新たな旅立ち
序章終わりですよ!
次から本編勧めたいと思います(。ò ∀ ó。)
シエロの治療もして、片付けをしている中俺が口を開く。
「思ったより盛り上がって良かったな」
「えぇ。皆さん暇なんですね。こんなに人が集まるとは思っていませんでした」
「本当だな。シエロもそこまで特殊な攻撃はしてこなかったし、油断してただけだったのかもな」
「そうですか?見ている方はかなり多彩な攻撃だと思ったのですが」
「ん?俺がズレてるのか?」
「クロはバトルジャンキーみたいな所がありますから物足りなかったんじゃ無いですか?…それにしても、フルーゲルさんは精神的に脆かったのですかね。あそこでムキにならなければもっといい勝負が出来たでしょうに」
「かもな。我を失うとろくなことが無い」
「フフッ。それをクロが言いますか」
「そんなに暴れてないぞ?…それより、保健室の方が少し騒がしくないか?」
「そうですか?…あ、確かに何か聞こえますね」
次の瞬間、丁度話題に上がっていた校舎の壁が吹き飛び、人影が飛び出してきた。
「シエロか」
「フルーゲルさんですね」
「ハァ、僕は、貴方何かに、負けて、ないですから!」
「今のお前の姿、説得力皆無だぞ」
シエロはボロボロになった服の代わりとして、小柄な身体に予備の制服を着ている。
つまり、ブカブカなのである。
「なんだか、お兄さんのお下がりみたいですね」
「だな」
「う、うるさいっ!僕にズルして勝ったくせに調子に乗るなっ!」
「ズルなんてしてないぞ?俺は正々堂々戦ったんだが」
「そんなはず無いです!じゃなきゃ僕が負けるはずないんだっ!」
やれやれ…コイツ敗北を知らないタイプの人間だったか。
こういう輩は色々と面倒で困る。
「もう一度勝負です!」
そりゃあ、そうなるよな。だが今回は試合ではない。
喧嘩を売られたからには2度と俺、リリアにそんな気を起こさせないよう、徹底的に潰す。
「覚悟はいいんだろうな?今度は潰す気でいくぞ」
殺気を込めてそう重く言い放つ。
距離は3m程で相手は興奮状態、か。余裕だな。
若干殺気に気圧されたが、直ぐに俺を睨みつけてくる。
「は、はい!いつでもかかって下さいっ!」
「…そうか」
短く応えるのと同時に踏み込んで一歩で相手の懐へ。その勢いのまま鳩尾を殴る。その手を少し下げ脳を揺らすようにアッパー。続いて喉仏に肘打ち。これを踏み出してから1秒程で繰り出す。
「がはっ!」
まだ止まらない。肘打ちをした勢いで左ストレートを顔面に叩き込み、倒れる前に脚を払って肋骨の中心辺りを踏みつける。
「これで満足か?」
「ごほっ!ハァ、ハァ。ゲホゲホッ」
喉が効いたか。まぁ、潰す気で行くと言っておいたし問題はないよな。
「ふざけないで…くだ、さい…」
「いつでもかかってこいと言ったのはお前だし、俺はちゃんと潰す気で行くと言ったはずだ」
「卑怯、ですよ」
「これはただの喧嘩だ。それに、負けを認めず事実から逃げているお前も十分卑怯と言うんじゃないのか?」
「………」
言い過ぎたか、だがこれでもう俺と戦おうなんて思わないよな。
「まだ…負けてないです…よ」
「今のお前じゃ俺には勝てない事は分かっているだろう」
そう言って俺は脚をおろした。
「Bランクになったらまた戦ってやる。それまでこんな事をしないようにな、もしまた襲ってきたら」
「……」
「俺がラティル先生を怒らせてしまうな」
「!」
骨折をしても笑って治す温厚な性格で知られているラティル先生だが、そのラティル先生が去年1度だけ怒った事件がある。
Dランクの生徒数名が無謀にもCランクのアーマーゴブリン討伐のクエストに行き、帰ってきたときには1人居なくなっていた。
あの悪戯好きな先生が俺達の知る限り唯一激昂した事件で、それ以降「ルミナ先生を怒らせないようにな」といった激励の言葉が出来た、らしい。
つまり、ラティル先生を怒らせる、ということは殺すという意味となる。
「分かりました…でも!」
シエロは俺を指差し吠える。
「今度はもっと強くなって、絶対貴方を倒します!」
「あぁ、期待してる」
そして、模擬トーナメントはここで本当の終りを迎えた。