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闇バイトでダンジョンコアを壊したらダンジョンマスターになりました ~ここはダンマスが狩られる世界です~  作者: 水城みつは
第二章『新宿迷宮特区』

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第20話 神核教4

『マスター、右後ろから三秒後。3、2、1、右へ!』


「うぉぉっっ!!」


 メルリンの指示に合わせて全力で転がる横を苦無くないがかすめ、ダンジョンの床に当たっては爆発する。


「ちょおっ、どうして今のを避けられるのよ! やっぱり見えてるわね。いや、見えてても今のは当たるでしょ」


 オレの目の前には黒のフード付きマントを目深に被った怪しげな人物が両手の指いっぱいに苦無を挟んで小刻みに動いていた。


 ここは新宿駅迷宮の地下四階、未踏破領域というか未発見階層である。


 ほんの数分前までは管理局前駅に居た俺がどうしてこんなところにいるのか――



 ◆ ◇ ◆



「それでは三十秒後に一斉突撃です、ハイ。遊佐ゆさ君は私達の後ろから無理せずお願いします」


「わかりまし……あれ?」

 でかい携帯電話から繋がるイヤホンを耳にあて、突入タイミングを図る課長さんに返事をしようとした時、視界に妙な影を捉えた。


「遊佐君、どうしました?」


「あれは、味方ですかね?」

 改札とこちら側の中間地点、黒尽くめでフードを目深に被った人物がただじっと佇んでいた。


「は? どこですか。あ、カウントダウンいきます。5、4、3、2、1、突撃!」

「うぉーっ!」「いくぞ」


 走り出す探索者シーカー達はその人物に目もくれず改札へと向かう。


「えっ、見えてない?」


 課長さんも黒フードの人物の前を素通りする。既に改札近くまで達していた咲夜さくやさんが周囲を警戒するように見渡し、怪しげな人物のいる方向で驚いたように動きを止めた。


「っ!」


 途端に黒フードが走り出す。


「待てっ!!」

 俺も慌てて黒フードを追いかけた。いや、今になって思えば追いかけるべきではなかったのだろう。


 人の居ない地下通路を走る。


「おぉっと」


 急に向きを変えて横道に入る黒フードは瓦礫で埋まった行き止まりの道の先でこっちを見ていた。


「お前、見えているのか……?」

 俺より少し小柄に見える黒フードは呆然としたような声で呟いた。

 ゆらゆらと体を揺らしているのを思わず眼で追ってしまう。


「は、何を言って……あっ」

 課長さんや探索者シーカー達はこいつを認識していなかった。

 かろうじて咲夜さんは気付いていた風もあった。

 そんな人の認識から外れるスキルを俺は知っていた。


「やはり、見えているか……」


「はっ、ドコニイッタ、ちっ、見失ったから戻るか」

 そぉっと後ろに……


「見られたからには帰すわけにはいかないっっ!!」


 黒フードはローブの中から何かを俺の後ろに投げつけた。


―― カッ! ドガガーッン!!


「うおぉっ!」


 背中から爆風を受け、前のめりに倒れる。


―― ビシッ


 手をついた床がひび割れるのが見えた。


「はぁぁっ?! なんで?!」


 そして俺達は崩れ落ちる床と共に下へと落ちたのだった。



 ◆ ◇ ◆



『マスター、ここはダンジョンです』

「いっつー、え、ダンジョン? 管理局前駅も迷宮化してたの?」

 落ちた先は薄暗いもののさっきと同じような地下通路だった。

 上を見上げると落ちてきた穴があっという間に塞がっていくところが見えた。


『いえ、ここは地下四階、新宿駅迷宮の地下四階です』


 新宿迷宮特区は旧東京都庁迷宮と新宿駅迷宮の間を含む地上まで迷宮化した領域である。

 その地下が管理局前駅まで侵食していたとしてもおかしくはない。


「こっち側にダンジョンが広がっている情報はなかったよね。つまりは未踏破領域、しかも、未発見領域かぁ」

『脱出経路の検索は可能と思いますが……マスター、左へ!』


 柱の陰へと飛び込むと同時に飛んできた苦無が爆発した。


「どうして避けるかなぁ」


「いや、当たったら死ぬ、死ぬから」


「殺すのよ、見られたからには生かしてはおけないってやつね」


『マスター、上です。後ろに跳んで!』


「うぉっと!」


 上からパラパラと撒菱まきびしが落ちてくる。


「ちっ、消えた?!」

 気を抜くと黒フードの気配が薄くなり見失いそうになる。

 やはり、物理的に消えている訳でなくこちらの意識から外れるスキルのようだ。


『マスター、左後ろから来ます。2、1、今!』


「はぁっ!」

 左手に持ち替えた木刀を一気に振り回す。


「きゃあっ」

 木刀は急停止した黒ローブのフードをかすめ、顔があらわになる。


「『きゃあっ』? なっ、お前は……」

 ……九能くのうみこと

 叫んだはずの声は何の音も産まずただ口をパクパクするだけだった。


 フードが外れてこぼれ落ちる金髪。

 ここにいるはずがないと思っていた彼女は役職ロール【NINJA《忍者》】を持つ『ダンマスゲーム』のヒロインの一人、九能くのうみことだった。

 『ダンマスゲーム』における彼女は迷宮破壊、つまりはコア破壊者である神敵、真神まがみを監視するために神核教から送り込まれてくる。

 しかし、スキル『隠形術インビジブル』を見破られた彼女は色々あって神核教から抜けて真神達の側につくことになるのだ。


「私を知ってるの?」

「いや、女だったんだ、と思ってな」


 俺が彼女を知っていたのは『ダンマスゲーム』のヒロインの一人だからだ。

 彼女の名前を口に出せなかったのは役職ロール転生者イレギュラー】の制約ルールである『知り得る世界は秘匿されます』によるものだろう。


「女で悪かったわね」


「別に悪いとは言ってない。で、ものは相談だけど、殺そうとするのやめてくれない? そもそも、敵対する理由ないよね、それとも、君もあのテロ組織の仲間なの?」

 彼女は過激派の一員ではなく、神核教のパトロンでもある九能財団の会長の孫娘である。


「えっ、あぁーと、違うけど。単に監視してただけだからね。あれ、確かに敵対はしてないわね」


「でしょ、じゃあ、そういうわけで俺は帰るわ」


 触らぬ神に祟りなし、メインキャラクターには近づかないに限るのだ。


「ちょっと、あんた、待ちなさいよ。一人でどこに行こうっていうのよ、待ってよ、そもそも、ここどこ?」


 ここは新宿駅迷宮の地下四階、未踏破領域というか未発見階層から二人で脱出することとなった。


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