螺旋の中心
家に帰って今日の出来事をぼんやり振り返る。
突然帰ってきた石川美保。
その石川と相澤花梨が友人同士であったこと…
相澤花梨で埋め尽くされていた僕の気持ちが揺さぶられるような出来事だった。
ああ、もう、むしゃくしゃする。
石川さえいなければ、あと一歩で相澤さんと友達になれたかもしれないのに…
しかし、石川は仮にも昔付き合ったことのある女である。
それに、石川はまだ僕のことが好き、らしい。
彼女のことだから、あの後きっと相澤さんにも「応援してね」なんて言っただろう。
女の友情がどれだけ強靭なものなのか、解らないが…少なくとも相澤さんは僕を男としてみることはないだろう。
相澤さんとこれ以上仲良くなるとかえって石川を傷つけるだろう。
そして石川とも距離を置かなければ…
はあ、と深いため息をついた。
その時、プルルル、と携帯が鳴った。
双子の弟の良輝からだった。
「あ、優輝?悪いけど今日俺彩加んち泊るから、俺の身代わりやってくれねえ?」
こいつ…いつも俺を利用して…
「いいけど、後で3万な」
「ちっ、そんな金ねーよ。でもま、新しいゲームぐらいは買ってやるよ。じゃなー」
…良輝は本当に都合のいいやつだ。
僕とほとんどおんなじ顔をしているくせに、いくらでも彼女ができるし、身代わりもなんどもさせられている。
親にばれないように僕が良輝の役を演じればいいだけの話だ。
僕もいつか良輝に身代わりをさせてやる、と思っているが、僕にはなかなか彼女ができないから、仕返しもできないでいた。