騎士の意地
次の試合は換装型の対決だな。
換装型っていうのは武器や防具等の装備品を召喚とか変化で顕現させ、その装備で戦うスキルの事だ。まぁ、簡単に言うと剣とかをバーンって出してそれで戦う訳だな。因みに俺のスキルも換装型だ。
で、ショートヘアで剣を持ってる女子はセーラ・ヘルンという名前らしい。見た所無属性みたいだな。そして、反対側で槍を構えている短髪の男子はレニアス・クローヴェル。茶髪で土属性。俺の同級生で、友達だ。
無属性剣士対土属性槍使い、か。これなら面白い対決が見られそうだ。
「では…始めっ!」
合図と同時にセーラが走り出す。勢いを殺さずに右下からの切り上げ、レニアスはそれを下がって躱す。すかさずセーラの刺突、それを横に避けて槍を突き出し吹き飛ばす。
セーラは綺麗な受身をとってから呟いた。
「やるわね…」
「お前もな」
どこのライバルだお前ら。
まぁそれはいいとして、次はレニアスのターン。
槍を地面に突き刺して、岩の塊を生成。
「岩石咆っ!」
その声と共に発射。真っ直ぐ飛んでいき、セーラの前で泥に変わった。
「ええっ!?」
頭から泥を被り、全身泥だらけになったセーラを、
「凝固!」
固めた。ガッチガチに固められたその姿はどう見ても石像にしか見えない。あれ息出来てるか?大丈夫だよな。
固まって動けないセーラに近づき、喉元に槍を構えてから岩を吹き飛ばす。
「終わりだ」
「……」
「…?」
セーラがずっと黙っている。どうしたんだ?
リリアの方を見ると、どうやらやめていいのか迷っているみたいだな。
「大丈夫____」
「終わりよっ!」
いきなりそう叫んで切り上げ。不意を突かれたレニアスは槍を弾かれてしまった。
「形勢逆転ね」
…オイオイ。そこまで勝ちにこだわるのかよ。これ模擬戦だろ?
「まだだぁっ!」
「きゃぁっ!」
レニアスが足を掛けてセーラのバランスを崩す。そして槍を召喚し直し、今度は土で手錠を作って動きを封じた。
これ…模擬戦だよな?たかが模擬戦とは思わないが、いくらなんでもここ迄やるか?
「もう油断しねぇぞ」
「くっ…」
「そこまでっ!勝者、レニアス・クローヴェル!」
セーラが抵抗する気がなくなったのを確認してからリリアが声をあげた。今回は予想外の不意打ちもあった割に怪我も無くて良かったな。
「クロ!見てたか今の!」
レニアスが走ってきた。いつもよりテンション高めか?いや、いつも五月蝿いか。
「あぁ。お疲れ」
「おう!どーよ俺のスキルは。前より細かい操作出来るようになったろ?」
「そうだな。触れなくても泥に変えたのはなかなかだったと思うぞ」
「だろ?岩から泥、泥から岩って形変えるの大変だったんだぜ?毎日雑魚相手にやりまくってよ〜」
「お前も努力するんだな、意外だ」
「そりゃ、俺だってお前に負けないように頑張ってんだっつーの。オリジナルでも同じ換装型なんだから、やり方次第ではどうにかなるんじゃね?って思うだろ?」
「上位スキルがオリジナルに勝つってのは流石にないと思うが、ギリギリAランクに届くかもな」
「おぉ!クロに言われるとホントに行けそうだな!よっしゃ!頑張るぞ〜っ!」
そう言って走って行った。本当にいつもアイツは元気だな。でも、レニアスは体育会系の割に話しやすいし、何かを押し付けたりもしないから、普通にいい奴なんだよなぁ。
そんなことを思っているとリリアから通信がきた。
『クロ。すぐ本部に来てくれない?』
「なんだ?」
『いいから、早く来て下さいね』
随分一方的だな。何かあったのか?
とりあえず、本部に行くことにした。
「フリュスターンさんの相手が逃げてしまったので代わりに出て下さい」
そして試合開始を告げた後のリリアにいきなりそう言われた。
「は?」
いや、逃げる気持ちは分からなくもないが、代わりに俺が出るのか?
「フリュスターンさんにこの事を伝えたら、『じゃあクロ君とやってみたいな★』と言われたので」
「俺に拒否権はないのか?」
「無いです。それじゃ、頑張ってね〜♪」
「はぁ…分かった。やりゃいいんだろ」
「そ、やればいいの。私の護衛が負けるはずないよね?負けたらお仕置きだからっ」
「何をされるんだ俺は…それより、口調気を付けろよ」
「え?…あ、周りに人が居ないのでつい…」
その時大きな歓声と拍手が本部に響き渡った。
「もう終わったのか!?」
「え?まだ1分も経っていませんよ!?」
本部のタープから顔を出すと、セミロングで黄髪の女子が悠然と立っていた。
唖然としていると、リリアが走っていって勝利を告げていた。
「勝者、ライラ・カルレイド!」
ライラか、属性は何だったんだ?
決勝で当たるかもしれないし、しっかり見ておきたかったな。
そして1回戦の最終試合は接戦の末に風スキルの男子が勝利し、いよいよ俺とマーベルの闘いが始まる…
ヤバイ。正直かなり怖い。