突然の雨
ざああああ…
ようやく夏が去り、秋の風がふっと吹いたかと思うと、この時を待っていた、といわんばかりに、秋雨がやってきた。
雨の日はいつも外で練習しているサッカー部や野球部の連中が、校舎の中を走る。
きゅっきゅ、ズサッズサッ、という足音がまるでナウシカに出てくるオームの群衆のように襲う。
こんな日はさすがに煩くて勉強に集中できないので、教室の窓から雨が降る中庭を眺めているくらいしかできなかった。
中庭では細くて大きな木が一本葉を揺らしてじっと耐えていた。
その向こうの、一回の渡り廊下を歩く影を見つけ、僕はハッとして教室を飛び出した。
…彼女だ!彼女に違いない!
オームの群衆が向かってくるのはお構いなしに、僕はその流れを逆走して走った。
2階から1階に駆け下りて息を上げている僕の目に入ったのは…
「優輝…くん?」
「…!?」
僕は、自分の目を疑った。
そこにいたのは僕の狙っていた彼女ではなく…元彼女だった。
「石川さん…?か、帰ってきてたの?」
突然の出来事に頭が混乱しながらも、僕は何とか話しかけた。
「うん…ごめんね、何も言わずに留学しちゃって」
「いや、いいんだ…」
石川とはもう、終わってる。そう思っていた僕にとって、思いがけない再会だった。
そして更に思いがけない事態がやってくる。
「美保…この人ってもしかして…」
僕の元彼女の石川美保の横に立っていたのは、あの、相澤花梨だった。
「あ…えと…」
石川が口ごもっている間に、
「美保の彼氏?」
と、彼女が訊ねたのだ。
ズガガガガーン!!!!!!!!!!!
ものすごい音だった。稲妻が校舎の近くに落ち、廊下の蛍光灯は一気に光を失くした。
「きゃあ、こわい!」
相澤さんの足がガクガク震えているのが僕の目にハッキリと見えたが、僕には何もしてやれなかった。
この稲妻、突然の雨…
相澤さんが、僕と、石川の関係を知っていたこと…
そして、石川との突然の再会。
すべてが自分に降りかかった天罰のような気がして、ただただショックで呆然としていた。