2 目覚め
大きな国道に平行する県道沿いのスーパーマーケットの駐車場、そこがいつもの昼食場所だった。広い駐車場の片隅の営業車内で、くたびれたスーツの膝上に安さだけが売りのマーケットの弁当を広げる。最近、何を食べても美味しいと思わないのだ。味を感じないことはない。しかし、なにか靄がかった、ラップ越しにものを食べているような気分になるのだ。そのため、最近の食事は簡素に済ませていた。
口に入れる。十回咀嚼する。嚥下する。ただただその繰り返し。ただの補給作業のように。車にガソリンを入れるような作業をルーティンにこなしているだけだった。
日々、痩けていく姿が目立ったのか、大丈夫?と同僚や上司は声をかけてくれた。ーー大丈夫な訳がない。でも、それに抗う気力も湧かないのだ。だから、ずぶずふと沈む底なし沼で余生を悟るように諦めからくる澄んだ笑顔で、それらに対し大丈夫と答えたものだった。
もそもそと箸を動かし、日課を半分ほどこなした時だった。ふと、隣の車に目を向けた。
まるで何年も放置されているかのような塗装剥がれや凹みが目立つ外観に負けじと、車内にはゴミがうず高く積もっていた。
その光景を無感動に見つめ箸を口に運んだ瞬間、
それに気づいた。
ゴミの山頂より覗くのは僅かな頭髪を残す人の肌だった。そしてなにより、その肌の上を一匹のハエが歩いていたのだ。しかしゴミの山は微動だにしていない。
その意味を頭の中で形にするより先に、身体が反応した。
咀嚼していた口内から極彩色の旨味が溢れ出したのだ。今まで感じたことのない、味覚の津波が脳内に駆け巡る。それは、米の一粒一粒の違いを感じとっているのではないかと錯覚させる程であった。
感じたことのない多幸感に箸を進める速度が上がる。目はゴミの山から逸らさず、一点を見つめている。まるで身体中の細胞が食を、生きることを求めているかのような素晴らしい食事となった。
最後の一口を嚥下した。途端、身体にどっと疲れが降り注いだ。全力で食事に向かい合った身体が休息を求めていたのだ。
目蓋にのしかかる重みに生への執着を取り戻した身体が逆らう道理はないのだが、最後の気力を振り絞って両の手を合わした。それは感謝であり弔いであった。
ーーごちそうさまでした。




