第22話 神核教6
「核を壊しさえすれば倒せるんだよな」
木刀を仕舞い、剣を取り出す。
「その剣で切れる腕前があったとしてもサイズ的に核には届かないわよ」
ビッグキュアスライムのサイズは5メートルぐらいはありそうだ。
何はともあれ、まずはひと当てしてみようじゃないか。
「はあぁぁっ!」
―― ポヨン
「ふふっ」
「いや、笑うなよ。まあ、笑いたくなるような結果だったけどよ」
気合を入れて切りかかったものの毛程の傷も付けられていない。
「ちょっと離れてなさいよ、いくわよ、爆散しなさい、爆裂手裏剣っ!!」
九能さんから放たれた苦無が次々とビッグキュアスライムに当たる。
絶え間なく投擲される苦無は次々と爆発を引き起こし、辺りが煙に包まれる。
「やったか?!」
「ちょっ、なんてこと言うの、それフラグだから!」
「あ、あぁ、悪い。だけどなあ、どうやらフラグ以前の問題のようだぞ」
爆煙の晴れた後にはビッグキュアスライムが何一つ変わらない様子でポヨポヨしていた。
「うーん、これでも私の手札の中で最大攻撃力を誇ってるだけどなぁ」
「なぁ、あいつってホントに倒せるのか?」
切るのも駄目、爆発も駄目、全く倒せそうなビジョンが浮かばない。
「Sランク探索者なら倒せるわね。核ごと真っ二つにするとかが有効な手段らしいわ。ちなみにちまちま削ろうとしても回復量の方が多くて無理みたい」
「ふむ、ハンマーとかで叩き潰すのはどうだ?」
打撃系も効きそうにないが潰してしまえばなんとかなるんじゃないだろうか。
「普通のサイズのハンマーだとへこむだけみたいよ。一旦潰れても元に戻るって聞いたわ。ついでに、あの核だけど中で自由に移動するから半分にされても核のある方は生き残ってまたくっつくみたいで倒すなら一気に倒さないと駄目ね」
「じゃぁ、毒殺とかは?」
「もしかして毒を持っていたりするの? けど残念ね、スライム系はそもそも悪食で何でも食べて毒もほぼ効かないわよ。もしスライムを殺せるぐらいの劇薬を持ってるのなら……通報するわ」
「いや、持ってないから。そんな疑わしげな目で見るなよ。他に使えそうなので持ってるものは……あっ」
『倉庫』の中身を思い浮かべ、一つの方法を思いついた。
「なにか良いアイテムでも持ってたりした?」
「まあ、思いついたことはあるな。今から試すことは見なかったことにして欲しいんだが?」
「む、元々私と貴方はここでは出会ってない事にする約束だから、私は何も見なかった。で、秋都の必殺技みたいなもの?」
九能さんの期待に満ちた目がキラキラしている。
「ある意味必殺技にもなるスキルの機能だな」
少しだけビッグキュアスライムに近づき、両手をスライムの頭上へと向ける。どこが頭かは分からないのだが。
「さてと、二つ同時は初めてだが、『排出』!」
ビッグキュアスライムの二、三メートル上に下向きに扉が開いたコンテナが二つ並んで現れ、勢いよく落ちた。
―― ドガッガガン!
「うわっ、何?! え、コンテナ? スライム……潰れた?」
「いや、潰れてはいないはずだ。扉を開けてるから、ただ、二つのコンテナに分かれて入ったはずで……『収納』! お、こっちは収納できたな」
『倉庫』に限らずアイテムボックスには生物、もちろん、モンスターも含めて入らないのが通説となっている。
入ったということはこちらのコンテナ側に核はなかったのだろう。
もう一つのコンテナをそのまま格納しようとしても出来ないとスキルが告げている。
「こっちの方はまだ生きてるみたいだ。とりあえず、コンテナだけ『収納』」
コンテナを収納して取り除いた後には半分ほどの大きさとなったビッグキュアスライムがポヨポヨとしていた。心做しか不満げに見える。
「えぇーーっ、何、今の。スライムも半分になるしどういうカラクリよ、そもそも秋都の『倉庫』にあれが二つも入ってたわけ?」
「まあまあ、スキルに関する詮索はなしだ。押し潰すか分割できればぐらいのつもりだったが思った以上に上手くいったな」
ちなみにコンテナの重さは一つで二、三トンぐらいはあるらしい。
「なるほど、コンテナで完全に分離することで回復リソースとしての回収もくっついての復活も防いだってわけね」
この手法で上手くいくと分かってしまえば後は単なる作業だ。
「『排出』! 『収納』!」
「『排出』! 『収納』!」
「『排出』! 『収納』!」
三回も繰り返すとビッグキュアスライムとは名ばかりのちょっと大きいだけのキュアスライムぐらいまでカットされた。
「こうなると少し哀れね。もう、普通にコンテナで潰しても良いんじゃない?」
「だな、『排出』!」
どこかでカチッと鍵が開くような音がした。
そして、コンテナを収納した後には宝箱が鎮座していた。いや、潰れてないのかよ、宝箱。
「うわぁ、宝箱だよ。めずらしいねぇ、やっぱエリアボスだったからかなぁ」
ニッコニコになった九能さんが宝箱の周りをクルクルと回っている。
ダンジョンには稀に宝箱が落ちていることがある。モンスターからもドロップアイテムではなく宝箱が出ることもあるが、どちらもかなり稀な現象である。
「ねぇ、開けて良い? 私、鍵開けもできるんだけど……って鍵も罠もないみたいね」
九能さんは許可を出す前に宝箱を開けている。
「魔石に小刀か。魔石はもらうけど小刀は九能さんが持っていくとよいよ」
「えっ、良いの? 私、全然役立ってなかったけど。それに、ボスドロップだし多分これって良いやつで売れば高値が付くと思うよ」
「曲がりなりにもパーティを組んでるんだから儲けは山分けだ。それに、一人でダンジョンを抜けたことにしないといけないからボスを倒した証拠として魔石は欲しいかな」
「じゃぁ、じゃぁ、この小刀は私がもらうね、ありがとう」
ニコニコで小刀を胸に抱きしめる九能さんが眩しく見えた。
『マスター、コンテナにいっぱい入ったキュアゼリーは売れば幾らになるんでしょうね?』
うん、どんなに安くても小刀よりは高い気がするが、部位破壊収納でドロップアイテムが手に入ることはまだ秘密にしておかなければならないから仕方がない。そう、仕方がないのである。




