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壁撃ちバトル!

 _______2戦目。


 次は壁撃ちというテスト。

 壁撃ちというのは厚さ5m程の壁、というより柱を壊す、というもので、制限時間は30秒だ。

 壊すと言っても本当に壊せる生徒は少なく、殆どの生徒はどこまで削れたかを計測している。


「今回は誰が壊すんだろうな」

「昨年壊してた先輩方と、火力が異常な1年だろうな」

「ん?そんな1年いたのか?」

「あぁ。俺が見たのは的当てだけだからよく分からないが、魔力次第では何とかなるかもしれない生徒はいたな」

「そんな生徒がいたんですか」

「的当てでは惨敗していたが、魔力の動き方が典型的な重火力型だったな」

「魔力の動きとか解るのかよ……」

「こう見えてクロは人間観察得意ですから」


 こう見えてとは何だ。全く。


「こうなったのもリリアの所為な気がするんだが」

「直接私が何かわけではありませんよ?」


 まぁ、そうだが。


「否定はしないんだな」

「事の発端は私の所為と言っても過言ではないですから」

「おーい。なんか重大な事件っぽいんだが。何の話だ?」

「気にするな」「気にしないで下さい」


 勘が良いのか分からないが気にするな。というより関わるな、か?

 言外にそう言っている事に気が付いたのかは分からないがレニアスはそれ以上詮索するのをやめた。


「ところで、そろそろクロの番ではないですか?」

「ん?あぁ」


 テストをしている場所へ目を向けると、丁度俺の前の生徒が壁にスキルを放とうとしていた。


「はぁぁぁぁっ!」


 その声と共に放たれたのは蒼い炎。

 ガスバーナーの様に勢い良く放たれたその豪火は辺りに炎を撒き散らしながら派手なエフェクトと共に壁を焼いていった。


 この壁は不思議な物で、攻撃が物理的でないもの、毒や精神攻撃といったもので攻撃しても傷つける事ができる。

 先生曰く壁に触れたモノの魔力、速度、強度、効果、干渉力等を含めた様々な場面での攻撃力を測定し反映しているらしい。


 それはともかく30秒間バーナーで焼き続けた結果、壁は黒く焦げ、中心部に穴が空いていた。

 結果。悪くはないが高い…かなぁ?という微妙な記録、134cmだった。


 それでも残念だったのか肩を落とす少年を横目で見ながら壁の前に立ち、黒天に換装。そして右手の剣を肘まで覆う槍へと変化させる。

 そして、的当て同様壁の下にある魔法陣が光る。


 3……2……1……‥0!


 始めからブースター、スラスター共に全開。的の光が消えるよりも速く壁に突っ込み火花を散らす。

 このペースで30秒持つかは微妙な所だが、全力で挑みたいからな。バランスが取れ次第槍の後方からも炎を噴き出して、更に威力を上げていく。


「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 槍から伸びる光が身体に触れるかどうかのギリギリの所まで魔力を込め火力を上げる。(かかと)から、背中から、槍から真紅の炎が噴き出だし、目の前の黒い壁に向かって槍を押し続ける。


 そして30秒後。終わりを告げるブザーが鳴った。


「はぁっ。はぁっ」


 息を切らし、肩を上下させながらその場に座り込む。

 大きく抉れた穴の深さはなんと347cm。2年ではかなり高い方か。流石オリジナルスキルだな。

 少し休んだらベンチへと戻る。


「お疲れ様ー」

「相変わらず凄えな」

「今更なのか?」

「今更じゃないけど、凄いのは凄いだろ?」


 そう言われると反論できないな。俺が凄いのは事実だし。

 なんて思っていたら、何を勘違いしたのかリリアが茶化してくる。


「…クロ、褒められて照れてるんですか?」

「そんな訳無いだろう!?」

「クロ、それはちょっと引くぞ…」

「お前ら……」


 そんな中、シエロが例のミキサーを溜めていた。

 トーナメントで俺に撃ってきた物よりも更に高密度で巨大な鎌鼬(かまいたち)の塊。

 時間ギリギリまで溜め込んだその塊を壁に叩きつけ、鉄が擦れ合う様な耳障りな音が響き渡る。

 結果は壁全体を削っただけで、深くまで届いてはいなかった。あの壁をあそこまで分かり易く削るのは凄いが、1点に集中させなければあまりいい結果は出ないだろうな。


 他にもレールガンもどきや闇の腕等、様々な面白いスキルを観たあと、レニアスが立ち上がった。


 やる気はあるようで、本人曰く特製螺旋鉱石砲とくせいらせんこうせきほうを見せてやるよ!だ、そうだ。

 全くどんなセンスだ、技の効果そのままか。あと特製って…w

 これにはリリアも苦笑しているし。レニアスらしいとは思うがな。


「よしっ!行くぜ!」


 魔法陣が光り、タイマーが動き出す。

 直後、レニアスの前方にドリルの様な溝が刻まれた巨大な"岩石"が形成される。

 自信満々に鉱石と言っていたがただの岩じゃないか……いや、まだ何かある。


 その予想通り、岩石の色が変化していく。茶色から灰色に。そして所々から金属光沢が出始める。

 相当細かい魔力操作をしているらしく、額に汗を浮かべ、その表情はやや苦しそうだ。


「ぐ…もう、少し……」


 ピキッ


『あ…』


 ピキピキピキッ


『あらら……』


 特製鉱石砲に(ひび)が入り、そこから更に伸びていく。深く、太く。無慈悲に罅は伸びていく。


「うわ!ちょっと待ってああぁぁ!」


 待つわけ無いだろう。


 バキン


 罅割れは止まらず、本人の叫びも虚しく砕け落ちた。

 そして、そこに止めを刺すかの様にブザーが鳴った。

 肩を落とし唖然としているレニアス。

 レニアスらしい終わり方と兎に角自信満々だった事もあわさり。


 _____やばい超笑える。


 レニアスが地に手を付いて呻いてる様子や周りのあーあといった様子を見る余裕もなく、俺は痛くなってきた腹を抑えて必死に笑いを堪えていた。横で目を伏せ、少しだけ肩を動かしているリリアも。


 こうして2年生となって初めてレニアスがやらかしたのであった。いや、物質変化はとても良い挑戦だったとは思うが、あそこまで綺麗に失敗するとは……あぁ腹痛い。

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