怪しい老人
むかしむかし、1人の青年が行方不明になった。最後に、その青年を見たのは近所の悪ガキ共で、青年に浜辺で小遣いを貰ったという。その後、日々の忙しさのうちに村人達は、その青年の事を忘れていったのであった。
嫌なことがあると、海にやって来る少年がいました。
少年には、両親がいません。高等教育を終える年になった少年は悩んでいました。皆と同じく大学進学をしたいと思っていますが、お世話になってる施設の負担になるしそれまでの先輩達も大学進学だけは諦めていたのです。自分だけが特別という訳にはいきません。
それが分かっているからこそ、少年は嫌になって海にやって来たのです。
「そこの怪しい者、ここはなんだ」
少年が海から立ち去ろうとした時、肩を弱弱しい手で叩く者がいました。長い髭に、白髪の老人でした。怪しい人扱いをされて、むっとしたようですが困ってるようなので少年は返事をしました。
「なんだと言われましても日本ですとしか」
「日本?ここが、日本?」
「はい、日本の中でもお茶で有名な県です」
「……お茶」
「もしかして外国の方ですか?」
「外国?さっきからなんなんだここは、和の国ではないのか?」
先ほどから、噛み合わない老人に対して少年は苛立ってきました。
「貴方はどこから来たのです?和の国というのは、大昔に呼ばれていたこの国の呼称ですよ?」
「そんな、ではあの3日間は……」
それきり、老人は黙ってしまいました。少年は、気味悪そうに黙り込んだ老人を見ていました。立ち去らなかったのは、育ち盛りの少年ならしわしわの老人くらいなら勝てると根拠の無い確信をしてたからでした。
なにやら、絶望した老人の体は端から灰になっているようでした。その事に気づいたらしい少年は老人から、距離をおこうとしましたが、予想以上の力の強さで掴まれて振り解けません。
「亀を助けるな、竜宮城に連れてかれるぞ、そしたら私のようになる」
絶叫して、灰となりとうとう老人は消えてしまいました。
それを、目撃してしまった少年は走ってその場から逃げてしまいました。
幾分か走った頃落ち着いた少年は、最近働いて得た携帯をとりだしました。
全てを忘れることも出来ましたが好奇心旺盛な時期です、謎の老人が残した言葉で調べられそうな竜宮城について調べ始めたのです。
どうやら、時間の流れが遅いとされる海の中にあるお城という到底信じられないお伽噺にありそうなものという事がわかりました。
少年にとって、訪れた者に宝物やご馳走を振る舞うという所に惹かれたらしいのです。
それがあれば、大学進学をする事も叶いそうです。少年は、時間の流れが違うということを忘れて亀を探し始めました。
少年が、浜辺を歩いているとビニール袋を食べようとしてるウミガメがいました。
クラゲと勘違いして食べてしまい消化できずに苦しんで死んでしまうという話を少年は以前施設の人に聞いていました。
見てしまったからには少年は、行動しました。ビニール袋をカメから奪ったのです。
当然、ご飯をとられたカメは怒っているようでした。
「これは、ビニール袋といって食べたら消化不良で死んじゃうんだよ」
伝わるとは少年も思っていません。しかし、
「ビニール袋とはなんです?」
カメは、言葉を理解したどころか喋りはじめたのです。
「か、化石燃料を合成した袋みたいなもの」
「ほほー、今はそんな危険なものがあるのですね危うく食べる所でしたありがとうございます。……ところで、何を驚いているのです?」
「カメがカメが喋った」
「おや、今どきのカメは喋らないのですか?それは不味いことをしましたね」
そう言うとカメは考え込んでしまいました。
「そうですね、貴方様は見ず知らずのカメである私を助けてくださった優しい心の持ち主、きっと悲しみを負った乙姫を癒すことが出来るでしょう……もう、帰すことは出来ませんけど」
最後の言葉を聞いてなかった少年は竜宮城に行けるらしいと悟り喜んでいました。
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イメージ画像ですが、飛ばなくても平気です