第33話 夢ノ宮公会堂2
―― 新第二夢ノ宮駅
各地のランドマークは迷宮化しやすい傾向がある。
今となってはわかるが、迷宮再構築時には目立ったランドマークをベースを元にした方が簡単なのだ。
また、ゲーム気分で選んでしまうのもわからなくはない。もっともそんな理由で迷宮再構築を起こされてもたまったものではないのだが。
そんな感じで各地の駅は頻繁に迷宮化に巻き込まれるため、新なんとか駅とか、第二なんちゃら駅が多くなっている。
なお、迷宮化したもののそのまま運用されている駅も数多くある。
日々行き来する人数を思えば駅を迷宮化するのは悪くない選択だとも思えてくる。DPは人が滞在するだけでも増えるのだ。
「こうやって注意して見るとセイクリッドラビリンス教らしき白ローブも結構いるな」
フードまで被っていると怪しさしかないが、そうでないとそれほど気にならない。
夢ノ宮市には夢幻塔大迷宮もあり、探索者の数がかなり多いため、多少奇抜な格好をしていてもそれほど注目を浴びることはない。
むしろ単色の白ローブはスッキリしたお洒落な格好の部類だろう。
『全体的にマスターの家の方向、夢ノ宮公会堂方向に向かう教徒が多いようです。これは、明日からの夢ノ宮公会堂は注意が必要ですね』
「あー、もう、何で俺の担当するところが狙われるんだよ。こういうのって普通は主人公のとこで事件が起こるんじゃないのか?」
『真神白達は元勇者パーティーの聖女達と共に迷宮実習と言う名目でのダンジョン調査でしたね』
Cランクパーティではクラスメイトとの実習は実力格差が大きいのと、既に学校の実習レベルではあまり意味がないためギルド依頼のダンジョン調査で振り替えとなったらしい。
「あー、思い出した。あっちはあっちで色々起こるやつか。うん、まだ何も起こらない可能性のあるこっちのほうが多少はマシかも」
『それはそれでフラグってやつですかね。あ、鈴音が着いたようです』
―― ピコン!
「……どうやら反対側の出口に出たみたいだ。しゃーない、迎えに行くか」
◆ ◇ ◆
駅からマンションまではバス一本である。ちなみに夢ノ宮公会堂へも別な路線のバスで行くことができ、マンションからは歩いたほうが近い。
「うわーっ、思ってたよりお洒落な部屋ですね」
「思ってたよりって失礼だな、おい」
鈴音のキャリーケースを運び込む。
「持っていただいてありがとうございます。舞台衣装も全部詰め込んだから結構重かったでしょう」
「いや、レベルもそれなりにあがってるから軽いもんだよ。まあ『倉庫』が使えればもっと楽なんだけどね」
使おうと思えば此処では使えるんだけど、使うわけにもいかない。
「けど、実際のところ秋都さんの『倉庫』ってチートですよね。出来ないことってあるんですか?」
「確かに、我ながらチートっぽいと思ってはいる。ダンジョンの外では使えないとか、生物は入らないとかはあるけど」
「植物は?」
「実は入る。あ、地面に根を張ってるのとかは駄目だから薬草を簡単に採取とかはできないな。あとトレント系のモンスターは入らなかったから、モンスターだと駄目だな」
「大きさに重さもコンテナが入るなら実用上十分ですしね。ダンジョンの中でイベントするなら舞台装置とかも全部運搬して貰えそうですよね」
「ああ、ダンジョンの中での撮影ができれば便利だろうな。今のところダンジョン内部の撮影すらできないから撮影できるだけで凄い話題になりそうだな」
実のところダンジョン内での撮影自体は何とかなりそうな所まで来てはいる。ただ、影響力が大きすぎるため、そう簡単に公にはできない。
「ですよね、そうなれば私も探索者デビューが出来るんですけどねぇ」
「ん? 鈴音も役職持ちだったの?」
「あれっ、秋都さんに言ってませんでしたか? 自称〚偶像〛ですけど、実際のところは【配信者】なんです」
「【配信者】って初めて聞くな」
「撮影等で注目されることでバフがかかったり、バフを掛けたりできる役職です。つまり、現状はダンジョン内でのメリットはゼロですよ、ゼロ。そんなわけなので、秋都さんもダンジョン内で動作するカメラとかドロップしたら売ってください!」
「お、おう。見つけたら連絡するよ」
鬼気迫る勢いで主張する彼女に対して頷く以外の選択肢はない。
『こ、これは……マスター、ダンジョン内で動作するカメラを公開する時はまず彼女に渡さないとヤバそうです……』
うん、俺もそう思うよ。結局、歓迎会を兼ねての夕食の間中、鈴音の愚痴を聞かされることになった。




