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サラリーマンの不死戯なダンジョン  作者: 昼熊
理不尽なゲーム開始

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六回目

 たぶん、死んだのは六回目か。

 先ずは後ろに下がろう。忍び足でゆっくり行き止まりまで進んでいく。

 よっし、いつもの突き当りだ。これ以上先は無い。

 静かにしていても、黒虎が来るのは確定している。スマホのフラッシュが通用するのは確定。今度は咬みつかれる前にフラッシュで目を眩ませてやろう。


 明かりが灯っているとはいえ、薄暗い空間でのフラッシュはかなり有効だ。相手の目が眩んでいる隙に、脇を抜けて全力で逃げるぞ。

 そして、その先に分岐点や何かしらの逃げ場、もしくは隠れる場所があれば最高なんだが。


 しかし、思ったより冷静な自分に違和感がある。胆が据わったのか根性が付いたのか……人間何回も死んだら、開き直れるようだ。悪い環境でも直に慣れてしまう、適応能力が高いのが人間らしいし。

 いつものようにお馴染みの黒虎が視界に入ってきた。いつ見ても馬鹿でかい虎だ。


 さあて、今回も俺を美味しくいただきたいんだろ?

 ほら、寄ってこい。ここに食べられ慣れた適度に肉のついた男がいるぞ。

 前回と同様に落ち着いている俺に警戒しているようだ。なら、前の動きをトレースしやすいように、今回もボールペンを掲げて突っ込んでいくぞ!


 近くで見れば見る程、凶悪な顔をしてやがるな。そりゃ、初見なら絶望するレベルの恐怖を覚えるわけだ。

 だが、悪いな。もう慣れてしまったよ。

 前回に黒虎が飛び込んできた距離まで詰めると、やはり同じように黒虎が飛び込んできた。予想通りだ。


「喰らえっ!」


 スマホの撮影機能を使い至近距離からフラッシュを焚いた。


「ギャンッ!」


 今度は上手くいった。黒虎が目に前足を当てて、地面をのた打ち回っている。今なら逃げられる筈だ!

 ぶつからないように距離をとってその横を抜けると、一気に奥へ向かって駆けていく。


「よーし、よし、よし、よしっ! 完璧だっ!」


 思わず拳を握りしめてしまっている。あまりの嬉しさに、快感が全身を駆け巡っている。感動に体が震えているが、足を止めるわけにはいかない。


「落ち着け、落ち着け。まだ、まだ、終わっていない」


 そうだ、この後が大事なのだから。にやけてしまいそうになる顔を両手で強く挟み込む。思ったよりいい音がしたが、おかげで少し冷静さを取り戻せた。

 2分ぐらいは走っているというのに、まだ道は一直線で分岐路は無い。

 嫌な予感を噛み殺し、前へ前へ進むと、ようやく目に映る光景に変化が生じた。


 岩肌剥き出しの壁や天井しかなかったのに、俺の目の前には両開きの扉がある。結局、逃げ場も分かれ道もなかったが、この扉を開いて逃げ込み閉じれば、あの黒虎からは逃れられる。

 ノブも何もない無骨な扉に手を触れると、手の平に凍り付くような冷たさが伝わってきた。その扉に全体重を預け、一気に押す!


「どっこらせええええいっ!」


 ふぬううううぅ。動けええ、動けええええっ!

 全身の筋繊維が千切れてもいい、だから、頼むから動いてくれっ!

 顔中に血が巡り、頭がふらふらするがそれでも押す力は緩めない。ここが正念場だ。これをどうにかできるかどうかで、俺の人生が決まる。


「くそっ、くそっ、糞がああああっ!」


 全身全霊の力を込め、全開を超える力を発揮して扉を押す。

 これを開けなければ、俺は一生ここから逃げられない。永遠に食われ続けるだけの人生を送ることになる。だから、頼む!


「扉よ開――」


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