第16話 新宿迷宮特区4
「うっわっ、遊佐君のアイテムボックス、『倉庫』だっけ、面白いぐらい入るね。ミリリン、これは上玉も上玉だよ! ウチにちょーだい」
「ちょっと、あげないわよ。遊佐君は夢宮ギルドのです」
美凛さんと佐藤さんが俺を取り合っている、ではなくて、別に俺はギルドのものではない。
『マスター、そろそろ想定容量に達します』
「……あー、なんかこれぐらいで入れるの限界な気がします」
まだまだ入りそうだが限界なしはまずそうなのでメルリンと事前に取り決めた容量で切り上げた。
「遊佐君お疲れ様です、ハイ。結局どれくらい詰め込んだ事になってる?」
「えーと、コンテナ十個分ぐらいで、恐らく一辺十メートルぐらいの百立方メートル分はありますよ」
「『倉庫』系のアイテムボックスは容量が大きいと言われてるけど、本当に大きいね。確認されている中では国内最大だな、ハイ」
「海外では自称『無限収納』持ちがいますけどやっぱり入り口のサイズ制限がありますからね。遊佐君のはコンテナがそのまま入るから恐らく十メートルまでの制限かな」
「おっきい方のコンテナがそのまま入ればそれこそ巨大トラック代わりになれたのにね」
「大きいコンテナは十二メートルでした? なんとなくギリギリで入らない感じなんですよ」
コンテナにも規格があるらしく、ここには二十フィートと四十フィートのコンテナが置かれていた。
二十フィートのコンテナで縦横二メートル半に奥行き六メートル、四十フィートは奥行きが十二メートルぐらいだ。
ここに放置、いや、一応置かれているコンテナは俺みたいにスキルの確認用に使うことがあるらしいが、他の使い道はないらしく二、三個持っていいと言われている。
「熟練度が上がると容量が広がることがありますです、ハイ。遊佐君の場合は容量がアップするデメリットはないので鍛えると良いですよ」
「容量広がることのデメリットって何かあるんですか?」
容量アップのデメリットが浮かばない。
「ほら、私の場合とかだとアイテムボックスが大きくなると入れづらくなるわよ」
美凛さんが『収納箱』を取り出す。
「あ、眼の前に出るんですね」
美凛さんのアイテムボックスは確かに段ボール箱の様相をしており、彼女の眼の前に浮いていた。縦横高さと四十センチぐらいで丁度抱えられそうなサイズだ。
確かにこれだと箱が大きくなると出し入れが大変そうだ。手で触れるだけで出し入れできる俺のスキルが破格というのもわかる気がした。
「おお、ミリリンのアイテムボックスだ。まぁ、便利そうだよね」
「うん、便利そうではあるよね。と言ってもギルド職員だとマジックバッグの貸し出しもあって普段使うことないのよね。一応、避難袋代わりに防災グッズとか入れてはいるけど……」
アイテムボックス持ちの八割ぐらいは同じように防災グッズを詰めてあるだけといつだったかの探索者マガジンで読んだことがある。
なお、俺の『倉庫』にもかなりの量の食料品等を詰め込んである。正しくバックヤードとして小さなコンビニぐらいならすぐに開けるはずである。
「課長、遊佐君の能力のランク判定終わりました。容量、性能共に文句なくSランクです。時間遅延の十分の一も凄いですけど、冷蔵、冷凍も可能ってまさしくバックヤードですね」
「運送会社としては喉から手が出るほど欲しい人材ですねぇ、あ、そもそもP特の探索者ライセンスは運送業許可証も兼ねてるから個人で運送業も始められるからね、ハイ」
「運送会社はもちろんのことながら、どこでもコンビニやスーパーが開けそうだよねぇ。って、あれ? 遊佐君の家ってお店やってたって言ってなかった?」
「えぇ、そうですよ。元々コンビニやってて、今住んでるのはその三階ですね。あ、コンビニの方は両親が別なとこに引っ越したんで今はやってないんすけど」
商人の練習になるだろうと建物ごと押し付けられ、いや、譲られたことになっている。
「いやぁ、遊佐君は実に優良物件だねぇ。今日の分のスキル確認は終わりなのでコンテナを片付けたらお姉さんとご飯にいかない?」
「ちょっと、楓、未成年に手を出すのは犯罪よ。それに、マネージャーである私を通してもらわなきゃね」
うん、美凛さんはいつから俺のマネージャーになったんだろう。
「……遊佐君、コンテナはこっちの方に片付けてください。後、さっき言ったように幾つかは持ってって貰って構いません。アイテムボックス系は出し入れ回数や出し入れ容量とかで熟練度が上がることもあるので練習してもらえればギルドとしても助かります」
職員さんの指示に従ってコンテナを取り出す。とはいっても出したい場所に手をかざすだけではある。
―― ドゴッ! ズズンッ! ズズズンッ! ドガーーン!!
「なぁっ!? え、俺じゃない……うわっ」
丁度コンテナを取り出したタイミングで爆発音と地面の揺れが来た。
「え、地震? 何?!」
「遊佐くぅん、何したの?!」
「地震ではなさそうです、ハイ。管理局前駅の方で何かありましたか、佐藤君、すぐに確認を。んー……」
旧東京都庁のすぐ隣、管理局前駅の方向で黒煙が上がるのが見えた。




