黒天
そろそろ序章のラストスパート開始ですっ!
「ホントに出てくれたんだね★」
「あぁ、乗り気ではないがな」
「大丈夫だよ、私はすっごく楽しみだから★」
「…一応聞くが、何が楽しみなんだ?」
「勿論、会長さんの事が大好きなクロ君を私好みに調教する事だよっ★」
「リリア、この試合不戦敗じゃ___」
「ダメです」
はぁ…だよな。
俺は右手首に直径15cm程度の盾の様な物を召喚しておく。
するとマーベルが驚いた様で質問してきた。
「それが君のスキルなの?」
「あぁ、これが俺のオリジナルスキル。黒天だ」
「ふーん。何か想像と違うね」
「知るか、あくまでお前の想像なんだから実物と違うのは当然だろう」
「それもそっか」
話が終わり、リリアが試合開始を告げる。
「それでは…試合開始っ!」
まず仕掛けたのはマーベル。
俺の影から触手を出して攻撃してきた。その数6本。1試合目の様に速攻で決めたいようだが、俺はそんなに甘くはない。
盾が光に包まれる。次の瞬間、盾から伸びるように刃渡60cm程の剣が現れた。
マーベルは少し驚いた様だが影の触手は止まらない。それを俺は全て切り裂く。切られて影から離れた触手はぼやけて消えた。
「流石Bランク、こんなのじゃ倒せないよね」
そう言いながら、今度は自身の影から太い触手を伸ばし、先程同様に攻撃してきた。。それを半歩左にズレて剣を振るう。だが、触手に剣が触れた瞬間金属が打ちあった時の様な音が響く。まさか、
「形も大きさも硬さも自由自在だからねっ!」
御丁寧に俺が思った事の答えを叫びながら触手をもう一本伸ばしてきた。
さっきは予想外だったが、硬いと解っているのなら話は別だ。今度は左足を少し前に出し、正面から触手を切る。今回は簡単に切り落とせた。
直後。先程弾いた触手が後ろから来たが、右足を下げ、振り向きざまに切り裂いた。大丈夫だ。この程度なら問題なく捌ける。
そのまま回転して前を向き、一気に接近。咄嗟に影の壁を出されたが御構い無しに剣を叩きつける。
上下左右、更に突き。あらゆる角度からの攻撃に晒され、壁は数秒で壊れてしまったが、相手にはその数秒で十分だった。
壁が壊れた瞬間にその向こうから明らかにさっきの壁よりも硬く、さっきの触手よりも早く、速い槍が遅いかかる。
「っ!」
「喰らえぇぇっ!」
体を捻り、剣を横に叩きつけて回避しようとしたが、その横から現れた別の触手に脇腹を殴られ吹っ飛ぶ。
ギリギリで後ろに跳び直撃は避けたが、吹き飛ばされて距離が空いてしまった。これでまたマーベルのターン。
そして地面に足が着く瞬間に影が伸び、俺の足を絡めとった。ヤバイ…
「捕まえたっ★」
笑顔が物凄く怖い。笑顔って明るい物だよな?あんなにどす黒くないよな?
なんてつい考えてしまった間に全方位から触手が襲ってくる。
逃げ場はない。数本切り落とした所で逃げられない。
___出し惜しみは出来ないな。
そして触手が俺の身体に突撃、この場の全員がマーベルの勝ちだと思った。
だが、その触手は一本たりとも俺の皮膚に届いてはいない。
触手に囲まれて狭い中、最低限の動きで触手を全て切り落とす。
全身が露わになった俺は鎧を身に着けていた。
とはいってもゴツい鎧ではなく、インナーの上に必要な装甲があるだけ。
脇腹や胸、二の腕や脚などの要所に装甲があり、動きやすい構造になっている。装甲が無い場所も、インナー自体かなり丈夫なので問題ない。
頭には視界を妨げ無いように何も付いていない。
更に背中には直径15cm程のブースターが2機と、その少し上から爪の様に伸びている可動式のスラスターが5機。
「…それが本当の黒天なんだね」
「あぁ、今から本気だ」
ブースターが火を噴き、マーベルへと突進する。
マーベルもすかさず壁と触手を出し攻撃してくるが、スラスターの向きを変え難無く回避して行く。
そして壁の前に来たら地面を蹴り方向転換。一瞬で背後へ回り込み、刃を潰した剣で驚き固まっているマーベルの脇腹を殴った。
「がはっ!」
2m程吹き飛び、仰向けに倒れたマーベルの首筋に、今度は刃を付けた剣を当てる。
「俺の勝ちだな」
「ははっ…流石に本気出されちゃ敵わないね、降参だよ」
殴られてかなり痛いはずだが、マーベルは清々しい笑顔で負けを認めた。
「勝者、クロ!」
『わあぁぁぁぁっ!!』
試合が終わり、俺たちは大歓声に包まれた。
直に戦ってみて思ったが、ホントに強かったな。アレで変化スキルだとは信じられない位だ。
「お疲れ様でした。2人とも凄かったですよ。お疲れだとはおもいますが、痣や擦り傷だらけなんですから早く治療して来てもらって下さい」
そういえばこの模擬トーナメントは1年の為にやってたんだったな。自分で言いだしておいて何だが、すっかり忘れていた。
幸い(?)怪我は沢山あったので、これで1年のスキルの確認は終了した。
全員ちゃんと治療は出来るみたいだから、今後期待できるな。
ひと段落ついた所で今更だがある事に気付く。
マーベルの本来の相手ってレニアスだよな。いつらマーベルが怖かったとしても、アイツがそう簡単に逃げるのか?
…何かあったのかもしれない。
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