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決勝戦



 模擬トーナメント決勝戦。

 1年生は勿論、校舎から顔を出して見物している生徒。そして先生方に見守られ、俺とシエロは結界の中に足を踏み入れた。


「いよいよ…最後の試合ですね」

「あぁ。負けても泣くなよ」

「貴方こそ、負けて泣かないで下さいよね?」

「勿論だ。だが、俺は絶対に負けない」

「僕だって本気で行きますからっ!」


 そして、リリアがゆっくりと手を上げる。

 じっくり10秒程かけて上げられた手は、今度は素早く______

「決勝戦…開始っ!」

 振り下ろされた。


「始めから本気で行く!」


 その声と共にブースターが火を吹き、シエロに向けジグザグに突進する。

 シエロが迎撃の為に前方の広範囲に突風を起こそうと魔力を溜める。が、俺もわざわざ攻撃喰らいたくはないので3m程手前で跳び、上空から剣を叩きつける。それは後ろに跳んで躱された。そのまま地面を刔るはずだった剣を、前に出した右脚に全体重を掛け無理矢理切り上げる。そこから怒涛の連続攻撃を繰り出していく。

 防戦一方のシエロは危なっかしくもその攻撃を風を上手く使って躱している。

 ……この展開は前の試合と同じだな。少し警戒するか。


 シエロを結界の端に追い込み逃げ場を無くす。そして(かかと)にも付いているスラスターを動かし素早く相手の脚と脚の間に入れ横に振る。

 全く予想外の攻撃。

 払った足は少し浮かせたまま下げ、大きくバランスを崩したシエロに蹴り込む。

 卑怯だと言いたければ言え。戦闘に使えるモノは使うのが俺流だ。


「うわぁっ!」


 少し間抜けな悲鳴を上げてシエロは数m吹き飛ばされ、受け身も取れずに地面に激突した。


「いてて…足払いとかありなんですかぁ?」

「戦闘では何でもありだろう。本番でも同じ事を言うつもりか?」

「それは訓練の時に言ってくださいよ、今は楽しみましょうって」

「そうかもな。行くぞ!」

「え、ちょっと待っ______」


  問答無用。敵は待ってはくれないぞ。

 俺が振り下ろした剣を転がって避けつつ立ち上がり、鎌鼬(かまいたち)の様な物を飛ばして来た。別に無視しても問題ないのだが一応剣で防いでいく。

 鎌鼬の嵐が一瞬止まり、俺の周りを取り囲むようにしてまた鎌鼬だ飛んでくる。逃げ場は…無い。


「だが、甘い」


 俺は体ごと一回転して全て切り裂く。


「甘いのはそちらですっ!」


 直後。巨大な塊が飛んでくる。

 普通の物ならズタズタに切り刻まれるであろうその塊を身体を捻って躱す。だが反応が遅れ左腕が空気のミキサーに巻き込まれた。

 割と痛いが問題はないな。そう判断してまた突っ込む。

 左腕に当たったのに動じていないのが相当驚いたのか反応が遅い。

 素早く懐に入り込み、シエロの顔面を鷲掴みにして地面に叩きつける。これは痛いだろうな。脳も軽く揺れたと思う。


「かはっ!」


 そして倒れたままのシエロの首に剣を当て、降参の確認。諦めるとは思えないが。


「まだやるか?」

「は、い…まだ、負けてませんっ!」


 シエロの周りが風に覆われ周囲に突風が吹き荒れる。

 別に殺ろうと思えば殺れたのだが(勿論気絶させる、と言う意味で。本当に殺す馬鹿はいない)、もう終わらせるのはつまらないので後ろに跳び様子を見る。


「まだ…こんな所で負けてたまるかぁあぁぁっ!」


 …キレたのか?まったく、最近の若者は短気が多くて困る。

 半ば暴走気味にさっきのミキサーや鎌鼬。ただの突風等の攻撃をしてくるが、適当に撃ちまくるだけの攻撃なら簡単に(さば)ける。

 足を下げ、風を切り、少し後ろに跳んでまた切るというような行動を繰り返していく。

 そして、シエロが直径3m程の巨大なミキサーを撃ってきた。大技の為に隙ができる。

 この瞬間を逃さず接近。峰打ちで気絶させようとしたら、シエロ諸共(もろとも)巻き込む様に先ほどの巨大ミキサーを突っ込ませて来た。しかも最後の力を振り絞って威力が上げられており、最早風ではなく何人たりとも侵入を許さない鋼鉄の刃と化している。

 生身のシエロがアレに巻き込まれたら高確率で即死する!


「絶対に負けないんだ!」

「馬鹿かお前はっ!自分が死んだら勝っても意味ねぇだろ!」


 俺はミキサーの前に出て剣を肘まで覆う巨大なランスへと換装。

 ランスの後ろにあるブースターから高熱の炎か吹き出し、俺の最高火力を誇る一撃を叩き込む。

 触れた瞬間に火花が飛び散り、僅かにだが後ろに下がる。

 足元の地面が抉れ、あまりの衝撃に結界が揺らぐ。

 だがそれでも俺の最強の一撃には敵わない。


「おぉぉぉぉぉっ!」


 その咆哮に応えるかのように更に太い爆炎が吹き出し、ミキサーを吹き飛ばした。

 その瞬間1箇所に固められていた乱気流が制御を失い吹き荒れ、土煙で視界が覆われる。この隙に後ろからシエロが襲ってきたりしないよな?


 勿論そんなこともなく、煙が晴れたときには魔力の枯渇で気絶していた


「……勝者…」


 リリアがゆっくり、焦らす様に間を開ける。そして、俺の手を持ち上げて叫ぶ。


「クロ・クェーサー!!!」


 その瞬間、割れんばかりの大歓声が校庭中を包んだ。


 正直かなり五月蝿(うるさ)いな。


「良かったぞー!」「クロ君カッコ良かったー!「相手もよく頑張ったな!」「副会長まじイケメソ!」「俺ならもっといい試合してやるからな!」「てか副会長って会長と名字同じなの!?」


 …何か変なセリフが混ざってた気がするが、気の所為だな。うん。


「大人気ねーぞー!」「もっと手加減してあげなさいよー!」「鬼かあんたはっ!」


 勝負に情け容赦は失礼だと思うからな。割と本気でやらせてもらったが、そんなに酷かったのか?


「つーか何でお前みたいなのが会長と同じパーティなんだよ!さっさと抜けろよっ!」


 誰だ今のは。死にたいのなら素直に言えばいいのにな。


「クロ、気にしないでいいですよ」

「…わかった」


 最後にそんなこともあったりしたが、無事新1年生歓迎模擬トーナメントは幕を閉じた。


批判でも何でもいいのでコメントを下さいm(_ _)m

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