を見る。

正しくは僕の髪を。

風になびく、長い桜色の髪を。

「…フードかぶってたのは、そういうことか。」

「…黙っててごめんなさい。」

時が来たら伝えるつもりだった。

「『色髪』はたくさん魔力を持ってる。だから狙われやすいって。隠した方がいいって…。」

…誰に言われたんだっけ?

「…わかってるさ。そういう珍しいヤツは狙われるからな。だからさ…。」

フォカさんが僕の顔を覗き込む。

翡翠色の目と、目が合う。

「…泣くなよ。」

「…うん、ごめんなさい。」

覚悟してフードを脱いだはずだった。

こんな髪色だから、2人に迷惑かけるのは承知の上だった。

でも、優しく声をかけてくれたから。

一緒に行っていいと、言ってくれたから。

「…これからも、一緒について行ってもいいですか?」

「…俺、一緒に来いって言ったな。」

「…?」

「…知ってたんだ。」

…えっ!?

「ほら、オレがカロル守ろうとして、ラティに攻撃しようとした時あったろ?あの時、風でフードが少し脱げて、桃色の髪、少し見えたんだ。」

あの時…。

「そん時、顔を見たから、俺はラティのこと、女だって知ってただろ?」

あっ…。


「女の子一人にしていくわけにはいかねぇしな。」


「…知っててなんで!」

「…俺の記憶が正しければ、『仲間』のリーダーも『色髪』なんだ。」

「えっ!?」

僕ら以外にも、『色髪』の人がいる!?

「…だから、リーダー…『あの人』の手がかりになるんじゃないかと思って…。」

…そうだったんだ。

僕がフォカさんとカロルさんの『仲間』の手がかりになるかもしれないんだ。

…二人の…リーダー…僕と同じ…『色髪』…。

「…僕、会ってみたいです。フォカさんとカロルさんの『仲間』に!」

リーダーだけじゃない。きっとたくさんの『仲間』がいるのだろう。

どんな人たちがいるのか気になってきた。

「僕も会ってみたいです。ラティさんの『家族』に。」

「カロルさん!?」

痺れがとれたのか、こっちに向かってくるカロルさん。

「カロル、身体はもう大丈夫なのか?」

「…親切に薬草置いていってくれました。本当に何なんですか?あの子は。」

さっきの黒フードの人か…。ほかの人とは違う感じがした。また会うことになるんだろうな。

でも、敵意はなかったような気がする。

「…うし!カロルが動けるなら行くか!」

「大丈夫ですよ。行きましょう。ラティさんの『家族』がいる、『アスタリア』へ。」

「…はい!」

たくさんの謎を残したまま、僕らは森を抜ける。

そして、向かわなきゃいけない。


僕の『家族』がいる、『アスタリア』へ!


chapter 2 end


続きました。今回は少し長めでしたね。

読みづらくてごめんなさい。

さてさて、今回はラティの秘密が出てきましたね。『桜色の髪』と『星の加護』。これが今後の物語に関わってきます。記憶も少しづつ取り戻しているようですが…。

そして、新キャラが出てきました。『黒い集団』こと黒フードの人。この人たちも今後関わってきます。果たして、彼らの目的とは?

そのうちの1人、『電気蛇』を扱う彼もまた、かなり重要な人物です。この後どのように関わってくるんでしょうか?

そして、『翡翠髪の少女』。ラティの『家族』の1人です。次回、その子に出会うために、『アスタリア』に向います。果たして何が待ち受けているのか?

これで桜と海と翼編は終了です。


次回から「失われた記憶編」が始まります。


ラティ、カロル、フォカ。

3人の失われた記憶。その記憶はあまりにも残酷で悲しい、『家族』と『仲間』の記憶。

でも、思い出さなきゃいけない。

大切な『彼ら』を取り戻すために。


長々とすみませんでした。

次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ