第43話 後日譚2
「ねぇ支部長、ウチにもマンホールあったんだけど、どうしたら良いですかね?」
「はぁっ?! ウチにあったって遊佐君の家の中か?」
今日も今日とて勝手知ったる支部長室とばかりにソファーに座り、出されたお茶を飲みながら報告をする。
「ええ、ウチって店舗付きマンションになってて一階は元コンビニなんですよ。まあ今は閉めてて使ってないんですけど、そのバックヤードに例のマンホールがありました」
「一応場所を教えてくれないか。下水道迷宮の入り口は……遊佐君の家で十箇所目か?」
俺達が下水道迷宮経由で迷宮発生から生還したことで下水道迷宮の存在、いや再開がやっと明らかになった。
やはり、俺がコアを破壊した後は公園のトイレ横のマンホールがダンジョンの入り口でないことだけを確認してダンジョンがなくなったと判断されていたらしい。
そして、夢ノ宮公会堂迷宮の再開を待つ間に下水道迷宮の調査が進み、この迷宮が多数の入り口を持つことが判明したのだ。
「ダンジョンが家の中にある場合ってギルドに届け出て、勝手に入って良いんですか?」
「プライベートダンジョンとする場合、許可と魔物氾濫が起きないように間引きや探索者常駐が必要ですが……それらは入り口が一つの場合しか想定されていません」
ギルドの職員が地図に印を付けながら困ったように言う。
「許可を出すから遊佐君が管理をするのはどうだ?」
良い考えだとばかりに支部長が提案する。
「ホントですか! プライベートダンジョン……ではないですけどすぐに入れるダンジョンってあこがれますよね。幸いFランクダンジョンですし、許可して貰えるなら是非お願いします」
俺もにっこにこで話に乗った。
『マスター、中々の悪徳商人ぶりです。こういうのをマッチポンプと言うんでしたね』
木を隠すなら森の中、大量の入り口を用意すれば俺の家がダンジョンになっていても疑われることはない。
「幸いというか何というか、このダンジョンの入り口がマンホールなお陰でまずモンスターが出てくる心配がない。また、ほとんどの入り口は管理可能、と言っても上に重しになるものをおいて封印する形になった。遊佐君が管理して間引いてくれるならありがたい」
「わかりました。あ、とりあえず、分かっている入り口の地図を貰えますか? ひょっこり出たら誰かの家というのは避けたいですし」
「それは私の方で用意しておきますので、後で受付の方で受け取ってください」
支部長の隣で俺の家に印をつけていたギルド職員さんが他にも印が付いている地図を持ち上げて見せた。
ギルドに許可証を貰って下水道迷宮を半プライベートダンジョン状態とする。
地上の入り口を塞いだ場合、残りは下水道内の入り口だけなのでわざわざ入る探索者はいない。そもそも、下水道に入るのには許可が必要なので勝手に入ると不法侵入となる。
また、適当なタイミングで下水道内の入り口はサイズを小さくして人が入れないようにする予定だ。出入りしない入り口は小さくなって消滅するみたいとでも言えれば良いだろう。
◆ ◇ ◆
「秋都さん、おかえりなさい。ギルドはどうでした?」
家へと戻ったところで一階にいた鈴音に迎えられた。
「ただいま。予定通りここの入り口は俺が管理することになった。これでこのダンジョンの管理者は名実共に俺になったわけだ」
『マスターの悪徳商人ぶりは鈴音にも見せたいところでしたよ』
どうしてまだ鈴音がここにいるのかというと、夢ノ宮公会堂迷宮の迷宮発生災害の影響だ。
奇跡的に死者ゼロとなったこともあり、メディアに大きく取り上げられ、いまだにその熱が冷めていない。
特に出演者として名前が分かっている地下アイドル、特に鈴音達のように本名や学校が知られているメンバーのところに取材が殺到していた。
そのため、秋葉原探索者養成学校芸能科は関係者についてはほとぼりが冷めるまで休学となった。なお、夢ノ宮探索者育成高校も同様である。
「一旦下水道迷宮が片付いたところで夢ノ宮公会堂迷宮をどうするかの会議を始めようか」
ダンジョン管理は【迷宮管理者】の大切な役割である。
「はーい。なんだかこういうのってわくわくしますね」
『ギルドの様子を見るに、なるべく早く再開してしまったほうが良さそうです。おそらく、マスターも調査に駆り出されると推測します』
できれば鈴音のレベリングも行いたいこともあり、一週間を待たずに再開するために夢ノ宮公会堂迷宮の構築計画を練る。
コンセプトとしては配信ドローンに代表される撮影機器がドロップするダンジョンだ。
それと、コンサートホール。夢ノ宮公会堂の時のホールを拡張しコンサートホールとして使用可能とする。
DPを稼ぐには人が滞在することが必要である。コンサートホールとして機能させた場合、多くの人が一定時間滞在することが保証される。
俺の目指すのは全ての車にドライブレコーダーが搭載されているように、全ての探索者が配信ドローンを装備した世界だ。
そうすることでダンジョン内でダンマス狩りに襲われない安全な探索者ライフを満喫するのである。




