第14話 新宿迷宮特区2
「今日から三日間、遊佐君の補佐をすることになる米花美凛です。気軽に美凛姉さんと呼んでね」
金曜の早朝、夢宮ギルドで待っていたのは赤髪ショートヘアの自称お姉さんだった。
「はいはい、美凛も馬鹿言ってないで。こう見えて美凛はこのギルドの交渉担当だから困った時は頼って大丈夫よ」
「ちなみに私も商人系の役職の先輩ですから、何でも聞いてね」
「そうね、確かに美凛は商人の先輩だから本部に着くまでに聞いとくといいわ、なんでアイテムボックスで収集出来なかったかをね」
「うぐっ……」
いつもの受付のお姉さんに見送られて美凛さんの運転でギルド本部のある新宿迷宮特区を目指して出発する。
とはいえ、自動運転であるので念の為運転席に座ってる程度のものだ。
「美凛さんもアイテムボックスの実証実験に参加してたんですよね」
「そうよ、おかげで近辺のギルド職員のスキル再調査と検証が行われたけど、そもそも入れる動作を伴わない収納が出来た人がいなかったわ」
「え、そうなんですか?」
「アイテムボックス系のスキルと言っても幾つか確認されているんだけど、最もオースドックスなのがアイテムボックスね。多くは段ボール箱ぐらいの箱を具現化させるの」
「具現化ですか?」
「そう、具現化。だから、箱を出す、蓋を開ける、アイテムを入れる、蓋を閉める、箱をしまうと出し入れするのに数秒かかるわね。ストレージやインベントリでは出し入れする穴やパネルを出す人もいるわね。とにかく、出し入れには何らかの物理的な入り口を伴ってるし、熟練度が足りないのか入れるまでに数秒かかって収納するまでに霧散したわ。というわけで、触ったものを格納できる遊佐君はかなり破格なわけ」
「俺も最初は扉を開けてましたから熟練度の問題だとは思いますけど……商人系はそもそもダンジョンに潜りませんもんね」
『マスターが最近習得した集荷スキルについては秘匿しておいたほうが良さそうですね』
『倉庫』に内包される派生スキル『集荷』に至っては多少距離があってもドロップアイテムを収集可能になっている。
うん、秘匿、秘匿、黙っておこう。
「そう言えばギルド本部のある『新宿迷宮特区』ってどんなとこなんですか?」
「んー、ダンジョン内にある街? かなり初期からあるダンジョンなんだけど、複数の大きなダンジョンが干渉し合って地上まで迷宮化したところかな」
―― 新宿迷宮特区
旧東京都庁、および、元から新宿駅ダンジョンと呼ばれ、実際に迷宮化した新宿駅の影響は大きく、駅から都庁までの間は地上までも迷宮化することとなった。
そして、この領域は『新宿迷宮特区』に指定され、人類と迷宮の共存を目的としたモデル地区として活用される事となった。
「地上まで迷宮化ですか……それって大丈夫なんですか?」
「大丈夫かどうかで言えばわからないけど、まあ、なんとかなってるってとこかな。ほら、入り口が見えてきたよ」
美凛さんの指差す先には高速道路の出入り口のゲートのような開閉バーが設置されていた。
近づくと自動でバーが上がる。
「え、自動ですか? もっと検問とかあるものかと思いましたけど」
「高速道路と同じよ。探索者ライセンスをこの機械に入れておけば大丈夫よ。あ、ちなみに高速道路もこのまま通れるし、引き落としもライセンスに関連付けた口座から行われるからね」
「それでEランクの手続きで口座番号とか書かされたんですね。あっ……」
「おっ、流石だね気付いた? 新宿迷宮特区のダンジョンエリアに入ったよ。ようこそ、新宿迷宮特区へ!」
ゲートからしばらく進んだところで体に力がみなぎるのが分かった。恐らくスキルも使用可能となっているだろう。
役職取得時に得られるステータスは基本的にダンジョンの中でのみ、その力を発揮できる。
つまり、スキルの殆どはダンジョンの外では使用できない。だからこそ本来チートスキル足りうるアイテムボックスのスキルが外れスキルと言われてしまうのだ。
「そうそう、スキルも使用可能になってるとは思うけど無許可で使用すると罰せられるから気をつけてね」
「あ、はい……」
試そうかと思った『倉庫』の発動はとりあえずキャンセルした。




