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第二十話 懺悔の血

「キャアアアアアッ!!」


姫璃の高い声と銃声が共鳴する。

ドドドドドッと重い音が空気を震わせ、肌にピリピリと緊張が走った。


「何っ何なの!?」


頭を両手で押さえながら私は叫んだ。

叫ぶことしかできない。

何が起こっているのか分からない。


ガンッと一際大きな音がして、バコッと音が上から聞こえてきた。


その間は、一秒もない。


棚に置いてあった頭上のダンボールに一つ穴が空いていた。


ゾワッと肌が粟立つ。


この音を最後に、銃声は鳴り止んだ。


「終わり?」


紫苑も少し驚きながら海斗の腕からスルリと抜け出した。


「多分…」


私は早まる動悸を抑えながら、紫苑に言う。


姫璃も紫苑に続き、海斗の腕から抜け出す。

姫璃は膝を払いながら扉をジッと見つめた。


みてる私がぞっとするくらいの冷たい瞳で。


「あいつ等…確認無しに撃ちやがって」


口調も瞳に劣らず冷たいものだった。


でも、確かにそうだ。

いくらこんな世界になったからと言って、こんな無差別に撃って言い訳がない。


それとも、そうせざるを得ない何かがあるのか。


「絶対何かある…海斗ありがとう。もう良いよ」


「あっ…あ」


少し間があってから返事が返ってくる。

そう言ってきたものの、海斗が退く気配が全く感じられない。


「だから海斗、もう大丈夫だって」


内心疑問に思いながらも、笑いを含ませながら手を退かすため海斗の肩に手をかける。


なんだか、湿った生温いものが、手のひらに着いた。


「ウゥッ」


海斗が低く呻く。

ハッとして素早く海斗から跳びずさる。


何だろう。この嫌な感じ。

無意識に海斗から逸らした視線を元に戻す。




海斗の肩が紅く染まっていた。


姫璃が素早く海斗に駆け寄る。


「ちょっと、山下!あんたその怪我…」


「何でもない…ただこすれただけっ痛ぇええええ!!」


姫璃はそう言いながら自ら持ってた救急箱から包帯を出し、素早くきつく縛り止血する。

海斗はそれに悲鳴を上げる。


「ほら、男でしょう!そんくらいで悲鳴上げるなっつーの!!」


「お前口調悪くなってる…痛い痛い痛い!!」


海斗の余計な一言で、姫璃が少しお返しとばかりにポンと肩を叩く。

姫璃パンパンと手を払い、使い終わった道具をポーチに仕舞い始めた。


(姫璃凄い…)


自分の手のひらを見つめると、少し固まり始めて色が黒くなり欠けた物がベットリと付着している。


思わず生唾を飲み込み、近場にあった紙にそれを擦り付ける。


(怖かった。)


そう、怖かった。


まだベタベタする手を擦りながらそう思う。


初めて身近な人が居なくなるかもと言う、昨日味わった陽介との恐怖とは別のもの。

とても実感のある、逃げ場のない恐怖。


恐怖におののき、なにもできなかった自分とは違い、姫璃はやるべき事を判断し、実行に移す。


紫苑でさえ、心配して海斗の周りをしきりに回りっておろおろしている。


私は何をやっているのだろう。


私は何を…。


「海斗…」


「あ?」


海斗がこちらを見上げる。


ごめん。


「ごめんなさい…」


悔しくって涙が出てきそうだ。

目頭がジーンと熱くなり、歪んだ視界を悟られぬよう下を向く。


そんな私に海斗がひどく慌てた様子で話しかける。


「おまっお前のせいじゃねえよ!本はと言えば俺がちゃんと確認しないで戸を開けたせいだ!ごめん」


「だって…すごく痛そうでっ…」


申し訳ないのと、自分勝手だが恐怖で身が竦んだ自分に腹が立ち、苦しくなってきた。


昔のことがフラッシュバックして、海斗と自分が重なる。


あっもうダメかも。


ぶわっと涙が溢れて、雫が床に落ちると同時に視界が暗くなった。


「翡翠泣かないで、いい子いい子」


なでなでと頭を撫でられ、抑えてたものが崩壊した。


「ううっヒッ…ごめんなさい…」


次から次へと雫が紫苑のシャツを汚す。


ごめんなさい


ごめんなさい


ごめんなさい


もう誰も、こんな目には合わせないから。

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