第15話 新宿迷宮特区3
「迷宮管理局夢ノ宮支部の米花美凛です。P特探索者の遊佐秋都様をお連れしました」
「あ、えーと、遊佐秋都と申します、よ、よろしくお願いしまっす」
旧東京都庁十階の迷宮管理局局長室、眺めの良い豪華な部屋で俺はテンパっていた。
「はははっ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。取って喰いはしないからね」
「局長、どう見ても取って喰いそうな面構えなんだから冗談でもそんなことは言わないほうが良いですよ。まあ、今回も局長が若くて将来性のある探索者を見たいって駄々こねたからここで打ち合わせって事になったの忘れたんですか?」
「ちょっ、駄々をこねたって……そんな言い方したら局長としての威厳がなくなるじゃないか。まあ、それはさておき夢ノ宮探索者育成高等学校の一年生だって? あそこは真神君達に、そうそう、勇者パーティもいたよね」
「あ、はい、真神君と麻桜さんはクラスメイトで、この前は一緒にダンジョンに潜ってもらいました。おかけで命拾いしましたし、今回のアイテムボックス情報も発見できました」
流石は『ギルドの猟犬』真神白だ局長にまで知られてるとは。
そして、勇者パーティ。『ダンマスゲーム』でも二周目以降に選択できる主役級キャラが揃っているパーティだな。
あぁ、そう言えばやはりパーティ追放イベントは発生するのだろうか。
『流石はマスター、さりげなく真神白との仲良しアピールで無害な存在であることを主張ですか』
いや、そんな気はなかったが真神と仲がよければダンマスであるとは思われないから結果オーライかもしれない。
「それでは、遊佐様の本日からの予定についてお伝えします――」
メインの依頼としてはモンスターの部位破壊の収納によるドロップアイテム化の実証。
それにともない、まずは俺のスキル『倉庫』に関する性能実証実験も行うことになった。
【転生者】【迷宮管理者】に全く関係しないハズレ役職のスキルの方がチートスキル扱いなるとは思ってもみなかったよ。
「――実際の検証については該当部署の者に引き継ぎますのでよろしくお願いします」
―― 探索者特殊能力対策部
引き継がれた該当部署はそんな名前の部署だった。
迎えに来た少し小太りな男性に美凛さんと同期らしい女性の二人といっしょに一旦六階まで降りる。
「ここってダンジョンなんですよね?」
どこからどう見ても普通の役所だ。まあ、そんなに役所に入ったことがあるわけではないから比較はできないが、とにかくダンジョンっぽくはない。
「あ、ハイ、そうですね。十階までは普通に迷宮管理局が入っています、ハイ。十階より上は普通にダンジョンとなっております、ハイ。今現在公式に到達されているのは三十階層まででそれ以降は未踏破領域となっております、ハイ」
「『公式に』ですか? 非公式にはもっと登ってる探索者がいるってことですか? でも、此処ってダンジョンに入るのは完全に許可制でしたよね」
「お、ミリリンってば良いところに気がついたねぇ。ミリリンは聞いたことがあるでしょ、【全知の魔女】様、彼女はここの五十階に住んでるって言われてるの」
「なるほど、それで『公式に』は三十階層なわけか。確かに【全知の魔女】様ならあり得る話ね」
【全知の魔女】、『ダンマスゲーム』の本編ではどこかで名前だけ出てきた気がする。なかなか会えないお偉いさんと真神か言っていた。
「えーと、その【全知の魔女】って偉い人だったりするんですか?」
「偉い人も偉い人よ、遊佐君の年齢だと知らないかも知れないけど、、最初の迷宮発生時に高校生ながらに活躍して、映画やドラマになったことがあるぐらいよ。で、今は『迷宮管理局特別顧問』に就任しているわ。名誉職だけどぶっちゃけさっきあった局長も頭が上がらない偉い人ね」
「ほーん、すごい人なんすね。あ、でも、最初の頃に高校生っていうと今は……もがっ」
「しっ! それ以上は禁句よ。【全知の魔女】はこの新宿迷宮特区のあらゆる情報を握ってると言われてて、何かあったらすぐに分かるらしいんだから」
『……マスター、女性の年齢の話題は禁句です。そして、何やら監視されている気配がずっとしていますので【全知の魔女】というのも真実なのかも知れません。なお、この旧東京都庁迷宮は現在五十三階まであるようです』
旧東京都庁迷宮、どうやら見た目以上、そして、公式発表よりもかなりの大迷宮のようだ。




