第十八話 暴風否嵐
何かに当たるのを期待し、首を回し確認するが、返ってきたのはラケットが当たる音ではなく
台風のような暴風だった。
「うわっ」
思わず尻餅をつき、とっさに腕で顔を覆う。
風と共に、翼のような音が微かに聞こえる。
私の隣でガターーーンッとラケットが落ちる音が聞こえ、身を竦める。
重い扉もこの暴風…嵐には耐えきれず、ガシャンッと固く閉ざされた。
すると、何か異変に気づいた海斗の焦ったような声が聞こえてきた。
「お……ど…………………返…」
もっともこの風と扉が閉まったせいで、ほとんど何も聞こえないが。
「お願い…来ないでっ…」
とは言ってみるが、きっと聞こえていないだろう。
それほど私の声は小さかったのだ。
ドアノブがガチャガチャ金切り声を上げているが、風圧で開かないらしい。
私の体がジリジリ…ジリジリ、と後ろへ追いやられる。
踏ん張って足を立て体制を整えるが、やはり暴風には勝てず、背に冷たい壁がついた。
この上ない程命の危機を感じ、肌が粟立った。
この状況を打開すべく、目を開きたいが、風が強すぎて少ししか開かない。
背中に焦ったような震動が何度も伝わってくる。
もう駄目かも
どうしようもなくて、下を向いていると、何かを溜める間があり、刹那ブワッと私の髪が舞い上がった。
一際大きな風が私を殴る。
グラッと体が傾くが、ぐっと耐え、体をちじこませ、風に耐える。
髪がハラハラと定位置に戻る。
終わったの?
恐る恐る顔を上げると、私の目に映ったものは
塗装が剥がれた天井
天井から落ちたコンクリートの欠片
壁一面についた鍵爪のような大きな傷
そして遠くの暗闇から聞こえてくる、獣の砲口だった。




