表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇バイトでダンジョンコアを壊したらダンジョンマスターになりました ~ここはダンマスが狩られる世界です~  作者: 水城みつは
第三章『夢ノ宮公会堂』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/47

第29話 恋梨紫苑

恋梨こいなし紫苑しおん、夢ノ宮探索者(シーカー)育成高等学校三年生。職業ロールは【情報屋トレーダー】。ダンマスゲームでは名前は出ていないものの、情報屋の存在は各所で匂わされていた。とマスターの知識にはあります』


 名前もキャラ絵もないモブ役のはずで、俺が知ったのは金に困ってバイトを探していた時に偶々知り合った。


「偶々……?」

『どうしましたマスター?』


「いや、なんでもない。えーと、ここか」


 先輩に呼び出されたのは視聴覚室だった。


―― コンコンコン、カリカリカリ、コンコンコン。


 指示された通りに扉をノック、そして、引っ掻いて、ノック。


「やあ、遊佐ゆさ君、いらっしゃい。待っていたよ」

 カチリと鍵を開ける音がして視聴覚室の中へと招かれる。


「えーと、紫苑しおん先輩、お久しぶりです」


 視聴覚室内は複数のモニターの電源が入っており、部屋の正面の大きなモニターには学食の様子が映し出されていた。


「まあ、座り給え。あぁ、こぼさなければ昼食をとっても構わないよ」


「えぇ、ありがとうございます?」

 とりあえずは購買部で買っておいたパンと牛乳を開ける。

 モニター内の学食は勇者パーティ効果なのか、いつもよりも人が多いように思える。


「ふむ、何か色々と聞きたそうな顔をしているね、イベントが始まるまでもう少し掛かりそうだし、答えられるものには答えようじゃないか。ん、私のお昼ごはんかい? このゼリー飲料は新開発中の試作品でね、キュアゼリーが含まれていて眠気スッキリ七十二時間は働けるというものだよ。いやぁ、何でもキュアゼリーの安定供給の目処がついたとかで研究者は大喜び――」


「いや、先輩の昼ご飯が気になるわけではなく、そもそも、俺って先輩に名前言いましたっけ? それに、デバイスの連絡先は渡してませんよね?」


「ああ、そう言えばそうだったかな、遊佐ゆさ秋都あきと君、夢ノ宮探索者シーカー育成高等学校一年生で役職ロールが【商人マーチャント】にも関わらずここ一月の間にDランクまで駆け上がった話題の新人ルーキー――」


 伝えていない、また、知る者は少ないはずのDランク情報までも開示し、そして、紫苑先輩は優雅に立ち上がって一礼した。


「――改めて自己紹介といこう、夢ノ宮探索者(シーカー)育成高等学校三年、恋梨こいなし紫苑しおん役職ロールは【情報屋トレーダー】だ。私が扱うのは情報、つまり、君の情報もその一つということだよ。今日は君に依頼、というか、お願いがあって来てもらった」


「お願いですか……?」


「ああ、おっと、その話はちょっと後だな。どうやらイベントが始まりそうだ……すまない、デバイスの映像転送を開始してくれ」

 先輩はデバイスで誰かへの指示を出すと部屋の正面の巨大モニターの映像を切り替えた。同時に音声も流れる。


「――黒瀬くろせ琉唯るい、お前を勇者パーティから追放する!」


 丁度、勇者パーティのリーダーである玲音れおん遥斗はると黒瀬くろせ琉唯るいを追放するところだった。


「おお、何か起きるとは思っていたけど、パーティ追放とはなかなか」

「こうなるって分かってたんですか?」

「ダンジョンから帰ってきた時のパーティの態度や、ほら、君も知ってるだろうコア破壊によるパーティ崩壊の都市伝説。何か起きるとは睨んでいたんだよ」


―― ドゴッ!


 何かが壊れる音がした。


「はぁっ?! 遥斗はるとのくせに何で琉唯るい君を追放しようとしてるのよ! いいわよ、それなら私と琉唯君は抜けるわ。行こっ、琉唯君、今日からは私と二人よ」


「はあっ?! 姉さん、何でそうなる。おい、琉唯も待て、いや、お前は追放だが……」


 呆然と立ち尽くす勇者の前には、勇者パーティの回復役、役職ロール【聖女】が怒りに任せて叩き折った机が残されていた。


「おおぉっ、これはなかなか面白、いや、強烈な展開になりましたね」

 モニターを見つめる紫苑先輩は楽しそうである。


 『ダンマスゲーム』におけるルート分岐イベント、二周目以降ではここで遥斗主人公の【勇者】ルートと琉唯主人公の【魔王】ルートに分岐することができる。

 また、この追放イベント自体もファンには人気であり、聖女ちゃん駆け落ちイベント等とも呼ばれている。

 まさか、生でメインイベントを見れるとは思わなかった。いや、生ではなくてどちらかと言えば覗き見ではあるが。


『マスター、スチル回収を行いますか? 既にSNSでは大量の写真が拡散されているようです』

 いや、別にそこまでして回収するものでもないからやめといてもらおう。


「勇者パーティは勇者と聖女の双子と幼馴染の黒瀬による三人が軸となるパーティだったからな、一応、今の他のメンバーも居るとはいえ、これは解散コースか。奇しくも都市伝説が立証されたな」

 先輩は満足気にモニターから目を離して振り向いた。


「都市伝説凄いですねぇ。で、先輩のお願いってのは結局何なんですか?」

 追放イベントを一緒に見るために呼ばれたわけではないので本題に入ってもらう。


「ああ、これだな」

 そう言って先輩は一枚のチラシを取り出した。


―― ナンバーワン地下アイドル決定戦。地上を照らす星となれ


「……なんですか、これ?」


「再来週末に夢ノ宮公会堂で開かれる地下アイドルの合同ライブのチラシだね。実はこのイベントにウチの商業科も協賛してるんだ。それで、そのイベントに君も前日から行って欲しい」


「前日からってことは設営のバイトですか? あ、鈴音すずねも参加するのか」

 出場アイドルの中に紅条くじょう鈴音すずねの名前があった。

 どおりでまた月末になどと意味深な事を言っていたのか。


「おや、知り合いが居るなら丁度よい。というか、君も手が早いね」


「いや、手が早いって……ちょっとした知り合いなだけですよ。で、何をすることになるんです?」


「知り合いが居るなら丁度よいな。前日から入れる関係者用のパスを渡すから、会場に居てくれるだけで良いよ」


「えぇっ、なんですかそれ。居てくれるだけで良いって、何があるんですか? 普通に設営のバイトとかって言われた方が良いんですけど」

 つい先日もテロに巻き込まれたばかりである。


「何も無ければそれで良し。いや、何か起きるって確証があるわけじゃないんだが、君が居たほうが良い気がするんだ……」


 先輩自身にもわからない虫の知らせとやらだが、知り合いが居るとなっては断るわけにもいかず関係者用パスを受け取った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ