第31話 Do It Yourself
『マスター、どうしてこちらの部屋も改装を?』
鈴音の訪問を来週に控え、この週末は自宅マンションの大改造中だ。
「三階が自宅とはいえ、鈴音達、特に命はウチに来たら俺の部屋を見たがるだろう? そうすると必然的にダンジョンコアに気づかれる可能性が上がる。そこで、俺の部屋をこの二階に用意しておけば三階は立入禁止にできるわけだ」
それに、迷宮化してるとどうしても魔力濃度があがってしまうため一階と二階は迷宮化の割合を少し下げておきたい。
ついでに一階の店舗部分を実際に使用できるようにしておこうと思っている。
『なるほど、確かにマスターの部屋に突撃してきそうですね。ベッドの下とか本棚の上を漁られると困りますもんね』
「なっ、べ、別に困りはしないが。まあ、どっちにも気分次第で暮らせるぐらいには色々揃えとこうと思ってな」
―― ピンポーン!
インターホンに連動してデバイスが来客を告げる。
『家具の配送のようです。店舗部分に入れてもらいますね』
「ああ、そうしてくれ。俺もすぐ降りよう」
新しく自室とした部屋には下の店舗へと続く内階段を新設した。
また、同様に三階にも行けるようにしている。
自宅が迷宮化してるとDIY感覚でガッツリと改装できるのが良い。
「あ、その辺に適当に置いといて貰えればこっちで運びますんで」
運送屋が二人がかりでベッドや机を運び込んでいる。
「部屋まで運ばなくても良いっすか? まあ、大丈夫ならこっちは大助かりですけど」
受領証にサインをして運送屋を見送る。
「しかし、自宅がダンジョンだと自宅内での荷物の移動が『倉庫』でできるから楽でいいよな」
サクッと収納して二階へと戻る。
「ベッド良し! 机に椅子も設置完了。電気に水道もちゃんと使用可能っと」
迷宮化により電気や水道も供給可能にはなったものの、それをするとここがダンジョンだとすぐにバレてしまうため、消費量が半々となるぐらいに調整して節約をしている。
『DP以上に収入が増えていると思うのですが、マスターの貧乏性は変わらずですか……』
「元々二階の貸出による不労所得で生活しようかと思ってたんだが、それも迷宮化で微妙だしなぁ。いや、既に不労所得で得られる額以上に収入がありはするんだが……」
新宿駅迷宮未踏破地帯のエリアボスのビッグキュアスライム。こいつから得られた大量のキュアゼリーだが、調査の結果通常のキュアゼリーよりも効果が高いことが判明した。
そのため、当初予定した額の何倍にもなって取引されることとなり、ただでさえ多かった額の桁があがってしまったのだ。
ちなみに、探索者がギルドと取引を行う場合、税金は既に引かれており、後から困ることはない。
初期の頃は高ランク者の税金問題等色々あったらしいが今は普通に探索者をするうえでは税金について考える必要がないぐらいに優遇もされている。いや、高額な魔石やドロップアイテムで先に払っている。
『マスターの場合、迷宮管理者以上に『倉庫』がチートでしたからね。もっとランクが上がるのも時間の問題ですし、そしたら……ん?』
「メルリン、どうした?」
念話中のメルリンから周囲を伺うような気配を感じる。
『少しダンジョンへの何らかの干渉を感じまして……と言ってもダンジョンの中に侵入者というわけではなさそうです。モニターに表示します』
視界に複数枚のウィンドウが開く。
ウィンドウの中にはいかにも不審者っぽい白ローブのグループが何かを探すような素振りでうろついていた。
「あー、確かに怪しいな。うん、怪しい。けど、メルリンさん? この映像はどう見てもダンジョンの外なんですけど、どういうこと?」
【迷宮管理者】の能力としてダンジョン内の状態をある程度知ることはできるが、ダンジョン内の映像を見たりということはできない。つまり、自宅を迷宮化したからと言って部屋の中を覗くことはできないのだ。
それなのに、このウィンドウには映像が写っている。百歩譲って能力がアップしてできるようになったとしても、この映像はどう見ても路上で何かを探す怪しい集団。
そう、どう見てもダンジョンの外の映像である。ウチのダンジョンはいつから屋外にまで広がったんだろうか?
『マスター、マスター、お気を確かに。別に勝手に地上までダンジョンを広げたわけではありませんのでご安心ください。ダンジョン内にこの前購入した監視カメラを設置してモニターできるように調整していましたら、ダンジョン領域内に通信ケーブルが通っているのを発見しまして、少し調整したらダンジョン内の監視カメラ同様に写せるようになっただけです』
「おーけー、おーけー、外のカメラの映像が写ってる理由はわかった。ついでに安心と言いつつ全く安心できない理由もありがとう。これってバレたら不正アクセス禁止法とかに引っかかるのかな?」
『ステータス画面は他人から見えませんし、迷宮管理画面も同様です。それに、もしバレたとしてもダンジョンマスターである方のことが問題になるので防犯カメラなんて些細な話でしょう』
「それはともかくとして、いや、良くはないけど、そう言えばダンジョン内の監視カメラ設置が完了したって聞いてなかったんだけど?」
『そうですね、今、言いましたから……』
俺は、目を逸らすメルリンを幻視した。




