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第十四話 紫苑覚醒

「はぁ…はぁ…はぁ…出口はまだなの!?」


半泣きで八つ当たりをするように大声を上げる。


「口より足を動かせ!!…ちっ、増えてきやがった…ゥヲリャアッ!!」


海斗は走るスピードを落とさず、曲がり角からゾクゾクと出てくる奴らを丁寧にバットで殴っていく。

その後ろに姫璃、紫苑、そして私がついて走る。


「なかなかへらねぇ…一体ここには何体居るんだよ!!」


「わからない…とにかくここを突っ切らなくちゃ!」


さっき聞いた話だと、ここには奴らはいないって聞いたのに…


「こいつらが着てる服、俺らの学校の制服…か、…市の役員の服だ」


「てことは…避難中に感染が広がったってこと?そしたらなんで…」


さっきその事を、言ってくれなかったの?


「陽介…なんで…キャアアア!!?」


思考にふけっていたら、横から出てきた奴に気づかなかった。 


「しっかりしろよ!!死にたいのか!?」


悲鳴を聞きつけ素早く奴を吹っ飛ばし、怒鳴りつける。

普段から短気だが、ここまで怒るのは初めて見た。


「ご、ごめん…」


「あ、と…俺も言い過ぎた。それと走るのをやめるな!追いつかれるぞ!謝るのは後だ!」


顔に着いた紅い水を手の甲で拭き、皆の後に続く。

相変わらず横から奴らが飛び出し、それにやむを得ず応戦する海斗。 

私も持参したテニスのラケットで応戦するが、大した戦力にはなっていない。

紫苑と姫璃は互いに身を寄せ合い、何とか場をしのいでいる。


「クソっ!きりがねぇ!!」


「ねえ!どうする?いつの間にか囲まれてんだけど!?」


必死になって奴らを払っていたら、いつの間にか奴らに囲まれ、奴らの間は隙間一つなくなっていた。


「こいつら…どっから沸いてくんだよ!フンッ!」


頭に思いっきり叩きつけ、二度と立たせなくする。


「わからない…とにかく身を守ること第一!せいっ」


数体一気に倒れていく。

でもそれは一瞬で、すぐにうなり声を上げながら、起き始める。


「翡翠!!上っなんか…」


そう言われ真上を見上げると、なんだか天井がガタガタしているような。


ガタガタ…ドカンッ!!


「キャアアア!!?天井があああ!?」

 

「翡翠!逃げて!!」


崩落した一部の天井に押しつぶされながら、姫璃の声に答えようとなんとか這い出ると、妙に血なまぐさく、生暖かい風がうなじをなでた。


「ヒッヒッ…ヒイイィ!?」


姫璃が恐怖で満ちた悲鳴を上げる。


「なに…なんなの…」


振り向いたら人生が終わる。

私の直感がそう告げていた。

でも見ないわけにもいかない。

見なくちゃ、先に進めない。

生き残ることができない。


上を向くと蛍光灯に照らされ、目を細めた。

逆光だが、奴が崩落した天井の上に乗っている。

簡単に言うと、私に馬乗り状態。


ラケットはさっきの衝撃で吹き飛んでなくなった。


どうする、素手で戦う?


それとも海斗に助けを求めるか…


「ゥアアア…」


頭をフル回転させるが、時間ばかりが過ぎてゆき、死へのタイムリミットが刻々と近づいてくる。


どうする。


どうすればいい!?


脂汗が頬を伝う。

まるでそれが合図だったかのように、死への恐怖、感情が津波となって心を支配した。


「やだ…来ないでよ…」


奴は音に反応するということを忘れ、ただただ拒絶する。


「止めて…これ以上…近、近づかないで!!」


私の願いとは裏腹に、私に近づく醜い顔。


「やだ…死にたく、ない…」


「河野!!今向かう!堪えてろ!!」


海斗が何か言っている気がするが、今の私にはどうでも良い。

とにかく、近づかないでと拒絶する。


まだ死にたくない。


生きたい。


怖い。


死にたくない。


生きたい。


「誰か…助けてっ!!」


ドスッ  ドカーーーン グシャッ


そんなような音が聞こえ、目を見開く。

首を横にすると、壁に叩きつけられ、原形をとどめていない奴の姿があった。


「翡翠、助ける」


紫苑が血に染まった膝を払いながら言った。


ということは、これをやったのは…紫苑?


「紫苑…?」


「翡翠、待って。こいつら、殺す」


いつものように満面の笑みを浮かべながら、早速真横にいを腕で吹き飛ばす。

そして今の衝撃を利用し、奴らの足を払う。

ような動作をしたが、払うどころか、奴らの足が全部残らず吹き飛んだ。

倒れ込んだ奴らの頭を一個一個丁寧に踏み砕いていく。


「ぅ…プ!?」


自己防衛、これは自己防衛。

それに、こんな光景なら昨日からさんざん見てきた。

慣れたはずなのに、何故だか吐きたくなった。


「海斗、助ける」


私の周りの奴らを全て殺すと、今度は海斗の応援をしにいった。

ジャンプし、空中に浮かびながら、踵落としや回し蹴りを繰り出してゆく。


「紫苑…」


海斗も言葉がでなくなっていた。

ほんの数十秒ですべての敵が死に、紫苑に感謝の言葉を述べなくてはいけないのに…

言えなかった。


紫苑が人間だと思えなかったから。


奴らを殺すときの紫苑の表情がとても生き生きとしていたから。


まるで、私が生まれてきた理由は、奴らを殺すのを楽しむことだと言っているように思えたから。


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