第8話 璃瑠神迷宮
「よーし、じゃあ張り切って攻略していこー!」
「おぉーっ……? って、西戸はともかく真神もノーリアクションなの?! え、麻桜さんいつもこうなの?」
「そう、そーなんだよ秋都くん。白くんってばノリがわるくってさぁ」
俺はテンションあげあげの麻桜さんと肩をすくめて呆れた風の真神、そして、ここがホームダンジョンという西戸の四人で放課後のダンジョン探索に来ていた。
この璃瑠神迷宮は先日迷宮再構築が発生し、西戸は巻き込まれて数日入院のために学校を休んでいたのだ。
「彩花は気を抜きすぎなんだよ。元がFランクの初心者向けとは言え再構築でランクアップしてる可能性もある」
そう言って真神がこちらを、いや、西戸の方をチラリと見た。
迷宮討伐後の迷宮再構築は実際のところはダンジョンマスターの交代時に新しいダンマスがダンジョンの構造を変えた場合に起きることが今ならわかる。
正確には迷宮討伐による迷宮崩壊と再構築の二回環境が変わっていることになるが外から見たらダンジョンが閉鎖されて次に入れるようになるまでが再構築だ。
「ここは伽羅のホームダンジョンだろ、頼りにしてるぜ」
「ホームダンジョンと言っても、この前迷宮再構築が起こったばかりだから、どれだけ変化があったことやら」
真神はそう言いつつも西戸の前に立ってさくさくと進んでいく。
真神がこのダンジョンの再構築後の調査に俺と西戸を同伴しているのは、単に西戸のホームダンジョンだからというわけではなく、おそらく俺達がダンマスになっているかを確認するためだろう。
西戸はこのダンジョンの迷宮討伐時にダンジョンにいたわけで、俺は下水道ダンジョンの迷宮核を破壊している。その情報はギルドを通じて伝わっていると思って間違いはない。
「ところで、秋都くんの役職は非戦闘系って聞いてるけど、このペースできつくない? まだFランクだよね」
俺がポヨポヨ跳ねてくるスライムを切り飛ばしたところで最後尾をふらふらしている麻桜さんが訊いてきた。
「……あぁ、全然問題ないですよ。先日のダンジョンで先輩方に結構な数のモンスターを倒させて貰ったんでレベルアップしてるのかもしれません」
この世界、ステータス表示にレベル等の具体的な数値はないがレベルアップの概念はある。
「ふーん、確かに秋都くん元気そうだねぇ」
『マスター、どうやらダンマスでないかを確認するための問いかけのようです』
気持ち小声のメルリンの声が脳内に聞こえた。
「あぁ、そう言えばダンマスは自分のダンジョン以外ではデバフがかかるんだったか?」
『ええ、ただし、ソコまで低下するわけでもありません。どちらかと言うと自分の迷宮での大幅なステータスアップがあるため相対的にはだいぶ下がった感じになるだけです』
「おお、それなら今の返答で正解だったか」
ちょっとは疑いが晴れたのか麻桜さんが少し離れたところのモンスターを倒しにいくのを見ながら脳内での会話をおこなう。
「彩花ぁ! 下へ降りる階段あったぞ、戻ってこーい!」
前方では真神と西戸が地下二階へと続く階段を見つけていた。
しかし、一度も道を間違えずに真っ直ぐに階段にたどり着いている。迷宮再構築でもマップが変わっていないのかそういうスキルを持っているのか、どっちにしろ最年少Cランクは伊達ではないのだろう。
階段を降りても上の階同様にいかにもダンジョンというような迷路のような石壁の通路が続いていた。
「お、二層目から罠とは殺意が高いな」
「このダンジョンは元々罠が多めのダンジョンだけど五階層以降だったはずだ。迷宮再構築で少し変わったのかもしれない」
付近を見渡した西戸が指差す先、石畳の通路にも一部かすかに色の違うところがある。
「ちょっと白くん、楽しいからってわざと踏みにいかないでよ」
警戒するでもなく色の違う部分を踏んだ真神は飛んできた矢をあっさりと掴んだ。
「はぁっ、真神、そんな罠の解除ありかよ?!」
その後も喜々として罠を発動しながら進むのは安全というべきなのか非常に悩ましい。
「おいおい、これでもオレって〚罠師〛で罠発見とか罠解除とか持ってるんで活躍したいとこなんだが……そもそも、これってオレの案内必要だったか?」
西戸のやつは〚罠師〛だったのか、うん、その『なんでここにいるんだろう』的な気持ちはよく分かる。
「そう言えば伽羅くん、この前の迷宮再構築の時もココにいたんだよね。迷宮討伐したパーティとも知り合い?」
「いや、知ってはいるが知り合いじゃない。あの日は……最下層でそのパーティとはすれ違ったな。で、再構築が起きたのはその後だから、あのパーティが迷宮核を壊したんだよな?」
「そうみたいだよ、けど、スキルを手に入れられたのは半分だけだったみたいで揉めてたって聞いたよ……。ふーん、じゃあ、伽羅くん再構築の時は迷宮核の近くにいたんだ」
後半、独り言のように小さく呟いた麻桜さんの声がダンマスとなってステータスの上がった耳には冷たく聞こえた。




