第27話 安心安全スローライフ計画
―― 『ダンマスゲーム』
ダンジョンの現れた世界で夢ノ宮探索者育成高校を舞台としたマルチエンディングのノベルゲームだ。
幼少期に迷宮発生に巻き込まれ家族を失ったことで復讐者となった主人公と幼馴染が『狩人』となって【迷宮管理者】を狩る物語となっている。
なお、登場人物のほとんど全てが【迷宮管理者】になる可能性があり、ゲーム開始時点でランダムにその対象が決まる。
つまり、誰がダンマスになっているかを推理して狩るゲームでもあるのだ。
「ゲーム内転生自体は百歩譲ってというか、二度目の人生があるのは素晴らしいから良しとしよう」
『中々にポジティブ思考は良いと思いますよ、マスター』
脳内に話しかけてくるこいつは、『メルリン』。俺の固有スキル『ナビゲーター』による擬似人格だ。
疑似人格ってなんだよとも思いはするが、ゲーム内転生をしてスキルのある世界なので、まあ、何でもありだと思おう。
そして、現在の俺の役職はこうだ。
:――――――――――――――――:
役職:【転生者】
制約:
1.知り得る世界は秘匿されます。
2.知り得る世界は移ろいます。
3.この役職について秘匿する必要があります。
副役職:【迷宮管理者】
制約:
1.迷宮核が破壊されると死亡します。
2.迷宮核から離れるとステータスが下がります。
3.迷宮核に関わる不利益な行動はとれません。
能力:『迷宮管理者』『倉庫』
…
固有能力:『ナビゲーター』
称号:迷宮討伐者
…
:――――――――――――――――:
そう、ダンマスが狩られる世界で【迷宮管理者】になっているのだ。
「よく考えたらわかることだけど、ゲーム内転生ってゲームの舞台だけじゃなくて世界がきちんとあるんだよなぁ」
『ダンマスゲーム』で描かれたのは夢ノ宮市、特に夢ノ宮探索者育成高校だった。しかし、新宿迷宮特区や秋葉原など別な地域も当然存在していた。
『絵本の中に入り込むとかの転生でない限りはそのとおりだと思いますよ?』
「まあ、そうなんだけど、『ダンマスゲーム』の主人公の真神にだけ気をつければ良いと思ったらクラスメイトだったし、そもそも、ダンマスを敵視している勢力は他にもあったし、関わっちゃってるし……」
二学期に現れるはずの命とは新宿迷宮特区で先に出会ってしまった。俺は読んでいないが『ダンマスゲーム』はスピンオフ的な小説等もあったのを思うと他にも重要人物と出会っているかもしれない。
『神核教に関係する九能命はヒロインの一人だとマスターの知識から認識しています』
その神核教もやばい。迷宮核を崇拝しているため、迷宮討伐者を神敵扱いとしているのだ。
俺の称号にはしっかりと『迷宮討伐者』が記載されている。また、ダンジョンマスターはその就職方法からほぼほぼ迷宮討伐者である。
「はい、詰んだ。この世の中ダンジョンマスターの敵が多すぎないか? ってことで、俺の安心安全スローライフ計画だ」
まず、俺の死亡フラグの一番。どういうわけかダンジョンコアが破壊されると死ぬらしいのでコア、つまりはダンジョンの防衛だ。
次に、直接的に殺される場合。まあ、普通にダンジョンで死ぬのはしょうがなくはないが仕方ないとして、ダンマスであることがバレて死ぬことは避けたい。
ここが『ダンマスゲーム』の面白さであり嫌らしさである。遊ぶ上では面白かったが当事者になるとたまったものではない。
「本当に個人のステータスを他の人は見れないんだよな?」
『鑑定のようなスキルは存在しません。また、多少なり知り得ることのできる役職はマスターの【転生者】のように、知り得た事を秘匿する制約が課されています』
「つまり、行動からバレない限りはダンマスだと知るすべはないと。それなら、まずは一安心で、ならば、計画通りダンマスとバレても殺されない方法をとろう」
『それが、安心安全スローライフ計画ですか? 名前はともかく内容には興味がありますね』
「いくらダンマスが相手だろうとここは法治国家、迂闊に殺すと殺人罪となるため普通に殺されることはない。『ダンマスゲーム』においてもダンジョン外で狩られることはなかったはず。大抵はダンジョン内で人知れず行方不明になっている。つまり、ダンジョン内の行動が公になっていれば人知れず行方不明にはならないはずだ」
『なるほど、それが先日の行動に繫がっているわけですね。つまり、ダンジョン内で配信ドローンを使用して常に配信をすると』
「ただし、この計画を進めるにはまだ幾つかの問題点がある。一つ目はダンジョン内で配信可能な配信ドローンの開発。これはダンマスの力でなんとかできるとふんでいる。二つ目は仮にダンジョン配信ドローンが出来た場合、どのようにそれを広めるかだ。実際のところ、広め方が一番のネックになる」
『マスターが配信ドローンを発見したことにしても、おそらくはどこで発見したかとか、どのように開発したかとかかなりの騒動になりそうですね』
「そうなんだよ、ここのダンジョンは普通には入れないように規制してるし、安全上の観点から探索者を入れるつもりはないからなぁ。あーあ、どこかに適当にアイテムをばらまいても問題のないダンジョンがひょっこり現れたりしないかなぁ」
『マスター、私は学びました。人はそれをフラグと言うのです』




