第十三話 おいかけっこ
「それにしても、こんな通路があったなんてね~」
私の言葉に、後ろの二人がうんうんと頷く。
一人はキョトンとしていたけど。
この通路を歩き続けて数分経つが、相変わらず白い通路が広がっている。
あちらこちらに分かれ道や、階段、扉があり、真っ直ぐに進めばいいと聞いていたが、心配になってきた。
「ここ…曲がる?」
早速出てきた曲がり角を指差し、後ろを向く。
「陽介が真っ直ぐっつったんだろ?だったらそのまま行けば良いじゃんか」
「ですよねー」
海斗に軽く一喝され、首をすくめる。
それから無言でしばらく歩いていると、姫璃がピタリと立ち止まった。
「姫璃、どうかしたの?」
紫苑が可愛らしくパタパタと姫璃に駆け寄る。
あの走り方は…そう!ペンギン走りだ!!
生のペンギン走り、初めて見た。
一人感動に浸っていると、姫璃が肩を抱きかかえてしゃがみ込んだ。
「どうしたの!?姫璃?」
感動の気持ちが急速に萎み、慌てて駆け寄ると、姫璃が赤い唇を細かく震わせて何かを呟いた。
「あ…足…」
「足?」
自分の足下を見るが、なんともない。
「もしかして疲れた?どうしよう…後少しのはずなんだけど…」
「違っ…違う!」
顔を上げ、髪が乱れるのも気にせず、首を振る。
一種のホラーだ。
「足…音」
最後は消え入るように姫璃は口にした。
「足音」
次は自分に言い聞かせるように呟いた。
「足音がっ!!あたし達以外の足音が聞こえるの!!」
ハッとし息を潜める。
耳を澄ますと…確かに聞こえる。
微かにだけど、小さな音だけど、確かに人の足音だ。
意識すると足音が壁に反響し、私達を急かしているようだ。
「走ろう」
海斗がポツリと言う。
「走るぞ!追いつかれる前に!!早く立て!!」
姫璃を無理矢理立たせ、手を引いて海斗は弾かれたように走り出した。
姫璃も半場引きずられながら、海斗について行ってる。
「海斗、姫璃、おいかけっこ?」
紫苑が首を捻りながら指を指した。
「“ただの”おいかけっこだったら、どんなに良かったか…」
まあ、確かにおいかけっこだけど。
それも
「命を懸けた、ね」
最後私がポツリと言った台詞は聞こえなかったらしく、紫苑は楽しそうに笑いながら二人の後を追いかけている。
「私も行かなくちゃ…追いつかれる前に」
捕まる前に。




