第32話 迷宮種
「セイクリッドラビリンス教ですか……?」
セイクリッドラビリンス教はダンジョン三大宗教の一つだ。
ダンジョンを神域とする一派であり、ダンジョンを広げようとしている。
「白のローブは奴らが良く身につけているし、実際のところギルドでも一、二週間前からセイクリッドラビリンス教徒が数多く夢ノ宮市に集まってきてるのを確認してる」
「あ、ギルドの方でも把握してたんですね。けど、その情報って俺に開示して良いやつでした?」
「いや、ギルド内の関係者と、ごく一部の高ランク探索者だけの極秘情報だ。ってことで、お前もギルドと関連のある高ランク探索者の仲間入りだな――」
厳つい顔の支部長がニヤリと笑った。
そう、ちょっと白ローブが気になったのでギルドに情報を聞きに来たら支部長室に連れ込まれたのだ。
「――てなわけで、ホレ、Cランクの探索者ライセンスだ。いやー、しかし今の夢高生はホント優秀だな。真神、勇者達に続いて五人目か? 最年少記録はともかく、間違いなく最短の昇級記録だな」
『おめでとうございます、マスター』
「はぁ? いやいや、なんで。支部長、どうしてそうなるんですか、俺、弱いですよ」
商人は戦闘職ではないのだ。真神や彩花さんなんかと同じに扱われたら軽く死ねる。
「ギルドのランクにも色々あるんだよ。わかりやすい指標としては強さとかダンジョンの踏破階層とかあるが――」
支部長は傍らのファイルを開いた。
「――それらを含めて結局はギルドへの貢献度だな。でだ、お前の場合、まずは部位破壊による素材収集に関する発見、ついでに大容量アイテムボックス。実際にはP特はそれだけで一つ上のランク扱いでもある。それから、新宿駅の未踏破領域の発見と開放。ついでにエリアボス討伐とキュアゼリー取得方法の確立。とどめに大量のキュアゼリー、しかも、新種の納品だ。ギルドへの貢献度には当然納品金額も含まれるわけで……つまりはお前の場合、ギルドへの貢献度がマックス状態になってる」
「おぉぅ、そうやって聞くと凄いですね」
「だろ、どう考えてもCランクぐらいにはしとかないといけないってなってな。それに、お前、弱いって言うけどなぁ、アイテムボックスの中に入れてるコンテナってどんぐらいの重さがあるんだ?」
支部長はペラペラとファイルをめくって見せる。そこには俺がビッグキュアスライムを倒した時の討伐方法が書かれていた。
「コンテナですか? えーと、三トンぐらいだったような……我ながら良く入ってますよね」
「うわっ、思った以上に重いじゃないか。で、三トンのコンテナを頭上から落とされて耐えられるモンスターや探索者がどれだけ居ると思ってんだ。三百キロならともかく三トンだぞ、戦い方の相性はあるが既に最強の一角だろうよ」
この厳つい支部長なら確かに三百キロはなんとかしそうだ。
「言われてみるとエグいですね。よし、今度もっと小さめの鉄の塊とかも準備しときます」
「お、おう。お前、大人しそうな顔してるがやっぱ探索者向きだな。まあ、それはともかく、ここからが本題だ」
支部長の目が鋭くなる。
「これから本題って、やっぱりセイクリッドラビリンス教の話ですか?」
「ああ、こっからは極秘情報も含まれるから口外禁止だ。その教徒共だが、どうやら『迷宮種』を持ち込んでいるらしい」
「迷宮種……」
ビクンと心臓が跳ねた気がした。
「迷宮種については情報規制がされてるから初耳かもしれないがな。こいつはダンジョンを作成できると言われている。もっともダンジョンが出来やすい魔力溜まりに設置しないといけなくて本当に迷宮種がダンジョンを生み出せたかについては諸説ある。知っての通り迷宮発生に巻き込まれた場合の生存率は限りなく低い。それで迷宮種により迷宮発生を起こしたとされる事例での生存者は皆無なため原因が魔力溜まりか迷宮種だったかの断定ができないんだ」
「つまり、白ローブの連中は夢ノ宮で迷宮発生を起こそうとしている?」
「ウチではそう考えて警戒を強めている。それでだ、来週末に夢ノ宮公会堂で夢高も協賛しているイベントがあるんだが知って……オイ、そんな嫌そうな顔をするな、いや、ということは知っているな」
「……ええ、商業科に知り合いがいまして、嫌な予感がする的な事を言われてスタッフパスを受け取っています。あぁっ、これは絶対なんか起こるやつだぁ……」
『流石マスター、フラグ回収の可能性アップですね』
おかしい、『ダンマスゲーム』にそんなイベントあったか?
「流石は期待のホープだな。ほっといてもランクアップしそうな奴はやっぱ違うなぁ、ほれ、元気を出せ。てなわけでギルドの指名依頼扱いにもしておくから何かあった時はよろしく頼むわ。こっちも大っぴらには動けないし、イベントにギルド員を送り込むわけにも行かないしで困ってたんだよ、いやぁ、良かった良かった」
「良くねぇ!」と叫びたいのを我慢しつつ指名依頼受注の手続きをしてギルドを後にした。




