第19話 神核教3
「人がいませんね」
この通路を見張っていたらしき壁に叩きつけられた人物は拘束されてギルドへ連行されていった。
「こっちの通路は主にギルド職員用ですからね、ハイ。一般の人は一回地上に上がるルートを取るんですよ。それに、改札を封鎖した後で侵入経路を同時に潰したみたいです。その関係で改札外の駅の中に人は殆ど居ないみたいです、ハイ」
「それなら出会った奴らは皆殺……大人しくしてもらって問題はないな」
「いえ、パイセンやめてください。見敵必殺とかダンジョンの深層ならともかく対人戦ですよ。それに駅内に隠れて我々に情報提供してくれてる探索者の方もいるんですから」
「この鉄パイプなら殴っても死なないから問題あるまい? 遊佐君の木刀も大丈夫だから対人戦の練習と思ってガンガンいこう!」
「は、はい。頑張ります」
「いや、遊佐君も頑張らなくて良いから。できればパイセンを止めて欲しいかなぁ……っ!」
愚痴る課長さんと咲夜さんの足がスッと止まる。
「おや、【全知の魔女】様とその弟子じゃないですか。もう一人は知りませんが、初心者ですかね」
柱の陰から法衣姿に錫杖を持ったいささか時代錯誤な山伏のような姿の男が現れた。
「そういう貴方は神核教のテロリストで良いのかしら?」
スッと咲夜さんが前に出る。こちらも赤いドレスに鉄パイプという時代錯誤、いや、場にそぐわない姿だ。
「某達をテロリスト呼ばわりとは、やはり旧東京都庁迷宮の開放を行う気はないというわけですか。ならば、邪魔な貴方がたを此処で片付けておくのも一興。魔法の使えぬ迷宮外で某にあったことを後悔するが良い!」
男は錫杖を槍のように構え、あっという間に咲夜さんの目の前まで詰める。
「ぶべっ!」
「……課長さん、つかぬことをお伺いしますが、【全知の魔女】とは魔法使いなんですよね?」
「ハイ、一般的には咲夜パイセンは各種魔法を扱う魔法のエキスパートとして名が通っていますよ、ハイ」
「ちなみに、俺が今まで見た中に魔法要素は全くありませんでしたが?」
「奇遇ですねぇ、長らくパイセンの後輩をしている私から見ても基本的には鉄パイプで殴ったり、刀でぶった切ったりするパイセンがほとんどです、ハイ」
「あぁん、これでも私は紋章魔法の第一人者なんですけど? それはそうと偉そうなのを一人簡単に潰せたので良しとしようか」
突進を軽く避けた咲夜さんに叩き伏せられた男は手際よく拘束されていた。
「藤本課長! こいつは指名手配されていた元Bランク探索者ですよ。九州の方での目撃情報があったのでそっちにいるかと思ってました」
すぐに追いついてきたギルド職員と探索者に男を引き渡す。
「まあ、元Bランクと言えども特別顧問にかかれば、ね」
課長さんの言葉にギルド職員も納得したように大きく頷く。
「やっぱSランクって桁違いに強いんですね。Bランクが瞬殺でしたよ」
Bランクと言えば一般的な探索者の最上位とも言える。
「Bランクと言えば凡人が到達可能な最上位なんですけどねぇ、ハイ」
「凡人って……初心者が困った顔してるじゃないか。凡人ってのは万年Dランクの俺等のようなのを言うんですぜ。Bランクの藤本さんが凡人って言っても信じる奴なんかいませんって」
「そうっすよ、咲夜の姐さん基準ならみんな凡人ってのわかるっすけど」
着いて来ていた探索者パーティと課長さんは昔からの知り合いっぽい。
「実のところ役職に伴うステータスの恩恵はダンジョン外でも微妙にあるんです、ハイ。遊佐君も少しは体力が付いた気がしたりしたんじゃないですか?」
確かに役職が発現した後はちょっとだけ足が早くなった気がしたし、風邪なども引いていない。
「これは、体が魔力に馴染む事による影響と言われています、ハイ。ダンジョンの中で強くなるのは魔力が豊富にあるからですね。そして、得てしてランクの高い探索者は体内に保持する魔力も多いんですよ、ハイ。そのため、ダンジョン外でのステータスの恩恵が強く残るんですよねぇ」
そう言って課長さんは別なギルド職員達と話し込んでいる咲夜さんの方をチラリと見る。
「つまるところダンジョンの外での方がランク格差が広がったりもするんです。もっとも咲夜パイセンは役職発現前から対人戦闘最強ですから関係ないですけどねぇ、ハイ」
人外と言われるSランクのSランクたる所以を聞いた気がする。
「……課長、黄昏れているところスミマセンが上の方の一斉突撃の準備が整いました。タイミングを合わせてこっちも改札周辺を制圧します」
「あぁ、わかりました。改札の中のギルド員と探索者も同時に行動で良いんですよね。まあ、こっちは咲夜パイセンもいるから問題ありませんし行きますか」




